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冒険者 カイン・リヴァー  作者: 足立韋護
第四章 【失礼冒険者と失われた海域】
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一方通行の評価

 カインが表情を緩めがらミュウファへ近づこうとすると、ミュウファ含むフェアリーらは酷く怯えた様子で退いた。もはや偏見の目は揺るぎないものとなっていたのである。カインは暫し俯くと、やがてバツが悪そうな表情を浮かべて「悪かったよ」とその場を後にした。アベルやストガ、テリアらも急ぎそれに続く。

 アベルがカインの横に並んで歩いた。


「もっと情報を聞き出す方法もあったのでは」


「お前から見てあのフェアリー達はどう見えた」


 アベルには質問の意図が読めなかった。


「それは、フェアリーにしか見えませんでしたが……」


「ミュウファは強気に見せようとしていたが、あれは見せかけだった。仲間を守るために、自らを犠牲にする勇気がある奴だ。その後ろの奴は大人しそうな奴だったが、いつだって俺に攻撃できるように、腰の後ろに刃物を忍ばせてた。きっと今までもミュウファを支えてきたんだろ。他にも、一見して同じようなものにしか見えない者でも、それぞれの道があって、それぞれの色がある。でもそれはよく目を凝らさないと絶対に見えることがない」


「フェアリー達は、我々とあの弓の冒険者を同じものとして認識したということですか」


「例えば、フェアリーの一人が俺を殺したとする。その他のフェアリーが全くそのつもりがなくとも、全員そういうことをする可能性がある、ってレッテルが貼られる。そんなもんと言えばそんなもんだ。単純で当たり前のことだが、その普遍的な感情を客観的に見て、乗り越えて、目を凝らすことは想像以上に難しい。だからそれを強いることはそれがいくら正しかろうと、感情を殺せと言っているのと同義」


「なるほど、難しい……」


「私も同意見です。我々が促すのでも導くでもなく、気付いてもらうべきなのです」とテリアが同調した。


「それで小難しい話は置いといて、フェアリー達とお喋りして、喧嘩別れしちゃって、振り出しに戻ったように見えるんだけど?」


「悔しいがローゼの言う通りだな」とカインは呟いた。


 カインらは一度拠点へと戻った。既に騒動を聞きつけた各班が戻っていた。皆へ一連の出来事を説明すると一様に驚いた様子を見せたが、フェアリーを生け捕りにしようと進言する者はいなかった。むしろ、フェアリーをお宝とするのは依頼主を知らなさすぎるという文句まで出た。


 本クエストの依頼主であるアビシア領主コングラウス卿、ベルロイシュ・コングラウスは、かつて冒険者として名を馳せた。多くの仲間と共に数々のクエストをこなしていた実力者であったが、とりわけ彼を有名にしたのは、例え泥を啜るようなクエストであっても人の為であれば率先して受注すること、そしてクエスト外であっても困っている人を決して見過ごさない人格者であるということであった。それは”お人よしのベル”と通り名がつくほどであったという。

 そんな彼がフェアリーの生け捕りなど望むはずもない、というのは彼を知る者達の意見であった。


 また新たな情報として、周辺警戒班からの報告により、自分達以外の冒険者も島のあちこちに拠点を作っていることがわかった。その大半は島からの脱出よりクエスト達成条件でもあった”隠された宝”とやらを探してるのだという。いち早く宝を見つけ、救助が来るまでの持久戦に持ち込む算段だということは行動から読み取れた。


「皆で一休みしたら拠点を移動します。今晩から明日の夕方までの拠点を新たに建造したのち、明日の方針を決めていきます」


 アベルの号令により、その場の緊迫感は若干緩み、各々食事の準備に取り掛かるのであった。


────その夜、拠点の移動を終えたカインは、汗を流すために砂浜に来ていた。


 波の音だけが辺りを包み、潮の匂いが時折鼻腔を刺激する。夜空を数えきれんばかりの星々が色どり、その真ん中に一際輝く大きな星が見えた。


「星なんか見つめて、どうしたのよ」


 後ろを振り返ると、ローゼが視線を逸らしながら歩いてきた。


「遥か遠くにある”月”って星にヘルズって名前の神が封印されてるって話、聞いたことあるか?」


「何よ突然……。そんなの習うに決まってるでしょ。夜と死を司る悪神ヘルズが自分勝手するから開神シントと他の神々によって月に封印されたの」


「どこにあるんだろうな、月ってのは」


「きっとここからは見えない、遠い遠い彼方よ。神話なんだからおとぎ話みたいなものでしょ。何を真剣に考えてるの」


「ま、ちょっとな。それでお前こそ何しに来たんだよ」


 ローゼは気まずそうな表情でカインの背負う魔斧ドラードを指差した。


「それ夜になるとたまに赤く光るのよ。魔武具でしょ。あんたもしかして秘術を……使ったの?」


「そんな訳ねえだろ。俺がそんな賢く見えるのかよ」


「いや、でも……まああんたはやらなさそうね」


 二人の間に暫し沈黙が流れた。海風がひとつ吹いたあと、カインが海原を眺めながらぽつりとこぼした。


「────”必殺の魔武具”を探してんだ、俺は」


「必殺?」


「一太刀浴びせればどんな生き物でも確実に殺すことができる武器だ。この数十年間、ずっとそれを探してる」


「それって、理由は聞いても良いの?」


「四個下のシェリスって名前の妹がいんだ。昔っから仲良しでな、一緒によく追っかけっこして遊んだりしたよ。お兄ちゃん子なやつで、俺の後ろをついて回ってたもんだ」


 ローゼは真っ直ぐになりカインの背を見つめながら、黙って話を聞いた。




「俺はシェリスを殺さないといけない」


「え……?」


「こんな孤島に密偵もいないだろうし……。せっかくだ、少し昔話を聞いてくれるか」


 カインは砂浜に座り、横を手で叩いてローゼを座るように促した。

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