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おぱんつ会議  作者: 粗挽きマスタード
2/7

考察

ストックが無ぁぁぁい!

『おぱんつ会議』


 ……間違いない。

 何度見直しても、ホワイトボードにはそう書かれている。


 ふざけているのか?

 この単語を書いた奴は、一体何を考えているというのだ。


 バカみたいな内容のそれは、この異常な状況の中で明らかに浮いており、俺の怒りや焦りといった物を一際(ひときわ)煽ってくる。


「……いや、冷静になれ、冷静になるんだ俺」


 マンガとかだと、良くある展開じゃないか。

 訳の分からない状況から、意味の分からない事をさせられるのなんて、むしろお決まりのパターンだ。


 大概、こういったヤツは冷静になって、些細なヒントを手掛かりに物事を進めて行くのが正解なんだ。

 だから、一見するとアホな内容にしか思えないこの文章も、何らかの意味があるのかもしれない。


 俺は自分に言い聞かせるように呟き、一つ呼吸を挟んでからホワイトボードへと向き直った。





『おぱんつ会議』





 相変わらず、何を意味しているのか分からない文字がそこには陳列している。

 しかし、俺はその内容を真剣に考えていく。


『おぱんつ会議』というのだから、それは間違いなく『おぱんつ』の『会議』の事なのだろう。

 一体それが何を意味するのかはひとまず置いておくとして、『会議』というからには『おぱんつ』に関する何らかの話し合いが行われるに違いない。

 そして『おぱんつ』という単語から一番連想されるのは、下着を意味する『パンツ』である。


 つまり、『おぱんつ会議』というのは、その文字を素直に受け取るのであれば『パンツ』の話し合いをする事に他ならない。





『おぱんつ会議』





 なるほど、言い得て妙である。

 そういった意味であるならば、それはまさしく『おぱんつ会議』の一言に尽きる。

『おぱんつ』の『会議』なのだから、『おぱんつ会議』の他になんと呼ぶべきか。


 少なくとも、現状ある材料で判断する限り、あのホワイトボードに書かれているのは『おぱんつ会議』以外の何ものでもなさそうだ。





『おぱんつ会議』





 ……しかし、そう考えると、この文字の羅列には少し疑問が残る。





()()()()会議』







 果たして、どうして『パンツ』ではなく『ぱんつ』と、わざわざひらがなで表記されているのだろうか?


 確かに『パンツ』と『ぱんつ』では、文字にして見た時に印象の差が生じる。

『パンツ』と書いてあれば、固く四角い印象を受けるし『ぱんつ』と書いてあれば柔らかく丸い印象を受ける。


 だが、一般的には『パンツ』と表記されるのが普通ではないだろうか?

 それを、あえて『ぱんつ』と表記したのはどうして。

 それこそ、『パンティー』や『下着』でも良いではないか。


 それなのに、ホワイトボードに書かれているのは『おぱんつ会議』だ。

 これを書いた人間は、何を考えて『おぱんつ会議』という表記を用いたのか……


 そして疑問はもう一つ。





()ぱんつ会議』





 これ見よがしに置かれた『お』という接頭語の存在だ。 


 通常、接頭語というのは、言葉を丁寧にしたり美しく表現するための敬語として使われる。

 それをあろう事か『ぱんつ』という単語にくっつけて『おぱんつ』としているのだ。


 一体何がしたいのだろうか?

 ぱんつを敬語にして、誰を敬うというのか?


 それとも何か、ぱんつを美しく表現するための美化語として用いているとでもいうのだろうか。


 こんな言葉遣いは、日常生活では絶対に使わない。

 例え下着の専門店に行ったとしても、店員に「おぱんつをお探しですか?」と声をかけられるなどありえない。

 よしんば、そんな店員がいたとして、「こちらのおぱんつは、いかがでしょうか?」などと勧められたら、俺は吹き出す自信がある。


 何故……

 どうして……


 考えれば考える程訳が分からない。


 しかし、この二つの不自然な点が、これから行われるであろう『おぱんつ会議』において重要な意味を帯びてくると、不思議とそんな予感がするのであった。


 


 











「…………ふぅ」


 と、そこまで考えが至り、俺は椅子の背に体重を預けて息を吐く。

 どうやら、あれこれ思考した事で頭が冷えてきたようだ。




















「俺は、一体何を考えているんだ……」


 そして、自分のバカさ加減に気が付いて、頭を抱えたのだった。

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