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人生の退職代行会社〜新しい人生へようこそ〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・高野マナの有給

 人生の退職代行会社・出エジプト社の高野マナ。根っからの社畜体質で、二十四時間仕事をしているようなものだった。


 退社した後も顧客の相談に乗ったり、スキルを上げる為に勉強もしているので、休む間もない。二十代前半の高野マナだったが、目の下には濃いクマが常時居座っているぐらいだが、本人はそこまで社畜やっている感覚はなく、笑顔で業務をこなしていたが。


 ある日、ついに過労で倒れ、しばらく入院する事になってしまった。上司や同僚は意外とクールで「それ見た事か」と全く同情されず、溜まっていた有給を病院のベッドの上で消化中。


「あぁ、やっぱり私、社畜だった……?」


 病院でもビジネス書などを読もうとし、医者に叱られたばかりだった。同じ病室の患者たちからも「休め!」と言われ、ようやく濃密な社畜生活だったと自覚した。代わりに業務を同僚の杉下荒野や過越安息にやってもらっていたが「タスク多すぎ!」と二人から文句の電話がかかってくる程。


 その時だった。病室に見舞客がきた。意外な人物だった。上司の柴田箱男で、現在は長い休暇人はいっていた。


「マナさん、おつかれ」


 そう言う柴田箱男は呆れていた。同僚の二人はともかく、おじさん上司の柴田箱男に呆れられると、居た堪れない。高野マナは思わず下を向く。


「人間、休みは必要だ。おそらく人は社畜仕様には創られていないからな」

「そうですかね」

「だから我が社は安息年があるのではないかね? というか、そんな社畜で安息年になった時、どうするんだ? 困らないかね?」


 柴田箱男の言う通りだった。


 出エジプト社には珍しい福利厚生があり、六年勤続すると、七年目は丸々一年休暇にある。他、バイトも時給は契約社員と同じで、一般的なそれよりかなり高い。ホワイト企業だったかもしれないのに、自ら社畜化していた事にも気づく。


「そうですね。再来年、安息年ですし、しばらく、その練習してみるかな?」

「いいね。俺は実家で教会手伝ったりしている。近所に美味しいアジフライの食堂があってな」

「何それ、行きたーい! アジフライ大好き」


 そんな話をしていたら、お腹が減った。病院食はアジフライなどの揚げ物はなく、どこか物足りなかったから。


 という事で退院後、柴田箱男おすすめの食堂へ行ってみる事にした。まだ有給は一日残っていたし、アジフライを食べに行っても悪くないはずだ。


 うずら村という田舎にその食堂はあった。海辺の小さな田舎で、なんとものどか。食堂の規模は小さいが、波音と鳥の声を聞いながら食べるアジフライは絶品。店主の涼華も優しく、人柄が滲み出ているような素朴なアジフライ。


 衣はザクザクと硬めだが、中はふっくら。それに手の平より大きく、一つ食べただけでも満足。


「美味しい……」


 思わず呟いてしまうぐらい。再来年の安息年はこんな美味しいものを食べて過ごそう。そう決めると、明日からの社畜生活も楽しみになってきた。


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