表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女王は地下帝国で野望を求む  作者: K4Y9
間章 その時世界では
18/18

間章3. 最高と至高

ガッツリ戦闘描写を書く回。

ノッちゃった☆(過去最長)


~site ガドリスク連合 北部戦場~



…焦げ臭い


そんな第一印象を抱くような場所だった。

辺りには元々は森だったのか、黒く炭と化した木々の根元部分が所々に残っていた。



ここはガドリスク連合北部に位置する戦場──という名の実戦訓練場である。

南部にも同じく実戦訓練場は存在するが、北ほど荒廃してはいない。


ここには、新人などが冒険者にとって重要な実戦の経験を積みに来る。冒険者になるとよく言われるのが、

〔金よりも実戦経験を積む方が大変だ〕

という言葉である。そのため、新人だけでなく中堅の者達や()()()()と呼ばれる上澄み達なども時折足を運ぶ。



そんな場所に造られたキャンプ地に1人の男がやってきた。

紫の髪、漆黒の鎧を着けているが腕,胴,脚の一部分的だけにしか着けられておらず、これから戦場に立つとはとても思えないほどの軽装。

しかし、男が放つオーラが決して冗談でないと証明している。


その男の姿を見た他の冒険者たちは、ザワザワと心の内を吐露していった。

「何だ……アイツ…武器は?……」

「…見ねぇ顔だな……つーか紫……しいな」

「あんな…で大丈夫……か」

「……どこか……たことがあるような」

「なんだ……来たのか…」



そんな言葉が聞こえても、変わらず男が歩んでいると目の前に"支部長代行"と書かれたネームプレートを下げた壮年の男が現れた。


「…これはこれは、テルミス殿。久しいご利用ですな」

「……覚えてるんだ…」

「はい、……行ったっきりで()()()()()()()もいますので、皆の顔を覚えないと家族のもとに訃報を届けられませんからな。

最も、貴方の場合は覚える間もなく()()()()()()()()()ましたが。

しかし、あの時と全くお変わりになられませんな。おかげで、すぐに気づけましたぞ」

そう言い代行は微笑んだ。


「……今日は、武器の試しに来たんだ。友人に頼まれてしまってね」

「そうでしたか。なら今日は、貴方もその武器もラッキーですね」

「……どういう事?」

テルミスはそう聞いた


代行が曰はく

「ここのところ、大攻勢が此処で起きるという噂が立っています。相手に不自由はしないかと」

「そうなんだ。…なら、あまり探し回らなくてよさそうかな。で、武器にとってのラッキーって?」

「フフフ…類稀な "万能なる手" を持っている貴方に振って貰えるからですよ」


テルミスは困ったような顔で笑った。

「…その二つ名を此処でも聞くことになるとはね、思いの外広まってるみたいだ」

「それはそうでしょう、貴方に付いている二つ名はギルドでの必修ですからね」

「……えぇ…」



そんな他愛もない話をしていると。


テルミスが()()に反応した。

ピクッ「…代行、噂をすればだね。来たみたいだよ、攻勢が」

「はて?…監視チームからは何も…」


その時、黒装束を纏った男が音もなく走ってきた。

「ターナー代行、敵影多数、過去最多です。…いかがいたしましょう?」


ターナーは目を見張った。

「まさか…見ずに、しかも監視チームより早く敵の存在を察知するとは…。

このターナー、敬服いたしました」

「いいよいいよ、この程度で。…ほとんど癖なんだからさ」ボソッ

ターナーはテルミスの最後の言葉だけ、聞き取ることが出来なかった。



「じゃあ、行ってくるね」

「??………!は、はい。気をつけて」

ターナーがその言葉を言い切った時には、既にそこからテルミスは居なくなっていた。


(なんて速さだ…動き出しがまるで見えなかった。音も何一つ無く……瞬間移動?いや…)

ターナーは足元を見た。

(…地面が割れている。…音がなかったということは、地面が割れるほどのエネルギーを余さず速さに乗せられているということ。…凄まじい技量だな)

