魔導術
カインはホープに用意された席に座った。近くに座っていた女生徒が遠慮もない様子で、カインに机をくっつけてきた。訝しげに女生徒を見ると、活発そうなその表情は、みるみるうちににんまりとした笑顔をこちらに向けてきた。
「なんだよ、勝手すると先生に怒られちまうぞ」
「だってカイン、教科書もないんでしょ? 見せてあげるよ」
「教科書……魔導書みたいなもんか?」
「ほら、今日はここだよー」
教科書には文字の成り立ちから、覚え方、特徴的な書き方の単語までを軽く触れたものであった。食い入るように見つめるカインを確認したホープは、笑みを浮かべながら授業を始めた。カインは授業に夢中になるあまり、教科書に書かれてある文字をそれが滲むまで何度も指でなぞり続ける。女生徒は不思議そうにその光景を眺めていた。
やがて授業の内容は変わっていき、皆の住む世界、アーティアの神話について語られ始めた。
「こうしてみんなの今習っている文字は、七神の中でも大地と理性を司る神、ジィソ様によって作られたとされています。この神様はすごくて、魔導術の基礎も築いたとされているんです。七神は他にも……」
隣の女生徒が突然立ち上がり、手を上げて見せた。
「先生ー! 魔導術って、なんか使っちゃいけないものがあるんでしょ? お母さんが言ってた!」
「まだ習っていないのに、よく知っていますね。それではせっかくなので魔導術師をお仲間に持つカインさんに質問です。魔導術は全部でいくつあるでしょう」
「あー、っと。第一魔導の元素術、第二魔導の秘術、第三魔導の神聖魔導術、第四魔導の幻想魔導術の四つだな」
「ええ、その通りです。元素術は火、水、風、土、雷など自然界にあるものを魔力を使って操る魔導術。また、秘術は肉体変化や武具の性質変化、更には人を操って害を及ぼす呪術など、変性的な魔導術のことで、法律では禁止されていませんが、人前で使えば今後一切信用されなくなります。絶対に使ってはいけませんよ?」
カインは、騎士団との合同クエストのことを思い出していた。呪術は人々の人生を大きく狂わせるものであると、改めてその身に感じていた。
「神聖魔導術は、神への信仰心が強い者が発現する不思議な魔導術です。魔力を使って守護や人体の回復ができ、教会の神官様などは大体使えます」
ホープの話を生徒らは紙へと書き留めていた。やんちゃな子供らも勉強に対しては真摯に取り組んでいるのだと、カインは感心した。
「そして最後は幻想魔導術。これはおとぎ話や昔話にしか出てこない魔導術で、瞬間移動や不老不死、時間操作など、本当にあるかもわからなければ、何が影響して使えるようになるかもわからない魔導術ですね。一部は遠い過去の書物に書かれていたために、第四魔導として設定されています」
ホープは皆が書いている間に「次は神話の続きをお話ししますね」と案内した。




