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冒険者 カイン・リヴァー  作者: 足立韋護
第四章 【失礼冒険者と失われた海域】
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団結の冒険者

 翌日、カインらはハイウルフの肉と周辺に自生していた木の実で、手早く朝食を済ませ、これからの方針について考えることとした。しかし、いざ皆が話す内容をまとめると十人いた冒険者の意見は真っ二つに分かれた。


 そもそも、乗っていた船の帰港がないのだから異常事態に気付かないわけがない。まずは船を沈没させたあのイカを討伐し、それからは自身らの拠点を防衛しつつ、救助船が来るのを待つという意見。これはローゼやテリアなどの意見であった。

 それに対して、島から出る方法などはいくらでもあり、それよりもクエスト達成の目標である”隠されたお宝”とやらを見つけ出すために行動すべきだとする意見。カインやストガなどの意見であった。

 だが今この困難な状況下において協力関係も崩したくはなく、かといって納得できない意見に従うほど、冒険者らは信念を曲げることができないタチでもあった。

 そんな矛盾を孕んだ状況の中、カインはアベルがひとつも発言していないことに気がついた。


「おいアベル。さっきから何も言ってないけどよ、お前の意見はどっちなんだ」


 皆が自然とアベルへと視線を向けた。暫し視線を落とし黙り込んでいたアベルは一息吸ってから、皆を見回した。


「どちらでもあり、どちらでもありません」


「な、なんだって?」


「問題をシンプルにしましょう。確実な方法でこの島から出ることは意見云々以前に大前提。なので、ローゼさんやテリアさんの考えは正しいんです。それが為されなければ意味がない。それに、参加費だけでも大金は貰える。わざわざ命を賭す必要はない。ですが、船が沈没した事実確認、船舶や船員の再編成、用心棒となる冒険者の雇用……救助船が来るのは早くても今日から四日はかかるはず。それまでここに居座ってはハイウルフに場所を覚えられ、まともに出歩けなくなる。ではどうするのか」


 アベルは他の人間が口を開く間も与えぬまま、話を続けた。


「拠点問題は昨晩のように、カインやストガさんがすぐに作り上げてくれますので、考えないようにします。まずもっての目標はイカ狩りです。あれがいる限りは船は潰され続ける。それがクリア出来たらあとは船を待つだけですが、それからも拠点は移動し続けなければなりません。どうせ島内を移動するなら、その合間にでもお宝とやらを探してみてはいかがでしょうか。お宝探しをしようがしまいが、救助船が来るのは早まりませんから」


 アベルは分裂していた二つの意見を時系列ごとに整理し、まとめて提示した。一見して冷静に見えるアベルであったが、その手のひらを汗が伝っていた。手練れの冒険者も多い中、未熟な自らの意見が通るか、そしてもし通らなければこの冒険者連合が分裂してしまうのではないか。様々な不安に思考を巡らせていたが、皆一様に笑みを見せ、納得したように頷いた。


「なら、まずはイカ狩りか! 食ったら美味そうだな!」


 カインがガハハと笑った。一方、その横に座るストガは腕組みしながら「陸なら任せてほしいが、水中は……なんとも」と難色を示した。他の冒険者らも同じく、短剣や鞭などの使い手ではあるものの水中戦においてはいまいち自信がないようである。そんな中、前に出てきたのがローゼとテリアであった。


「あたし、水の元素術の一部だけ使えるから、少しは役に立てる……かも」


「わたくしも魔導術師の端くれ。土しか使えませんが、協力はできるやもしれません」


「よっしゃ。要はイカをブった斬りゃいいんだろ? 簡単じゃねえか!」


 アベルはそんなカインを横目で見て、どこか救われた気分になった。そんな流れから自然とアベルが司令塔のような役割を担うこととなった。アベルは皆にそういう役割なだけだと念押ししてから、冒険者らを食糧確保班と周辺警戒班とイカ討伐戦略班とに分けた。実力者であるストガとテリア、水の魔導術を使用できるローゼ、アベルとカインが討伐戦略班となった。もちろん、戦略班全員がイカと戦うことを想定しての采配であった。


 戦略班全員がイカの出現地点を思い出しながら範囲を絞り込んでいった。特にカインとローゼはぎりぎりまで船上に残っており、またストガも島から船の様子をずっと眺めていたことから、船の沈没地点はある程度判明した。

 しかし、イカの行動範囲自体は不明であった。ルーダ島周辺が魔の海域と言われていることから、その海域全体の可能性も多分にある。それでは作戦の立てようもないと早速とん挫しそうになった折、周辺警戒班の男が汗を垂らしながら走り帰ってきた。


「おいおい、どうしたってんだ」とストガ。


「ちょ、ちょっと来てくれ!」


 一行は男に連れられるまま、森の奥へ進んでいくとそこには見惚れるほど美麗な泉があった。泉の水は澄み、その周囲には色とりどりの花が満開に咲いていた。周囲の木々もまるで泉を避けるようにして自生していた。カインはずけずけと花々の咲く中を歩いていき、泉の中を覗き込むが何もない。


「確かに綺麗だけどよ、そんなに血相変えるほどか?」


 カインがそう言いながら振り返ると、周囲に数えきれないほどの羽根の生えた小人のような生き物が飛んでいた。それは人間、獣人、エルフ、ドワーフ、いずれにも属さない希少種族でもある”フェアリー”であった。

 血相を変えるのも無理はなく、フェアリーは生きている間に一度見られれば幸運と言い伝えられるほど、人前に姿を現さないことで有名であった。そんな種族が、目の前に、しかもとんでもない数出現している。一同は、いまの状況に反応しきれず、硬直するしかなかった。

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