ペンを買う
掲載日:2026/02/18
「このボールペンを一万円で買いませんか?」と、男は言った。
どうみても、どこにでもある安物のボールペンだ。
「このペンはラブレター用のペンなのです」
そんなことがあるものか。と鼻で払うと
「そうですか。では、このボールペンは、ロトくじ用のペンなのです」
いい加減な男だ。私がそっぽを向くと、男は続けた。
「さすがです。お目が高い。実は、このボールペンは…。おおっと、これ以上の説明には、1万円いただきます」
はは、面白い。聞かせて貰おう。私が一万円を渡すと、男は話を続けた。
「ありがとうございます。このペンは普通のボールペンでございます。たかが100円ぽっちのね。一万円は情報代ですから、ペンはお渡しできません」
「このペテン師め!」
と、私がいうと男は応えた。
「あなたはラブレターを書く際に、全く見込みのない方にラブレターを書かれるのですか? 望みはあるのでしょう? 書き続ければ成就するのでは? ロトくじも然り。
このペンを、ただの安物のボールペンにしたのはあなたではないですか。
このボールペンは、お会いした記念に差し上げましょう。一万円もお返しします。また、お会いできたらいいですね。それでは、さようなら」




