スキル選べるとか、運良すぎ問題
天界転生管理局・地球課――光のオフィスはフル稼働。
転生処理中の記録板が、まるで株価ボードのように明滅している。
書類を片手に、私はいつものように転生リストを確認した。
転生者:高橋 修平(享年32)
死因:睡眠不足
転生先:コロラット王国
ユニークスキル:未確定(特例選択可能)
「……うわ。出た、“選べるやつ”」
隣の席のセイレーンが顔を上げた。
「あー、出ちゃった? 運良すぎ転生者」
「ええ。スキル確定がまだ通ってない。つまり――」
「――こっちが直前で設定しなきゃいけない、ってことね。お疲れ」
「もう“運が良い”っていうか、こっちからしたら“業務妨害”よ」
本来、スキルは“神の審査”によって転生前に自動で決まる。
が、ごく稀に、天界の運気アルゴリズムに好かれすぎた魂が現れる。
俗にいう“チート枠”――スキル選択権を持つ、特別転生者。
(チートなのはスキルだけにしろって)
「じゃあ、いってくるわ。今日の分の残業、これで確定ね」
「がんばれ、アリス。神のサイコロ運、強すぎるわ」
私はため息をつきながら、転生ホールへ。
白い光に包まれた空間で、スーツ姿の男が立っていた。
どこかくたびれた目で、こちらを見てくる。
「えっと……俺、死んだんですか?」
「はい。天界の天使のアリスです。あなたは異世界――コロラット王国へ転生となります」
「マジか……人生やり直しチャンスってやつですね」
「はい。そして、あなたは非常に運が良い。“スキル選択特例”が発生しています」
「スキル……選べるんですか?」
「ええ。通常は神の決定で一方的に付与されますが、今回は特例です。ただし、選択時間は30秒。迷うとスキル無しで転生になります」
「えっ!? は、早っ!」
「はい、業務の都合です」
私は光の端末を開き、スキル候補を提示する。
「選べるスキルは、“弓聖”、“剣聖”、“魔人化”、“魔法帝”、“スキルアップ”……など」
「うーん……じゃあ、お姉さんのおすすめで」
「では、スキル無しでお願いします」
「う…うそだよ。うそ…からかいすぎました。じゃあ……“スキルアップ”で!」
「はい、“スキルアップ”確定――っと……」
私は指先で操作しながら、わずかに眉をひそめる。
スキル確定操作は、天界端末の中でも最も面倒な処理。
転生直前の登録は、下手すると転送データが吹き飛ぶこともある。
「……よし、登録完了。あなたの転生を確認しました。頑張ってください」
「はい! 次こそ人生変えてやります!」
光があふれ、男の姿が消える。
私は無表情のまま、端末を閉じた。
「……運が良いって、こっちの手間が増えることなのよね」
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