ルウくんのさがしものはママがみつけたよ
今日のルウくんはいつもと違います。
ルウくんは保育園に行く途中、ずっと下を向いて歩いています。
泣いているから?
違います。
拗ねているから?
違います。
「ルウくん? ずっと下を向いて歩いてどうしたの?」
ルウくんのママが気付いてルウくんに聞きました。
「さがしものしてるんだ」
「探し物?」
「そうだよ。必ず見つけるんだ」
「探し物って何なの?」
「ママには秘密だよ」
「それならどんな形なのか教えてよ」
「それも言えないよ」
「どうして?」
「だって、僕にも分からないから」
「えっ。分からない物を探してるの?」
「うん。だって僕の落とし物じゃないからね」
「誰かの落とし物を探してるの?」
「うん」
「落とし物が何なのか分からなかったら見つからないと思うけど?」
「キラキラした物っていうのは分かってるからキラキラを探してるの」
「そっか。前を見て歩けないからママと手を繋ごうね」
「うん」
ルウくんはママの顔を見て笑顔で手を繋ぎます。
ママと手を繋いだルウくんは探し物なんて忘れて嬉しそうにママと話ながら歩きます。
◇
ルウくんは保育園に着いて探し物をしていることを思い出しました。
そして次は保育園のオモチャ箱を探します。
「ルウくん。何をしてるの?」
保育園で一番、仲の良いカイくんがルウくんに話しかけてきました。
「さがしものをしてるんだ」
「オモチャ箱の中にあるの?」
「誰かが間違ってオモチャ箱の中になおしてないかなって思ったんだ」
「見つかったの?」
「それが、カイくんと前に探してたヒーローの人形は見つかったんだけどそれじゃないんだ」
「えっ、ヒーローの人形?」
カイくんはルウくんの手の中にあるヒーローの人形を取り遊びだした。
「ねぇ、ルウくん。このヒーローには仲間がほしいよ」
「あっ、魔人がヒーローを襲ってきたの?」
「そうだよ。サラ先生魔人だよ」
「それは大変だよ。サラ先生魔人はお片付けしなさいって言ってくるよ」
「だからヒーローには仲間がほしいんだよ」
「それならこのくまさんの人形が仲間になるよ」
ルウくんはそう言ってくまさんの人形だけ出してオモチャを全て箱になおしました。
ルウくんはまた探し物なんて忘れてカイくんと遊んでしまいました。
◇◇
ルウくんはお昼寝の時間になりました。
ルウくんの大好きなミヤちゃんの隣です。
お昼寝の時間なのにルウくんは眠れません。
何度も寝返りをうっています。
「ルウくん。眠れないの?」
隣のミヤちゃんがルウくんを心配して話しかけてきました。
「うん。さがしもののことを考えたら眠れなくて」
「さがしもの?」
「今日、見つけたいのにみつからなくて」
「私もさがしものがあるんだ」
「ミヤちゃんも?」
「私は四つ葉のクローバーを探してるの」
「それは大変だよ。僕も四つ葉のクローバーを探したことがあるけどみつけられなかったよ」
「今日は絶対に見つけたいの。だから早くお昼寝をしてまた探すんだ」
「僕もお昼寝が終わったら探すよ」
「一緒に探してくれるの?」
「うん」
「ありがとう」
そしてルウくんはミヤちゃんと向き合ってお昼寝をしました。
ルウくんはお昼寝から起きたらミヤちゃんと四つ葉のクローバーを探しました。
ルウくんはまたまた探し物なんて忘れてしまいました。
◇◇
四つ葉のクローバーをみつけてやっとルウくんもさがしもののことを思い出し、次は棚の上や机の下など色んな所を探しています。
「おい、その四つ葉のクローバーくれよ」
四つ葉のクローバーをみつけてミヤちゃんが喜んでいると保育園で一番体の大きいダイくんがミヤちゃんに話しかけてきました。
「イヤよ。これはルウくんと一緒に探してみつけたんだから」
「俺もほしいんだよ」
「それならダイくんも探せばいいじゃない」
「ミヤちゃんが持ってるのがほしいんだよ」
「ダメ。これは絶対にダメよ」
「僕はそれがほしいんだよ」
そう言ってダイくんはミヤちゃんから四つ葉のクローバーを奪いました。
ミヤちゃんは泣き出してしまいました。
ミヤちゃんの泣き声にルウくんは気付いて二人の所へ来ました。
「ミヤちゃん。どうしたの?」
「ダイ……くんが……四つ葉のクローバー……」
「ダイくん。それはミヤちゃんのだよ」
「僕も四つ葉のクローバーがほしいんだよ」
「それならダイくんも探せばいいでしょう?」
「すぐにみつからないよ」
「みんなで探せばみつかるよ」
「探してくれるの?」
「うん。だからミヤちゃんに四つ葉のクローバーを返してあげて」
「うん」
そしてダイくんはミヤちゃんに四つ葉のクローバーを返しました。
ミヤちゃんは嬉しそうに笑っていました。
「私も探すよ」
「ミヤちゃんも?」
ミヤちゃんの言葉にルウくんは驚きました。
「だって、私もルウくんが一緒に探してくれたから見つかったんだもん。三人で探せばもっと早く見つかるよ」
「そうだね」
「ミヤちゃん、さっきはごめんね」
「いいよ。早くみつけようよ」
ルウくんはまたまたまた探し物なんて忘れて次は三人で四つ葉のクローバーを探しています。
そして四つ葉のクローバーは見つかりみんな幸せそうに笑っていました。
◇◇◇
保育園の一日が終わりルウくんはママと手を繋ぎながら家へ帰っています。
「ルウくん。探し物はみつかったの?」
「あっ、忘れてた。ダイくんとミヤちゃんの探し物をしてたら探すの忘れちゃった」
「明日でいいんじゃない?」
「ダメだよ。ママが困るから」
「ママが困るの?」
「うん。ママがこの前、言ってたから」
「ママが何か言ったかなあ?」
「ママもルウくんみたいに泣きたい時に泣けたらいいのにって」
「えっ、聞いてたの?」
「うん。ママが泣けないのは涙がないからだよ。ママは涙をどこかに忘れてきたんだよ。だから僕はママの涙をさがしてるの」
「ルウくん。ママの為に?」
「ママ? 涙が出てるよ」
「うん。ルウくんがママの涙をみつけてくれたの」
「えっ、ママの涙はどこにあったの?」
「ルウくんの中にあったよ」
「僕の中?」
「ルウくんの優しい心の中にあったよ」
「僕がママの涙を持ってたの?」
「うん。だからママはルウくんから涙を貰う為にルウくんを抱っこしてもいい?」
「うん」
そしてママはルウくんを抱っこして抱き締めました。
「ルウくん。ママの涙を探してくれてありがとう」
「ママ。泣きたい時は言ってよ。僕が一緒にいてあげるからね」
「うん。だからルウくんがママの涙をずっと持っててね」
「うん。ママ大好き」
「ママもルウくんが大好きだよ」
ルウくんのさがしもの。
それはママの涙です。
そしてママの涙はルウくんが持っています。
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明日の作品の予告です。
明日の作品は好きな幼馴染みに恋人ができてしまって気持ちを伝えるのはもう遅いと思う主人公ですが諦められないでいるというお話です。
気になった方は明日の朝、六時頃に読みに来て下さい。