ターナーはそう感嘆した。


「タ、ターナー代行……い、今のは?今のは何者ですか?」

黒装束の男がそう聞いてきた。


黒装束の男だけではない、テルミスとターナーの雑談を見ていた他の冒険者たちも、目の前で起きた光景に理解が追い付いていなかった。

「消え…た?」

「何が………きた…」

「……相変……ず速ぇな」

「もし………位の人?…」



ターナーは黒装束の男に向かって答えた。

「─ "万能なる手" "修羅" "最高の戦士" テルミス・オプサー。

冒険者ギルドの出している、()()()()()()()()()1()()の男だ…」




~site 北部戦場 国境線~



北部小国家連合軍にとって、今日は大国ガドリスク連合に一泡吹かせられる。そんな歴史的な日になる、

……はずだった



複数の師団が敵戦力を引き付け、攻勢の要である北部連合軍の精鋭6万4千が敵の陣地に乗り込む、そういう作戦だ。

事前の情報通りであれば必ず勝てる、……そう高をくくっていた。



目の前の光景に精鋭部隊の司令官は首をひねった。

「おかしい、確かに抵抗は予想されていた………たった一人だと?」


それもそのはずだ、精鋭部隊の進路上に見るからに軽装の紫髪の若い男──テルミスが1人で立っていた。


司令官は最大限の警戒とともに、その男に同情の気持ちを持った。

(哀れな、いかに強かろうとこの人数差、勝てる道理はないだろうに。…時間稼ぎか、捨て石か……どちらにせよ若くして命を散らすとは…同情するよ。…だが)


指揮官は兵達に向けて無情に命令を下した。

「総員!全速前進!!敵は踏み潰して進めぇぇー!!」


ウオオオオォォォォ!!

恐怖を感じるような咆哮とともに、万人の進行速度が上がった。

ドドドドド!!!

近づくほどに地揺れは大きくなり、攻勢軍は敵を押し潰さんとその速度を速めていった。



テルミスは考えていた。

(…向こうから向かって来てくれるなんてね。迂回されたらどうしようかと思ってたけど、杞憂だったみたいだ)

「…普通に戦いたいところだけど、今は()()からの依頼を優先しようか」


そう言いテルミスは手を横に薙いだ。



その光景を見た司令官は驚いた。

「剣だと?!どこに隠し持ってッ……!?」

テルミスの手に、いつの間にか()()()()()()が握られていたからだ。


(…まぁいい、あんな剣一本で覆るような戦力差ではない。このまま苦痛を感じる間もなく殺してやる)



そして、攻勢軍の先頭とテルミスが激突した。



……紅い大輪が咲いた。




………………




テルミスはこう思った。

(この剣……楽しくない)

剣を振りながらテルミスは、依頼者から預かったメモに書いてあった武器の説明を思い出していた。


  【無塵剣 フラクタル】

効果:

剣を振った所辺りのランダムな場所 (大体腕一本分くらいの範囲かな) に、追撃を2回発生させる。

追撃にさらに追撃が乗り、持ち主の技量によって追撃回数が変わる(僕が振ったら4回発生したよ~)。

追撃ごとに威力は半分になっていく。

追伸:

自信作だよ~



「……技量による追撃回数の増加…僕が振るとこうなるのか」

テルミスは再び目の前の光景を見た。


そこには…攻勢軍の兵士だったと思しき()()と鎧だったであろう鉄屑があった。

…テルミスの周りにはソレらが散乱していた。


攻勢軍の兵士達は顔を恐怖に歪めながらテルミスから一定の距離をとっていた。

目の前で戦友を挽肉に変えられたのだ、そうなるのは当然の帰結であった。テルミスの近くの兵達の士気は最低以下にまで下がっていた。



(な、な…んだ……コレ)

俺は今目の前で起きたことが信じられなかった。戦友が…昨日同じ釜の飯を食った奴が、目の前の男に無残に殺されたのだ。

(な…えっ?……何が…えっ?)


