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冒険者 カイン・リヴァー  作者: 足立韋護
第四章 【失礼冒険者と失われた海域】
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邂逅と対話

 その場にいた冒険者らは、自然と武器を構えていた。しかし、カインはあることに気が付く。


「こいつ、俺を見てる……? でっけえけど、穏やかな目だ」


 カインは引き寄せられるように海龍神へと近づいていった。そのうちに、海龍神の力なのか、己の中で繋がったのかは不明だったが、海龍神が言わんとしていることが、ぼんやりと理解することができた。

 カインが甲板の手すりに立つと、背後からアベルとローゼの声が聞こえてくる。


「カイン! 何が起こるかわかりません! 危険です!」


「死ぬつもりなの! 早くこっち来なさいよ!」


 カインは手を挙げて「大丈夫、多分」と一言応答した。


「海龍神様よ、あのイカ野郎のせいでずっと起きれなかったんだろ。違うか?」


 海龍神はゆったりと瞬きをした。


「あの光ってた球は、多分あんたの心臓みたいなもんだ。その力をずっと吸われてたから覚醒が遅くなった。俺は多分あれに触っちまったから、いま通じ合えてるんだな」


 海龍神が鼻先をカインの体に触れさせた。磯の香りが鼻をくすぐり、岩のような冷たい肌をしていた。


『此度はあの厄介な者を退けた事、感謝する』


「え、人の言葉話せんのか!」


『此れは神言。貴殿が我が心に触れたが為に、流入し、理解が及んでおる。貴殿が読み解き、良き様に変換しておる』


「そうか……なんか壮大なことに。あ、でもな、あんたを助けたのは俺だけの成果じゃない。ここにいるみんなの力があってこそ、あの場にいて、力を発揮できたんだ。どうするつもりかわからねえが、見逃してやってほしい」


『元より喰らう意思は無い。我の願い、此の背に乗る命、貴殿らで受け入れてはくれまいか。無論、不可と言われた命は、我が喰らい、我と共に生きる事と成る』


 カインは首を傾げる。


「命の選別なんて、できねぇよ。それは俺であっても、神と呼ばれるあんたであっても同じはずだ」


『此の命らは、育まねば』


「そう思うんなら、暫く人がいない島にでも取り着いて、そこに移住させたらどうだ。すぐにでも潜りたいんだろうが、あんた寿命長いんだろ。ちょっとの我慢さ」


『……其れならば我は島を目指そう。此度の礼はまた何処かで』


「待った、一つだけ聞かせてくれ。あんたの心臓に触れたときに見えたあの光景は、いったいなんだったんだ」


『貴殿の背に負う物から放たれた思念と記憶。嘗て、背に負う物の所有者が、意図的に、残留思念を投影出来得るようにした。貴殿の運命を、其の者が手助けしておる』


「俺の運命の、手助け……?」


 海龍神はそれだけ言い残すと、顔と手足を海へ沈め、移動していることがわからない程度の低速で、徐々に移動を始めた。見た目は島にしか見えない。船上の冒険者らは、全員その場に座り込んだ。皆、額に汗を滲ませ、天を仰いでいる。ベルは感激のあまりむせていた。

 カインは魔斧ドラードを再び見つめ、遥か昔に千獣の儀を完結させたであろう人物に思いを馳せていた。


「カ、カイン! なんて危ないことを!」


「あんた何が大丈夫よ! 何もなかったから良かったものを!」


 アベルとローゼが喚き散らしながらカインへと近寄ってきた。「へへ、わりいわりい」とカインが手すりから降りようとした瞬間、何かが頭の上に乗っかった気がした。それを鷲掴みにして見てみると、何かが手の中でジタバタと暴れている。


「離せ! 離せ!」


 急いで手を空けると、そこには見覚えのあるフェアリーが顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけていた。


「ミュウファ! お前どうしてここに!」


「あの島、海龍神様だった。みんなは住むけど、わたし、神様の上になんて恐ろしくて住めない。それに島以外のところも行きたい。だから来た!」


 ミュウファは腕組みをし、得意げに胸を張った。カインらが呆れていると、横から声が聞こえてきた。予想通りの反応に、カインはその手を差し出した。


「お、お前は、ミュウファなのか……?」


「ベ、ベル!」


 二人は近くに寄り、互いの顔をじっくり見つめた。


「おおぉ! ミュウファ! 変わらないなぁ!」


「ベルは老けた! あははっ!」



 二人は町に戻るまでの間、昔話に花を咲かせるのであった。



────暫くして、海龍神が少し遠ざかったことを確認してから、船は出航した。港町アビシアに戻ると、すぐさまベルの城に移り、クエストクリア条件を満たした者の発表が行われた。屋敷はアビシアを見下ろす丘の上に立っており、私兵や城壁まで備える要塞のようであった。


 クエストで”お宝”とされていたものは、海龍神メリウロ・ケイス・オプニュートに関する情報であったが、それを遥かに上回る成果を上げたということで、参加者全員に達成報酬が支払われることとなった。そこには、神獣討伐や、海龍神出現に関与していない者ももちろん含まれていたが、そもそも海難事故が発生してしまったことによる、慰謝料代わりでもあるとのこと。


 そして、参加者のうちから、神獣討伐による”失われた海域”解放に携わったカインら一行の冒険者には追加の報奨金が出された。

 更には、海龍神出現に直接関わった、神獣討伐実行メンバーのカイン、アベル、ローゼ、そしてその三人を救出したクリスに対して、特別な追加報酬が渡されることとなった。

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