転生者、定員オーバー
天界転生管理局・地球課。
光と書類、そしてため息が渦巻く場所。
今日も私は、朝いちばんで転生リストを開いた。
――そして、即座に閉じた。
「セイレーン。今日の転生予定者、何人って書いてある?」
「えーっと……30人」
「……確認だけど、うちの1日の転生処理上限、何人だっけ?」
「五人」
「はいアウトォ!!」
書類の束を机に叩きつける。
天界でも残業は存在する。むしろ、地上より深刻だ。
「なにこれ、システムのバグ?」
「違うみたい。“神のご機嫌”だって」
「は?」
「“挑戦する魂が増えるのは良いことだ”って、上からメール来てたよ」
「またポジティブな精神論……! 現場が物理的に追いつかないってのに!」
本来、コロラット王国への転生処理は1日5件が限界。
それ以上は転送ゲートの維持ができず、最悪、魂データが欠損する。
しかし、神はそんな現実などお構いなし。
結果、転生予定者30人から5人を選ばないといけない。
「……仕方ない。今日は選抜制ね」
「うわ、出た。魂サバイバル」
「ええ。転生オーディション2025・地球代表決定戦よ」
二人で光の板を覗き込む。そこには転生者のリストとスキルがずらりと並んでいた。
転生予定者一覧
①鑑定
②剣聖
③魔法帝
④クイズ王
⑤コピー
⑥ラーメンの神
⑦モンスターに好かれやすい
⑧寝ても経験値が入る
⑨方向感覚ゼロ補正
⑩自動ツッコミ……以下20名省略。
「……スキルが渋滞してるわね」
「ねぇ、“ラーメンの神”ってなに?」
「知らない。神様がノリで設定したのかも」
「あと、“寝ても経験値が入る”って、寝てるだけで世界救えそう」
「向こうの睡眠文化が崩壊するわよ」
私は深呼吸して、選抜用の端末を操作する。
「とりあえず、上位5人を転生。残りは成仏手続きに回すわ」
「了解。じゃあ、スキル的に有望なのは……」
「“鑑定”、“剣聖”、“魔法帝”、“コピー”…“自動ツッコミ”ね」
「最後の、なんで選んだの?」
「異世界、常識人が1人もいないと崩壊するのよ」
「確かに」
光のホールが一瞬輝き、5人の魂が転送される。
転送後のシステムログには、“安全完了”の表示。
それを確認して、私は肩を落とした。
転生完了報告を送信し、私はようやく一息つく。 そのとき、神からの通達が届いた。
【地球課職員へ】
転生処理が滞っているようだ。やる気を持って前向きに対処するように。魂は待ってはくれない
「……いや、待たせてるの神様なんですけど」
「アリス、それ以上言うと天界査定下がるよ」
「もう下がりようがないわ」
私はペンを置き、ぼそりと呟いた。
「……誰か、転生じゃなくて“転職”させて」
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