魔王少女育成計画その2
「むほぉー!なんれふか?こふぇー!!」
クリスはメロンパンが相当気に入ったらしくちょっと興奮気味にリスみたいに食べている。
「メロンパンだ。喉に詰まるぞ、喋るなら飲み込んでからしゃべってくれ」
「すみません、魔界ではこんなにふわふわしてて美味しいもの無かったもので、つい」
てへぺろみたいなポーズで誤魔化した。なにこの可愛い生き物。おっといけない、本題に入らなくては
「それで?匿わせてってどういうことなんだ?やっぱり魔王だから勇者に追われてるとか?」
クリスは食べかけのメロンパンを膝の上の袋の上に置いて少し俯き
「はい……そうなんです。実は、私魔王なんですけど、まだ正式な魔王ではないんです」
……正式な魔王、じゃない??
「えっと、それはどういうことなんだ?魔王、なんだよな?」
「私が魔王と認められる王冠を貰う瞬間に勇者様が攻めてきたので魔王なんですけどまだ正式な魔王じゃないんです」
あー、なるほど。つまりこの子は魔王の娘で魔王(仮)という事なのか
「で、何でここに?」
クリスは少し恥ずかしそうに顔を赤くして
「はい、逃げてる途中で、もう追いつかれちゃう、と思って転移の魔法を使ったんですけど……座標を登録しないで使ったのでここに偶然転移しちゃって、気がついたらここに」
「戻れそうなのか?」
いくらこのアパートに人が少ないからといってこんな可愛い子をずっと入れていたら、誤解を招くのは想像できる。帰れないのであればどうするかこれから考えなくてはならなくなる。
クリスはシュンとした顔になって黙った。
……まさか
「帰れない、とか……?」
「は、はい……この世界では魔力の消費が激しいみたいで自然回復に時間がかかりそうなんです……」
oh……今の間で何となく予想はついたけど、そんなベタな事あるんだ。蒼は布団の上から立ち上がり
「分かった、とりあえず大家に上手いこと伝えてここに住めないか聞いてみるよ」
この子を何とかしなければならない。流石にこの部屋にずっといるということはないだろうけど、行くあてがないなら何とかしてあげたいと思ったからだ。
「そういえばここはどこですか?小屋ではないですよね?」
部屋を小屋呼ばわりされるのは初めだな。
「ここはさくら荘っていう名前のアパート、…人が住む建物だ。ここの管理人に部屋が空いてないか聞いてみるよ。だからここで待っててくれ」
そう言って部屋を後にした。