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階段

作者: 尚文産商堂
掲載日:2012/04/30

「ねえ、この階段。出るんだって」

「なにが」

私はよく使っている、高校の校舎内にある階段を、友達と登りながら話していた。

「幽霊だってば。幽霊。なんかね、赤い服着た女の子が出るんだって」

「へぇー」

あまり気乗りしない声が、自然に出てくる。

「あっ、どうでもいいと思ってるでしょ」

友達がすぐに指摘してくる。

「あまりそういうのって、信じてないし。でも…」

「でも?」

「確かにいるかもね」

私は階段の踊り場を見つめていた。

あと6段ほどでつくその踊り場に、その子はいた。

友達にも視えているらしい。

驚いた表情で、口も閉じるのを忘れている。

「てーんてーん、天下茶屋のお茶屋さん……」

ボールをつきながら、そんな聞いたことがない歌を歌っていた。

「手まり唄?」

友達が少女に聞くと、ボールを手に取った。

「あなたはだれ?」

「私たちは、この高校の生徒よ」

「せいと?」

「そう、生徒。授業を受ける人のこと」

「じゅぎょうをうけるひとって、てらこやとか?」

「寺子屋って、今の時代には無いわよ」

少女は私の言葉を聞いて、ピタリと動きを止めた。

ヤバいと思う前に、少女は私に聞いた。

「もうないの?」

私はうなづく。

「そう…もうないんだ」

それだけつぶやくと、スッと姿が消えた。

ボールも、うっすらと後を残し、それから霧のようなあやふやな輪郭となり、日の光に照らされて、消えた。

「…なんだったの、さっきの」

「さあ」

時計を見ると、もうすぐチャイムが鳴る時間になっていた。

「やべ、もうすぐチャイム鳴るじゃん」

友達にいって、一気に駆け上がって行った。

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