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冒険者 カイン・リヴァー  作者: 足立韋護
第三章 【無配慮冒険者と無限迷宮】
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帰郷の願い

 ペンダントをかけた死体は女性であった。それを庇うように男性の死体が覆いかぶさっていた。男性の背中には数えきれないほどの生傷があり、剣や槍が無数に突き刺さっている。貫通したそれらが女性の腹部にまで到達していた。女性は他の者に首を絞めつけられ、足を引っ張られても、なお、無理やりに体をよじらせ、修羅の如き形相で台座に手を触れたまま絶命していた。


 アベルは目頭を押さえたまま顔を逸らす。カインは二人の荷物を確認したが、そこには食料など何もなく、食べカスと乾ききった水筒しかなかった。カインは暫し目を瞑ってから、金色に輝くペンダントを静かに受け取った。

 台座の前に立つと、より輝きを増したようにも見える花が、石で造られた台座に立っていた。自生しているわけでなく、根も張らずにただ茎のみで台座に立っていた。カインはそれを手に取ると、自らの荷物に入れた。


「念のため、ペンダントの中身を確認しておきましょうか」


「ああ」


 カインがペンダントを開けて見せると、中身は淡い小金色の羽根、ニータの見せてくれたものと同じものであった。しかし、アベルはそれを見ると、口を開けてカインへと視線を送った。


「これは"帰郷の羽根"……!」


「帰郷の羽根?」


「オリオルバードと呼ばれる鳥類の羽根で、夫婦の羽根をそれぞれに持つと、どれだけ遠くであっても引き合う力があるとされています」


「……ちゃんと、帰るつもりだったんだな」


 アベルが羽根に微量の魔力を送ると、羽根が浮き上がり、不安定に左右へ揺れ動きながら、台座のある空間の出口へと移動していく。


「アベル、帰ろう」


「そうしましょう」


 羽根は時折、方向を変えはしていたが、迷うことなく迷宮を突き進んでいった。ある丁字路を羽根は右に曲がったが、その反対側から聞いたことのある声が聞こえてきた。


「た、助けて!」


 二人が振り返ると、ローゼが左足を引きずりながら、髪を振り乱して走ってきていた。その奥には、例の牛の頭をもつモンスターが立っていた。


「アベル、先に走ってろ!」


「気を付けてください!」


 カインはローゼとすれ違うと、そのままモンスターに向かって走っていき、跳躍しながら、魔斧を振りかざした。しかし、前回と同様に棍棒で真横に弾かれたが、その力を利用して体を回転させ、モンスターの顔面を魔斧で斬りつけた。顔面の半分を失ったモンスターは、咆哮を放ちながらその場にうずくまった。

 それを確認してから、カインはローゼを肩に担ぎ、アベルの後を追って走った。


「え、ちょっ!」


「しばらく我慢しろ! 死ぬよか良いだろ」


 ローゼは肩で暫し暴れたが、やがて諦めたようにして大人しくなった。アベルの背中が見えてきたと同時に、カインの背後では棍棒で手当たり次第に叩き暴れるモンスターが追ってきていた。怒り狂ったその歩みは、先ほどより明確に素早くになっており、徐々にカインとの距離を縮めつつあった。


「アベル! 出口はまだか!」


「もうすぐのはずです! 自分が塗ったスカルナイトの骨粉が見えたので!」


「ちぃ、だが間に合わないか。ローゼ、また降ろすぞ」


「待って、私に任せて!」


 カインはローゼの顔を伺うと、真剣な面持ちで頷いて見せた。


「わかった、やってみろ!」


「あんま人に見せたくないんだけどね。水の気、流麗の神ピカルスの御力により刃を顕現せよ」


 ローゼが両手をモンスターへと向けると、身に着けていた指輪が輝いた。円形の薄い水の膜が瞬く間に作り出され、モンスターへと飛んでいく。膜に触れたモンスターの片足が徐々に左右にずれ、やがて分断された。モンスターは呻き声を上げて倒れた。


「お前、その力……!」


「カイン! 出口です!」


 羽根の導きは正しかった。そこは迷宮の入り口に他ならず、見たことのあるテントや焚き火の跡がその証拠であった。

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