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5「小さな約束」

◆小さな約束◆


父「病院には泊れないから一旦お婆ちゃんちへ泊ろう。

とりあえず又朝になったら様子を見に来ないか?」


久美「わたしは・・・お婆ちゃんと一緒にいてあげたい。」


父「ここにいても寝る場所も毛布もないし、第一お前が風邪でも引いたら元も子もないだろっ。」


久美「そうだねっじゃお婆ちゃんの家へ行くよ。」



そう言って三人はお婆ちゃんの家に泊る事となった。


(わたしは勿論心配で眠れる訳がない。だと言ってわたしが身体を壊しても意味がない。

だけれどやっぱり心配で眠れない。)



真紀「お姉ちゃん起きてる?お婆ちゃんは心配だけどここならお風呂にも入れるし

暖かいしわたし達も助かるね。」


久美「うんそうだねっ。真紀明日も早いんだし早く寝なさいね。」


真紀「うんっおやすみ」


(真紀もわたしと同じく眠れない様だ。)


眠れない久美は何度も寝がえりを打った。眠れずそわそわしていた久美はふとお母さんから

預かったカバンの中を覗き見た。


そこにはお母さんが食事に困る事がない様にと心配して入れてくれてたカップめんや飲物

があった。とその中にあった一つの小さなカップめんを取りだして久美は思った。


このカップめん、お婆ちゃんが大好きなカップめんだ。

久美はそれを誰も食べない様にこっそりと自分のカバンの中に忍ばせたのだ。


(これは元気になったお婆ちゃんに食べて貰うんだ。これはわたしとお婆ちゃんとの

約束だよ。)


(この日からしばらくお婆ちゃんに付き添ったっけ。

でも・・・お婆ちゃんはわたしの問い掛けにはもう答えれる様子じゃなかった。)


(だけど何故こんなになっちゃったんだろう。あの時、父さんなんか押し切って真紀と一緒に

着いて来ていればよかった・・・。何故わたしはいつだって自分自身をしっかり持てないんだろう。

もっと自分がどうしたいかを貫けばいいじゃないのっ。どうしてそれが出来ないんだろう。)


久美はそんな自分自身の煮え切らない性格に、半ば苛立ちを感じていたのだ。


子供の頃からお姉ちゃんなんだからと言われ続けた久美、そんな久美は真紀のお手本にならなければ

いけないと必死で親の言う事にもちゃんと従って来た。一方真紀はちょっぴりやんちゃで学生時代からも

滅多に門限を守らず父にこっぴどく叱られ、折角始めた部活動やアルバイトを辞めさせられる始末。

堅実な久美に比べ、多少型破りな真紀だったのだ。でもそんな思いっきりの良い妹、真紀を久美は常に

羨ましいと思っていたのだ。


そんな全く違った二人だがこの時は気持ちを一つにして、お婆ちゃんの手をずっとずっと握り締めて

ただ回復だけを祈り続けていた。

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