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1「思い出が詰まった人形」

妹、真紀、そして両親の狭間で揺れ動く姉、久美、そして祖母はただそんな家族の迷惑には

なりたくないと、何も言わず遠くから幸せだけを祈り続けていたのでした。

◆思いが詰まった人形◆


お婆ちゃんは久美に言った。


「お人形を持って帰ってもいいよっ」と・・・。


でも・・・久美はお婆ちゃんの気持ちを考えた。


(ただでさえ独りが寂しい筈なのに、この人形をわたしがもらってしまったら

お婆ちゃんは離れて暮らすわたしに、毎朝微笑んで語りかける事も出来なくなっちゃうよ。)



でも久美はこの時の判断を後に後悔せざるをえなくなるのだった。



思えば20年前、お婆ちゃんは最愛の孫に思いを込め、

久美とその妹の真紀によく似させた人形を作った。


久美は少し背が大きめで、真紀は少し背が小さめ、久美は黒いおさげに真黒の瞳、

なんとも愛らしく微笑みかける表情でこちらを見ていた。一方真紀は少し茶色の髪が

風に靡いたかの様に愛らしく、赤い唇が又実にチャーミングで印象的だった。

二人ともオシャマな舶来物に見立てた帽子、それと同じ柄のドレスを身に纏っていた。

実に愛らしい。


そう、久美も真紀もその人形と共に成長したのだった。

だから二人にとってお婆ちゃんが作ったその人形は、自分達の分身の様なものだった。


そうだっ・・・久美は思ってたんだ。


お婆ちゃんにお人形を持って帰るかい?と聞かれた時に・・・。


心の中で・・・


(お婆ちゃんがいつしか天国へ召される時、わたしと妹でこの人形を引き取ろう。

でもまだ今はこんな寂しい出来事なんて考えたくはないから・・・。

だからそれもいつかの話。)



でもそんな思い出が、今でもちょっぴり悔いと寂しさで久美の心を締め付けていた。



(お婆ちゃんがわたしにあの人形を持って帰る様に言った日、お婆ちゃんは何かを感じてたのか。

何故わたしはお婆ちゃんの気持ちを感じとってあげられなかったのだろう。)


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