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調子に乗るな、偶然だからな


 朝、メアリが登校していると、後ろから黄色い声の波が聞こえる。


 女生徒が騒いでいるのだ。


 何事かと振り向けば、金髪、みどり目の王子様然とした人物がすぐ後ろまで歩いてきていた。


(確か隣のクラスのルカ・ハニエル)


 うわさではいつも天使のようなアルカイックスマイルを浮かべていると聞いていたが、目の前の彼のみどり色の瞳は冷え切っていて、口元も一文字に結ばれている。


 非常に不機嫌そうだ。


 そんな様子すら、周囲の女生徒には新鮮で魅力的に映るらしく多くの女生徒が熱を込めて遠巻きに見つめている。


「調子に乗るな」


 甘く端正たんせいな口元に似合わない、出会いがしらの暴言にメアリは目をむいた。


 つい不躾ぶしつけに見てしまったことをとがめられたのだろうか。


 甘い顔立ちがこうも冷徹れいてつな表情になると、まるで血の通っていない芸術作品かのようにみえる。


「偶然だからな」


 振り返った時にメアリのすぐ後ろを歩いていたことについてだろうか。


 メアリがたじろいでいると、ルカは興味がなくなったとでもいわんばかりに目をらし、メアリの横をついと追い越して歩き去っていった。


 彼の長い脚は歩幅も大きく、おそらくだが前をゆったり歩くメアリに苛立いらだちを感じていたのだろう。


 心なしか歩き去ったルカの周りはブリザードが吹いたかのように冷え冷えとしていた。


 ルカの後ろを申し訳なさそうについていった茶髪の塩顔の爽やかな男はちらりとメアリに片手で詫びの仕草をすると足早に去っていく。


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