1. 私は蟻生 咲
1は主に主人公についてです。
他の回より少し長くなります。
ファンタジー感が出るのは次回からです。
6から異世界の話が始まります。←改稿3回目
~site 日本~
「…きた。」
水曜日の正午ごろ、コンコンと金属製の階段を上ってくる音が聞こえた。
私の部屋は階段を上がってすぐ目の前にあるため、階段を上ってくる音がよく響いてくる。
この時間にはご近所さんはみんな、仕事なり趣味なりで部屋にいない。
そして部屋の場所が場所ゆえ、私はよく2階に郵便配達員が上がってくる音を聞くことがあった。
今聞こえている音もそんな小気味よい音で、私は敏感に反応した。
「そろそろだと思うんだけど…」
私はここ二,三日は郵便配達員が来るたびに緊張していた。1ヶ月間、首を長くして待っていた目的のものがもうすぐ届くからだ。
「大丈夫…あたりを付けた問題はほとんど出なかったけど、こういうのは初めてじゃない。
どんな問題が出題されてもなんとかなるように、全問題パターン覚えたんだから」
自分に言い聞かせるようにそう独り言ちた。
自慢じゃないけど、私は運が悪い部類の人間だ。
でも、怪我をするとか命に関わるとかそういう類の運の悪さじゃない。
どちらかというと想定外がよく起こる、そんな感じの運の悪さだ。
だからなのか、試験とかだとあたりを付けた問題は大体出てこない。
…おかげで高校入試とかひどい目にあったし。
なので私は試験を受けるときには、あたりを付けはするけど出るであろう問題形式は、応用なども含め全部覚えておくということをしている。
まぁ、そのおかげか学校での成績は結構よかったんだけど。そんなことを考えていると…
ーカシャンー
「あっ、来た!」
郵便受けから軽い音が鳴った。私は急いで郵便受けを見に行った。
そして…目的のものがそこにはあった。
保育士試験 [合格通知書]
「…や、やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は叫んだ。私の野望への最大の障害を突破したからだ。
これで、ようやく……
「子供と好きなだけ触れ合えるぅぅ!!」
と、変態的なことを叫んだ。
…ご近所さんがいなくて良かった。いたら通報されてるところだ。
まぁ、それはともかく…
「あとは実技試験だけ」
私的には実技試験は楽だ。筆記試験みたいに全部覚えて行く必要はない。
必要なのはフィーリングに学んだことの実践力,そして…
「熱意をもってやれば十分合格できる。さぁて、やるぞぉぉぉ!!」
私は、変な間違いが起こらないよう気を付けながら準備を進めていった。
合格通知が届いてからは、とんとん拍子に保育士までの道を進んでいった。
実技試験には問題なく合格し、私は保育士登録を行い保育士証が交付された。
「やっとかぁ~。…目標に決めてからここまで、長かったなぁ」
12月中旬私は雪がひらひらと舞い落ちる中保育園への内定も決まり、そう白い息を吐きながら独り言ちた。
今でも鮮明に思い出せる、あの野望ができた日のことを思い出しながら。
….4年前….
私は追い詰められていた。
普通に大学に通い普通に卒業し、そして普通の会社で働く…そんな風に考えていた。確かに、私は考えていた通りの道をたどっていった。
しかし自らの運の悪さが働いたのか、私の担当する案件だけ予想外のことが多く起こった。
もちろん、そのたびに周りはフォローしてくれたし相談にも乗ってくれた。
ただ、周りが何かしてくれるたびに自分の運の悪さを自覚している私は申し訳なくなっていった。
〔幸運も不幸も気の持ちようだよ〕と何度も言われた。でも私はそんな簡単に割り切ることはできなかった。
…しかし、これだけなら新入社員の苦労話で聞くこともよくあるだろう。これは、いわば私を追い詰めた1つの過程に過ぎない。
そう、私を追い詰めるに至った最たる原因は…
両親が同時期に立て続けに亡くなったことだ。
私は、両親にとって遅く生まれた子だった。
父は50代後半,母は50代前半。そのおかげだったのか、たくさんの愛情をもって育ててくれた。
死因は2人とも老衰だった。
父は80代に入り、母はもう数年で80代といった時だった。
精神的につらかった時期に両親の訃報が重なり、私は追い詰められてしまった。
私は、つらい気持ちを紛らわすかのように熱心に働いた。両親の死を考える暇も与えないほどに精力的に働いた。家に帰る回数も減った。
そう過ごしていくと、段々と時間の感覚も両親の顔も記憶に埋もれ、曖昧になっていった。
…………
そんな風に過ごし、両親の喪中がいつの間にか終わり少し経ったときのことだ。
夏の比較的涼しい日だった。
私は会社を定時で退社し帰路についていた。
比較的涼しいとはいえ夏だったので暑く、帰路の途中の公園内にある木陰下のベンチで休みながら涼んでいた。
そのとき、ふと久しく忘れていた喪失感が胸を突いた。
私は目から感情がこぼれ落ちそうになるのをグッと堪え、喪失感を紛らわすため、いつも通り仕事のことを考えようとしていた。
…うわぁ~……や..たなー…まて~……
その時、近くから子供たちが遊んでいる声が耳に入った。
ふと気になって声のした方を見ると。無邪気に遊び,キラキラ光るように笑っている子供たちがいた。
その様子を見ていると、不思議なことに、私の冷え切った心は温かく熱を持っていき。胸にぽっかりと空いた穴が少しずつ満たされていった。
気づけば喪失感も感じなくなっていた。
(あぁ…………綺麗だなぁ。…私の身近にこんな光景があったなんて)
私はそう思った。
ごく当たり前な日常の風景だったが、その時の私は比べるものがないくらい美しい絵画のように思えた。
その日、私に野望ができた。
あの輝くような笑顔たちと近くで触れ合いたい、私の力であの眩しい笑顔を増やしてみたい。
そう思うようになった。
…..現在…..
そんな昔のことを考えながら、私は今の家であるアパートに帰っていた。
~site ???~
男は四苦八苦していた。
「ひ~調整が難しすぎるっス~」
男は地球のような物体に対して様々な操作を行っていた。
物体から延びる透き通るような糸を絶えず結んではほどき、物体から出てくる小さく綺麗な無数の光を休むことなく[輪廻転生]と書かれた歯車の集合体へと誘導している。
これらの操作を高速かつ同時並行的に行っており男の両の手には、人間とは思えないような残像がかかっていた。
「先代も人が悪いっス」
男はそう独り言ちた。
「…いや、神が悪いとでもいうべきっスかね」
そう男は上手く言った気になり、目の前の物体から意識をそらしてしまった。
その瞬間………男は操作を誤った。
「あっ、あー!!!やっちまったっス!!!」
男は物体から延びた糸を間違えて引っ張り抜いてしまっていた。
男はこれ以上ないほどに慌てた。
「自分!お、落ち着くっス!!まず被害の確認を!!!」
男は物体の観測をし始め、被害の確認を行った。
~site 日本~
あと少しで私のアパートが見える、というとき。
視界が暗転した……
初執筆かなり大変でしたが、楽しくやれました。
毎日投稿してる人はマジでどうなってんだろうなー(尊敬)




