間章2. 無尽の万魔殿
間章2です。
前話の話題の中心です。
因みに、咲の巣はここにはありません。
〜site アトラ熱帯森林 中心部〜
ここは、ゼンデア大陸のとある場所。
そこに咲と同じアンター種の巣があった。
─いや、ソレを巣と呼ぶのは烏滸がましい。
ソレはまさしく巨大な城──万魔殿だった。
拡大という本能に従い地上に吹き出した、途方もない年月を掛け造られたような風貌のその城は、内部からの押さえきれない本能によりその形を歪めていた。その城は天を突き、そこに存在する空間内を埋め尽くさんとばかりに滅茶苦茶な膨張を続け、今なお生き物のようにその姿を変えていっていた。
周囲には生物の影はなく、最初からそんなもの達は居なかったとでも言うかのように、ただ静かに鬱蒼とした森林が広がるばかりであった。
〜site アトラ熱帯森林 周縁部〜
その城から百数十kmほど離れた場所では、数人の人間が異様な速度で拡大を続ける城を監視していた。
「チッ…こっからでも判るぐらいデカくなってやがる。しかも前より拡大するスピードが速ぇ」
リーダー格らしき目つきの鋭い男がそう言った。
その言葉に4人チーム内の紅一点である女が反応した。
「えっ…本当ですか?!見せてください!!……嘘…。
─前って言ったって1ヶ月前なんですよ!!たった1ヶ月でこんな距離から判るほどに拡大するなんて……」
女は実際に城を見、現実逃避をするかの如くそう言った。
そして、城の記録を取っているメガネを掛けた男がその言葉に続いて言った。
「やっぱり…、過去の記録と比較しても、アレは観測を行うたびに膨張スピードが上がっています。……早く対策を立てないと…手遅れになるかも」
メガネの男は冷や汗をかきながらそう言った。
「…とりあえず、このまま監視を続ける。1週間ほどだが、各自何らかの異変を確認した場合は速やかに報告しろ!どんなに些細なことでもいい、その些細が連合の助けになるかもしれないからな」
そう言いリーダー格の男は監視を再開した…
その時だった。
「リーダー大変だ!本国から帰還命令が届いた!」
頭に犬の耳のある、俗に言う獣人と呼ばれる種族の男がリーダーの男にこう言った。
「なんだと……とにかく見せろ!」
男は帰還理由が話からなかったが急いで帰還命令書に目を通した。
…そこに書いてあったのは正気を疑うような内容だった。
「…ウソだろ!?──全員!今すぐ撤収だ!!」
男は命令書を読むなりそう叫んだ。
「了解」
獣人の男はそう言うなり、荷物を纏めるために離れていき、
「ッ!?…ビックリした、…監視はどうするの?中断ってこと?」
女はそう聞き、メガネの男は疑問を呈した。
「こちらに到着したばかりですが、本国で何かあったんですか?」
その問いに男は答え、書状の内容を言った。
「いや、本国内部で何かがあったわけじゃない。
ここら周辺が危険だ、という情報が密偵からもたらされたらしい」
「……帝国と聖教国が軍を集めているみたいでな」
メガネの男は言った。
「また小競り合いですか?
懲りませんね〜国費を結果のでない争いに使うなんて、僕らじゃ考えられませんよ。
でもそういうのは、いつものことじゃないですか。なんで僕らが退避するんですか?いつもの場所はここらじゃないでしょう?」
リーダーの男は答えた。
「違う、今回は小競り合いじゃねぇ。…アイツ等の目標はアレだ」
そう言って自分たちが監視していたモノを指差した。
「…マジか」
メガネの男は顔を恐怖に歪めこう言った。
そしてそれを見た女は、
「は?………イヤイヤイヤ嘘でしょ!?
どんなにアレを攻撃する理由があったとしても、アレに手を出すのは危険すぎるでしょ?!
魔物の源泉を喰らい尽くした怪物なのよ?!…頭沸いてんじゃないのアイツ等!」
狂ったようにそう叫んだ。
「…まさか連合もこの話に乗るなんて言わないわよね?!そうだと言って!!」
「ハァ…、一旦落ち着け。……この書状が俺たちに来た以上、少なくとも連合の総意はお前と同じだ。
だから安心しろ」
リーダーの男はそうなだめた。
「そ、そうよね…。ふぅ……ごめんなさい取り乱したわ」
女は、落ち着きを取り戻しそう言った。
「いや、謝らなくていい。…ここの周辺国の者たちは、アレに対して大体お前と同じ気持ちだろうからな、……あの2国以外は」
そう話していると、獣人の男が戻ってきた。
「リーダー、撤収準備が完了した。いつでもここから離れられる。」
「おう、ご苦労さん。じゃあ、さっさと帰還するぞ」
そう言い、その集団は来たばかりの道を戻っていった。
「……まさか、あの "無尽" の名を冠した巣に挑もうとするなんてな。
…あまり酷い事にならないといいが。」
リーダーの男は疲れたような顔でそう呟いた。
〜site アトラ熱帯森林 中心部〜
巨大な城の中心部。そこにある大広間では、ある1体の魔物が座していた。
ソレはアンター種……なのだが人型をとり、見たものが跪きたくなるような偉大なる気配を放っていた。
ソレは思った。
(もう、広げる必要は無いはずなのだがな…)
そう何とも言えないような表情で思案に暮れていると。
「女皇様、ニンゲンの国に軍を動かす動きがあるそうです。…何でも目標はココだとか」
そう傍らに付き従っていた人型のアンター種の内の1体が言った。
「そうか……。フッ、いいだろう…叩き潰してくれるわ!
皆のもの、戦争だ!我らの恐怖を…奴らに刻みつけてやれ!!!」
女皇は城全域に響くような声でそう言い。
「「「「はっ!!」」」」
広間に居る側近たち全員が腹に響くような返答をした。
「…では、ガードキャピタスよ後は任せる。必ず勝利するのだ」
広間にいる中でも最も大きな体躯のアンターが言った。
「必ずや勝利を貴方様に捧げてみせましょう」
………
話が一段落した後、女皇は自身のある悲願を達成せんがために策を巡らせていた。
(また…ダメか。……結局何をしようとしてもコレには…逆らえんな)
その策すら失敗し女皇は意気消沈した。
(嗚呼……願わくば、何者かが我が種族の呪いを断ち切らんことを)
女皇は一人静かにそう願った。
この巣の兵力は万なんて目じゃない数です。




