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名無しのヒーロー  作者: 三田クリス
1/1

プロローグ

 俺は金が必要だった。

 ヒーローは嫌いだ。だが、女手一つで育ててくれている母さんに楽をさせてやりたかった。


 アタシは好きな人と肩を並べたかった。

 ヒーローである彼の隣にふさわしい女になりたかった。彼がいない人生に、意味はない。


 僕は誰かの特別になりたかった。

 ヒーローが誰かを助ける姿に憧れていたつもりだった。けれど、僕はただ誰かに認められたいだけだった。


 私は妻を殺した奴に復讐をしたかった。

 手に入れた力は奴と同じものだった。私とあの殺人鬼との境界線が、私には分からなくなった。


 結城飛色ゆうきひいろはヒーローになれなかった。

 だが、彼は誰よりも勇敢だった。

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