表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者 カイン・リヴァー  作者: 足立韋護
第四章 【失礼冒険者と失われた海域】
37/79

船上の魚人

 宿舎で出される料理は、海鮮がふんだんに使われたものばかりで、皆が舌鼓を打った。カインが席の端に座るローゼを一瞥すると、海鮮料理を口にしていなかった。カインの視線を追いながら、アベルが貝料理を平らげてから話し出した。


「森の民と呼ばれるエルフは山の幸と川の生物が主食で、それ以外は口にしないんです」


「プライドの高さはピカイチだな」


 ローゼは本当に仲間がいないのか、他の冒険者とは違い、孤独に夕食を進めている。明らかに周囲から浮いているその姿は、なんとも寂しげに見えた。カインは次にクリスへと視線を向けた。至極普通に仲間達と談笑している。先ほどの不気味な面影はそこにはなかった。


「あの男、カインの過去を知っているふうな口ぶりでしたね」


「……まあ、大した過去じゃなあない。気にすんな」


 翌日、未明。冒険者達は音を立てることもなく、至って速やかに大型船へと乗り込んだ。カインが見る限り、辞退をした冒険者はいなかった。案内人もそれを知ってか、点呼することなく見送るのみであった。

 大型船内は宿舎のように過ごしやすくはなっておらず、恐らくただの漁船を改造したものであった。しかしながら遠目でみるよりはるかに頑強に補強されていた。

 船長と思しき男がひとしきりの挨拶を述べると、船は鈍い音を立てながら夜明けとともに出航した。


────船に揺られること数時間、日を照り返している水平線を見つめるカインは、波がわずかに高くなってきていることに気づいた。

 周囲の冒険者らも徐々にざわめき出し、船を打つ波の音と船の軋む音に表情を強張らせる。


 そこは既に、失われた海域であった。


 波が高くなるとともに、まるでそれを待っていたかのように太陽に雲がかかり始める。カインのいる甲板は不穏な空気に包みこまれていた。明らかに、先ほどまでいた海域と雰囲気が異なっていた。


 そんな折、誰かが「マーマンだ!」と大声を上げる。それと同時に、海中から勢いよく甲板へ飛び乗ってきたのは、魚の頭を持つ二足歩行のモンスターであった。それらは魚より知性が高く、手には漁師から奪い取ったのか、(もり)を携えていた。先発のマーマンに続くようにして、五~六体のマーマンが飛び出してきた。


「カイン、どうします」


「そりゃあ、ぶっ飛ばすに決まって────」


 カインが飛び出そうとした瞬間、見たことのある冒険者らが前に出た。クリス率いる冒険者集団である。


「カイン・リヴァー、今回は僕らに任せてもらうよ」


 声のするほうを見ると、隣にクリスが立っていた。こんな状況にもかかわらず、不敵な笑みと握りしめる短剣は相変わらずであった。


「なんでわざわざ」


「そんな、僕らはみんなの力になりたいだけさ」


 そう答えたクリスだったが自身は前に出ることなく、仲間達が戦っている姿をひたすらに見つめている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