神様、相談相手間違っています
天界転生管理局・地球課。
今日も光と書類とため息が交錯している。
私が転生リストを整理していた――ちょうどそのとき。
【至急:地球課職員アリスへ/神より】
――の通知が届いた。
(……うわ、また上からだ)
神様からの直メッセージは、だいたいロクな内容じゃない。
たとえば「残業代は愛で支払う」とか、「勇者派遣は心で回せ」とか。
今回は一体何だろうと、恐る恐る通信石を開く。
『アリス、相談がある』
光の向こうから響くのは、威厳と気まぐれを混ぜたような声。
声だけで雷鳴のエフェクトがついているあたり、いつも通りだ。
「お忙しいところ恐縮です。どんなご相談でしょうか」
『次のコロラット王国への転生者に、どんなユニークスキルを与えたら良いと思う?』
「……はい?」
『魔王が全然倒されん。何か、こう……“バランスを崩す一手”が欲しいのだ』
「(バランスを崩してるのは貴方ですけどね)」
私は笑顔のまま、心の中でツッコんだ。
「そうですね……。ではいっそ、“魔王討伐”というスキルを与えてしては?」
『ふむ、“魔王討伐”とな……?』
「はい。“魔王を討伐する”以外の用途がない、潔いスキルです」
『なるほど! 直球だな! わかりやすい!』
(わかりやすいって言うな、気づけ…皮肉に)
『だが、それだと一撃で魔王が死ぬではないか? つまらん!』
「いや、倒したいんじゃないんですか?」
『戦いの過程が尊いのだ! それが神の理念!』
(……週刊少年ジャッジの影響だわ)
『ではこうしよう。“魔王討伐率+1%”というスキルではどうだ?』
「……え、なにそれ、地味……」
『毎回挑めば1%ずつ進む! 実に根性が試されるではないか!』
「魔王が倒される頃には、世界が滅んでますよ」
『よし決定! 名付けて“努力の果ての討伐”! かっこいいだろう?』
「長いですし、過労死者が増えます」
『では略して“努力討伐”!』
「語呂が悪いです」
『よし! 任せた、アリス! 転生処理をよろしく!』
「ちょ、ちょっと待っ――」
光の通信がぷつりと切れた。
残ったのは、私と虚空と書類の山。
「……また、仕事増やしたな、神様」
セイレーンがコーヒー片手に近づいてくる。
「なにその顔。今日も“神案件”?」
「“魔王討伐率+1%”っていう新スキルを付与しろって」
「なにその、進捗管理表みたいなスキル」
「多分、神様の頭の中では“ガントチャートで戦う勇者”なのよ」
「うわぁ、現場がブラックからプロジェクト管理地獄へ進化してる」
私は頭を抱え、机に突っ伏した。
「……誰か、“神様に冷静さを取り戻させるスキル”をくれないかしら」
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