不幸中の幸い
掲載日:2022/08/01
笑わない少女。
ずっとずっと無。
オモチャ屋に行っても。
テレビを見ても。
美味しいものを食べても。
笑わない少女。
「ごめんなさいね。こういう子だから」
「いえ。大丈夫ですよ」
シングルマザー。
仲良くなって、しばらく知らなかった。
バツイチも、子供がいたことも。
数日前に、初めて知った。
牧場の空気は、きれいだ。
清々しい気持ちになる。
少女は、変わらず無表情だ。
『ソフトクリームあります』
そんな文字が、目に入った。
これならイケる。
すぐに、売り場に向かった。
ソフトクリームは、誰でもテンションが上がる。
少女も、きっと笑ってくれるはずだ。
ソフトクリームを、ひとつだけ買った。
嬉しくなって、少女の元に走って向かった。
その時、なにか硬いものに、つまずいた。
埋まっている石のようだった。
そのまま、豪快に前に転んだ。
ソフトクリームはしっかりと、顔の中心を捉えていた。
最悪だ。
意外と、ねっとりしていた。
冷たさを手で拭っていると、その先に少女が見えた。
少女の目尻は下がり、口角はしっかりと上がり、クシャッとなっていた。




