番外編短編・過越安息の菓子作り
人生の退職代行会社・出エジプト社。その社員の過越安息は、器用貧乏だった。
要領がよく、なんでも出来る。仕事もそうで、出エジプト社でも重宝がられていたが、本人は飽きっぽい性格だ。一つの仕事をずっとやるのは性に合わず、バンド、美容師、BAR店員などなど様々な副業をしていた。
そんな所を買われた。出エジプト社でも潜入調査的な仕事があり、側近ではなぜか寿司屋の洗い場担当もやっていた。仕事内容はすぐに覚えたが、もう海鮮などナマモノは見たくない。それぐらい仕事量も多く、若干飽きてきたところ。
という事でプライベートでは菓子作りにハマっていた。海鮮とは全く違い甘い香りが漂うのも良いし、見た目も凝ったものが作れるので楽しい。
特にアイシングクッキー作りにハマり、猫、犬、うさぎ、ヒヨコ、くまなどの可愛いアイシングクッキーを作るのが好きだった。元々器用貧乏でなんでもソツなく出来る過越安息は、アイシングクッキー作りもコツをマスター。すぐに作れるようになってしまう。
といっても大量に作ったアイシングクッキーを消費するのは面倒で、出エジプト社の社員や顧客にも配っていた。
「きゃああ! 過越さん、このアイシングクッキー可愛い!」
部下の高野マナはこのアイシングクッキーを大変気に入り、毎日のようにせがむようになってしまうぐらいだ。
しかし過越安息は飽きっぽい性格だ。アイシングクッキーブームもあっという間に終わり、今度はAIで漫画を描くのにハマっていた。
今でも過越安息のアイシングクッキーは評判は良く、高野マナは「アイシングクッキー作ってください!」と頭を下げてくるぐらいだった。広報の百瀬亜論もあのアイシングクッキーをSNSに載せたら人気でるぞと惜しんでいるぐらいだった。才能の無駄使いすぎると二人とも悔しがっているぐらい。
そんな二人を見ていたら、もう飽きてしまったアイシングクッキー作りも、再開してもいいかと過越安息は考える。
飽きっぽいが、人の為に何かするのは、悪くない。高野マナや百瀬亜論の笑顔を想像しながら、また菓子作りをするのも悪くなさそうだ。