俺は目の前にある()()()()()()()を見た。

─気づけば俺は胃の内容物を吐き出していた。

「うっ……おえぇぇぇ~」ビチャッ


……何が起きたのか分からなかった。

……何をされたのかも分からなかった。


…男があの奇妙な剣を振ったところまでは覚えている。そしたら…次の瞬間には戦友達が…挽肉と化していた。

俺はもう一度男の持っている剣を見た。


奇妙な形状の剣だった。

刃の部分に、小さな剣がいくつも付いているのだ。そして、よく見てみるとその小さな剣にもさらに小さな剣がいくつも付いている。


(あの剣の効果…なんだよな?)

そう考えている男はあることに思い至っていなかった。



「…もうそっちからは来ないのかい?……それなら、こっちから行くよ」


既に、自分たちに残された時間は無いのだと。



テルミスは、フラクタルに代わり、別の武器をまたもやどこからか取り出した。

(次は……このガントレットか)

そして、目にもとまらぬ速さで装着し敵に向かって行った。



誰かが言った。これはもはや戦いではなく、()()だと。




………………




テルミスは舞う、穿つ、砕く。

消耗を全く感じさせないままに、蹂躙する。

テルミスが消えれば死が起こり、現れたころには武器が変わっている。


槍,鉈,鞭,弓,戦鎚,鉄爪果てに籠手による徒手空拳。


まさに武芸百般、その手はあらゆる武器を例外なく扱いきる "万能なる手" 。

全ての武器を最高水準で扱う、まさに文字通りの "最高の戦士" の戦いであった。



─テルミスの手により、2万と少しが葬られたとき。


「そ、そこの者!!少し私の話を聞いてほしい!!」

攻勢軍司令官が遠くからテルミスに話しかけてきた。


「私はッ!!この部隊の司令官ドミナスだ!!

1対1で対談がしたい!!どうか、一度武器を下ろしてはくれないだろうか!!」

ドミナスの訴えを聞き入れたのか、テルミスは武器を下ろした。

ドミナスはそれを見て安堵した……次の瞬間、



…テルミスが目の前に立っていた。

(ッ!!?……速い、速すぎる。とても、一瞬でたどり着ける距離ではなかったはずだ!!)

ドミナスは目を見開き、驚愕していた。そしてもう1つあることに気づいた。

(…髪が、()()()()()()()?!…確か最初は紫だったはず)



「……それで…話って何?」

テルミスはそう聞いて来た。

「あ……こ、降伏する…我々攻勢部隊は、全面降伏する!!

だから、だから…どうか!これ以上殺さないでいただきたい!!わ、私が北部小国家連合へ降伏を何とか説得して受け入れさせる!だからッ!こr「…あーいいよ、そういうのは」……は?」


ドミナスの降伏が最後まで言われることは叶わなかった。



「居合・抜刀 "不覚衝 春風"」ピッッ



気づけば、自身の両腕とともに周りの部下たちの頭が落とされていたからだ。

「えっ……はっ?……ウ、ウワアァァァ!!!て、手があぁぁ!!」

鮮血の舞う敵陣の中央で、テルミスはこう呟いた。

「…この戦争が終わると連邦が困るんだ。……だから、丁度よい感じに戦況は調()()()()()()()()よ」ボソッ



テルミスの手には新たな武器が握られていた。

黒い刀身に赤と青の模様が入っている。

「…彼女からの頼みはすべて終わってる。…じゃあ……掃除といこうか」


テルミスは自身の持つ剣を見た。


  【不変 ドルミナ】


テルミスのメイン武器の一つ。特徴は唯一つ、"硬い" それだけである。

「さぁ、ここからは()()で行かせてもらうよ。…久々にノッちゃいそうだ」

そう言うと、テルミスの髪が()()()()()()



連合軍の本当の悪夢が始まった。




………約数分の後………




大地は紅く染まっていた。


北部連合軍の精鋭6万4千──全滅

…しかしその結果は伝わらない。ガドリスク連合の手によって、歪曲された結果のみが伝えられる。



よって、戦争は続いてゆく。…実戦訓練の場として。



(()()()は大丈夫………だろうな)

