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冒険者 カイン・リヴァー  作者: 足立韋護
第二章 【無礼冒険者と無名の城】
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休戦

 日暮れになる頃には、誰一人として欠けることなく、モンスターを半数以上倒すことに成功していた。敵の実力と連携力より、その両方とも味方が上回っていたということだろうとカインは理解した。日暮れ後、残りのモンスターらが攻めてくることも考えられたが、ひとまずその猛攻は目に見えて減っていた。同じく自陣の冒険者や騎士団らの顔にも疲弊の色が見えた。


 やがて戦場には一時休戦と言わんばかりに、静寂が流れ始めた。号令が出される前に、冒険者らは各々夜営を始めた。カインらはギルの近くで戦っていたために、騎士団の夜営に混ぜて火にあたっていた。


 眠たげに焚火を見つめるカインの横で、アベルは魔導書を枕にしながら熟睡していた。そんな折、ギルがカインの横に座ってきた。晩飯は食べたはずだが、パン生地を薄く焼いたものを甘い蜜で塗った焼き菓子を手渡してきた。ギルの表情は昼間とは異なり、若干柔らかい印象に見えた。


「こりゃ、どういう風の吹き回しだ」


「まあそう警戒するな。差し入れだ」


 そう言ったギルは焼き菓子を頬張り、ほらと言わんばかりに穏やかな表情を見せてきた。カインもそれを頬張ると、口の中で砕ける音が鳴ったかと思えば、甘い風味が鼻から抜ける。


「美味いなこれ」


「当たり前だ。母の手作りなのだから」


「そんな大事なもん、こんな冒険者の端くれに渡していいのか」


「冒険者かそうでないかは関係ない。それに、間違いなく君は端くれなんかではない」


 ギルはカインに向き直った。火の明りが顔を照らし、何かいつにも増して真剣みを帯びた表情に見えた。


「その力はいったいどこで手に入れた。君ほど若い青年が、いくら毎日鍛え抜こうともあそこまでの力は手に入らないはず。何か特別な魔導術や魔武具を使っているのだろうか」


「どうしてそんなこと聞く?」


「いま、実力が伸び悩んでいるのだ。剣の腕を上げようにも、元々生まれつき体が強かったわけでもなないからな……」


 カインは冷めた視線をギルへと向けた。ギルは若かった。父ジークへの憧れ、騎士団長の息子という重圧、生真面目ゆえの責任感。そのすべてを払拭し、自身の自信に変える手段を力だと決めている。そうカインには見えた。


「ギル、お前は将来騎士団長になりたいのか」


「ああ、できるならば」


「ならお前の今の考えは直したほうがいい」


「間違い?」


「大抵の困り事は力で解決こそするが、根絶もされなければ改善もされない。お前ひとりが力を蓄えようとも、その時間、もっと大勢を指揮する力を養っていた人間こそが立派なんだ」


 ギルは顔を強張らせながら首を傾げた。


「しかし、騎士団は力を蓄えるべきだ。そうでなければ民は守れない」


「なーに当たり前のことを真顔で言ってやがんだ。お前が一兵士ならそれは正解だ。でもな、お前はもっと大きな人間になりたいんだろう。騎士団長になってみんな守ってやりたいんだろう」


「も、もちろん!」


「だったら、さっきのは愚問だ。お前が聞くべきは、俺じゃなく親父さんにあれだけの人数を指揮する戦術と考え方の教えを乞うべきだ。人間ひとりができることなんてたかが知れてる」


 暫しギルは沈黙したのち、納得したように頷いた。


「ならせめて興味本位で聞かせてほしい。あの力はいったい……?」


 カインは若干疲れた様子で再び焚火を眺め見た。


「──ま、強いて言うなら"呪い"だよ」

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