プロローグ
0.プロローグ
そう遠くない未来。
人類の突然変異により、超能力を使えることが当たり前となった世界。
指を鳴らせば炎が、手を動かせば物が浮き、遠く離れた人物と脳で会話する。
そんな人間が存在するのが当たり前になった世界。
人々はこれを、新世界と呼んだ。
新世界暦92年、日本で大きな争いが起きた。
能力を危険視するあまり国民を厳しく統制する政府と、
それに反抗し自由を求める国民の激しい衝突。
死傷者約12万人。
この事件により、日本は大きく二つの派閥に別れることになる。
一つは帝国能力統制主義。
能力を持つ人間を、その能力が最大限に発揮される場所で就労させる。
人を殺めることに特化した能力であれば、兵士や暗殺者といった風に、
本人の意思は関係なく、その能力を活かすことに主点を置いた派閥。
もう一つは自由権利主義。
能力を持つ人間は、その能力の適正を問わない、自分の就きたい職種に就く。
危険な能力であれば監視下に置きはするものの、
政府によって能力の厳しい管理を"行わない"、元より人間の持つ権利を尊重した派閥。
互いに思想を分かち合う事は無く、事あるごとに衝突を起こし、両派閥の関係は悪化の一途を辿っていった。
新世界歴400年。
この状況を変えるべく、一人の男が動き出した。
それは、誰にも知られることは無かった。
そう、誰も知らなかった。
その男の持つ覚悟を。
自分が死のうが、国が滅びようが構わない。
どんな手を使ってでも国を一つにしようとするその男の覚悟を、
誰も、知らなかった。