「…帰ったら南の様子教えてもらうか」

テルミスは、紅い大地の真ん中でそう独り言ちた。




~site ガドリスク連合 南部戦場~



一方南の大地では。


「いけぇぇ!!進めぇ!!」

「あと少しだ!!押せぇ!!」

南方諸国の大攻勢が起こっていた。



「ア、アリア支部長!もう持ちません!!」

「クソッ!…全員!撤退だ!!前線を下げるぞ!」


ガドリスク連合の敗走。

南方諸国の軍は沸き立った。

「よっしゃあ!見下していた奴らに負けちまったなぁ、ざまあみろ!」

「……お前ら!追撃の用意を…って、なんだアイツは」


ほとんどの冒険者たちは流れるようにキャンプから撤退していっていた。

しかし、一人だけ流れに逆らうかのように敵軍に向かって歩いていく者がいた。



それを見たアリアは、逃げるように声をかけようと近づいた。

「貴様ッ!!死にたいのか!早く撤退しろ!!」


しかし、その者は…いや──女は不敵な笑みを浮かべてこう言った。

「心配していただきありがとうございます。…ですが、私にそれは不要です。だから、貴方は速く逃げてください」

そしてアリアのほうを見た。


「ッ!!…貴方は……申し訳ありません、過ぎた真似を」

「…いえ、顔を偽装していた私の落ち度です。なので、謝らないで」


敵の眼前だというのに話し始めた2人に、敵軍は怒り、憤慨した。

「……舐めやがって…。全員!あいつ等をぶち殺してやれ!!」



多数の兵士が、顔を怒りに染め2人を攻撃せんと向かってきた。



「…ここは任せてもよろしいでしょうか。 "至高の魔使い" 殿」

「……あの人の気持ちが分かった気がするわ…。なんか、…ムズムズするわね。……えぇ、まかせて」


その言葉を聞いたアリアは、ホッと胸を撫で下ろし撤退していった。



一人残った女は、ブツブツと何かを呟いていた。

「…多いわね……人数は………54362人…なかなかの数字ね。

こういう時は……飽和か一撃か………迷うわ…………よし決めた、飽和攻撃にしましょう」



軍は混乱した、目の前の光景があまりにも現実離れしていたから。


自分たちが攻撃しようとしていた者が、飛んでいるのだ……空を。

誰かが叫んだ、

「き、弓兵!撃ち落とせぇぇ!!」

それは、最後のあがき。


弓兵たちは矢をつがえ、女を目標に定めた。しかし、その矢が放たれることは……無かった。



「超高速響唱 多重展開 "劫火(ごうか)"」



空に数えきれないほどの魔法陣が展開され、恐怖に竦んでしまったからだ。


「これ、新しい魔法なの。…実験に付き合ってもらえるかしら」

女はそう言って、魔法陣を発動させた。



灼熱の炎が降り、生き物も、鎧も、大地ですら等しく溶かされてゆく。

魔法陣が尽きることはない、発動と同時に新たなものが展開されてゆく。



局地的な炎の豪雨は、その後数十分にわたり降り続けた。




………………




生命の息吹が消え去り、赤熱した大地を見下ろしながら女は言った。

「…なかなかの威力ね。今までの十指に入るかしら」


そう言うと女の姿が変わり始めた。

偽装を完全に解いたのだ。



腰ほどまである長い白銀の髪をなびかせ、女は独り言ちた。

()()()は、楽しんでるかしら。

帰宅したら、北の話を聞かせてもらいましょ♪」



女──アドミラー・ディアボリー "魔道の極致" "錬金女王" "至高の魔使い"

   ガドリスク連合、冒険者ギルド発行

   ()()()()()()()()()2()()

戦闘で醸成された、ある意味の戦闘国家であるガドリスク連合の最強達...つまりそういうことです。

【無塵剣 フラクタル】のモチーフはフラクタル構造です。ぜひ調べてみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