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第1話 転生前夜?

 コツコツコツコツ……


 青白い月明かりが窓に差し込む廊下。

 革靴を履いた白衣の男が歩いてくる。

 月光が男の手のひらにある古い十字傷を映し出す。


 彼はドアノブに手をかける。


 ガチャッ


 たくさんのモニターが並ぶ部屋に入る。

 そのモニターからの青白い光が部屋を煌々と照らしている。


「様子はどうだ?」

「今ノトコロ問題アリマセン」

「そうか」


 手元のカルテを見る。

「しかし、こいつは凄いな」


 手元のカルテに書かれていたのはその少年の診断と経歴である。


 #1076/男性


 平凡な家庭に生まれた少年。


 特に裕福というわけではなかったが、少年はきっと幸せな人生を送れたことであろう。

 彼には多くの才能があった。

 一人息子ということもあり愛情を注がれて育った彼はすくすくと育つ。


 そして彼が小学生になるとその才が顕現してきた。

 ピアノを弾かせれば誰もが足を止め、絵を描かせればコンクールで賞をとる。学校の成績もよく、優等生。

 ただ。運動は苦手だったようだが。


 信頼も厚く生徒会長も任されていた。

 処世術にも長けており、悪くいえば八方美人なわけだが……高校生にして多くのコネを持っていた。


 近場の有名工場と市役所との話し合いにも1枚噛んでた……

 とか

 学校の運営にも口を出してた……とか


 確定した話じゃないけどそういう話を掘り出せば色々でてきそうだな。


 詳しいことは覚えてないが、彼の行動力?というか交渉力は凄まじいものがある……ということだな。


人畜無害そうな顔をして、なかなかにやり手である。


 そんな彼が今、私の手術を受け眠っている。かなり難しい手術で術後どうなるか分からない。数値も芳しくない。

 そんなわけで気をもんでるのだ。


 部屋を出て、隣の部屋に行く。


 1096号室と書かれた部屋。


 ここの部屋にいるのは中学生のツインテールの少女だ。右目の下にあるホクロが印象的だ。


 カルテを見る。


 #1096/女性

 この子は生まれつき病弱ではあったものの、両親の愛情によって楽しい人生を過ごせてきたようだ。

 この子にも手術を施した。


 術後の経過観察という訳だが、先に手術したこの子の様子を見ると至って健康そうで数値も悪くない。

 この様子なら同じ手術を受けたあの少年の方もじきに良くなるだろう……


 そんなことを思いながら部屋を出る。

 さて、コーヒーでも飲んで夜勤の合間の休憩、としますかね……


 ビーっ!!ビーっ!!ビーっ!!


 けたたましいアラームの音が鳴り響いた。


 少年のいる1076号室だ……


 ったく……休もうと思ったのに……


 急いでドアを開け、1076号室に入った。


バタンっ。


 ▼▼▼▼▼▼▼▼

 んんっ……


 ここはどこなのだろうか……


ぼんやりと真っ暗だった視界がひらけてくる。

ずきっ……


痛っ……

痛んだ頭を抑える。特に何か怪我しているという感じではないので内部からくる頭痛だろう。頭痛持ちではないので、どこかでぶつけたか……?


 辺りを見渡すと白い雲に囲まれていた。

 起き上がって見ても何も無い。ーいや、その雲のようなものはあるがー


 誰かいませんかーー!!


 叫んでみても誰かが返事する様子もない。


 ここはどこなんだ……


 ずきっと少し痛む頭をおさえつつ、これまでに起きたことを思い返してみる……


 ▼▼▼▼▼▼▼▼

 その日。

 学校へ通うために道を歩いていた。


 駅から続く道。いつもと何も変わらない……はずだった。


その日は晴れた日で春の陽射しが家々の合間から街を照らしていた。


 妹ともに駅を降りる。そう、妹がうちの学校に来ることになった。というのも、中高一貫校であり、今年、ここの中学を受験し、妹は見事合格したのだ。


その中学は僕の通う高校に併設されているので、初日ということもあり僕が学校に連れていっている。

親は忙しいからな……入学式にはなんとか来れるらしいけれど。

 僕の時は来てくれなかった。別に恨んでるとかそういうわけじゃないが。


 妹の隣を歩く僕。僕の隣を歩く妹。


 交差点に差し掛かった時であった。


 大きなトラックが暴走してきたのである。とんでもないスピードで交差点、いや僕と妹のいる方を目掛けて走ってくる。

咄嗟に妹を庇った。


 次の瞬間、トラックが体に当たり飛ばされてしまったのである。


 視界に血がまじり、薄れゆく意識の中である男性が近づいてきたのは覚えている。


 君たちっ大丈夫か?!私は医者だ。車があるからすぐに送ろう……


 そう言って手を差し伸べてきた。

 僕はその手を見て、自分の手を重ねた。


 そこで意識は途切れ視界が暗転した。


 彼の手には大きな傷があったのだけは覚えている。

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