階段
「ねえ、この階段。出るんだって」
「なにが」
私はよく使っている、高校の校舎内にある階段を、友達と登りながら話していた。
「幽霊だってば。幽霊。なんかね、赤い服着た女の子が出るんだって」
「へぇー」
あまり気乗りしない声が、自然に出てくる。
「あっ、どうでもいいと思ってるでしょ」
友達がすぐに指摘してくる。
「あまりそういうのって、信じてないし。でも…」
「でも?」
「確かにいるかもね」
私は階段の踊り場を見つめていた。
あと6段ほどでつくその踊り場に、その子はいた。
友達にも視えているらしい。
驚いた表情で、口も閉じるのを忘れている。
「てーんてーん、天下茶屋のお茶屋さん……」
ボールをつきながら、そんな聞いたことがない歌を歌っていた。
「手まり唄?」
友達が少女に聞くと、ボールを手に取った。
「あなたはだれ?」
「私たちは、この高校の生徒よ」
「せいと?」
「そう、生徒。授業を受ける人のこと」
「じゅぎょうをうけるひとって、てらこやとか?」
「寺子屋って、今の時代には無いわよ」
少女は私の言葉を聞いて、ピタリと動きを止めた。
ヤバいと思う前に、少女は私に聞いた。
「もうないの?」
私はうなづく。
「そう…もうないんだ」
それだけつぶやくと、スッと姿が消えた。
ボールも、うっすらと後を残し、それから霧のようなあやふやな輪郭となり、日の光に照らされて、消えた。
「…なんだったの、さっきの」
「さあ」
時計を見ると、もうすぐチャイムが鳴る時間になっていた。
「やべ、もうすぐチャイム鳴るじゃん」
友達にいって、一気に駆け上がって行った。




