卓上天気空論
浴衣を着た二人の若い男女が、卓球台を挟んで睨み合っている。男の方がピンポン玉をかかげて宣言する。
「お題は…天気!雨!」
パコーン
「えっと…晴れ!」
スコーン
「嵐!」
ポコーン
「う…曇り!」
ペコーン
「虹!」
バッコーン
ピンポン玉が女の肩をかすめて飛んでいってしまった。男の方は肘をピッタリ90度曲げて綺麗で挑発的なガッツポーズを決めていた。
「え!ちょと待って。虹って天気じゃないでしょ。」
「え?そうかな…。どうなんだろ。」
彼は少し弱気になる。
「ネットとかで調べたら?」
「でも僕はスマホを家に置いてきたし、君は携帯苦手でもっていないじゃないか。」
その上、彼は必要な時にしかスマホを充電をしないので、基本的に電源は落ちている。
「私達は現代人として致命的な欠陥があるようだね。」
「違いない。でも欠陥とはつまり進化の特異点でもあるな。」
「何に進化したいんだか…。私はどうせならクジラかクラゲになりたいなぁ。目的もなく海をユラユラ漂うの。素敵じゃない?」
「クラゲのほうが似合う。ミステリアスなところがいい。…話を戻そう。虹は天気なのか、違うのか。」
彼は話を逸した。なんだか恋人みたいな台詞回しが嫌だったのだ。二人は親友兼同居人というひねくれた関係だった。
「私は天気じゃないと思うよ?曇りだって空の八割が雲じゃないと曇りって言わないし。」
彼女は少し必死だった。この卓球勝負の敗者は勝者とさっき旅館で出会った優しいお爺さんにコーヒー牛乳を奢らなければならないのだ。それは二人の財布には優しくなかった。
「ふむ…。だが、巨大な虹が現れることはある。去年の8月あたりに現れた奴があっただろう。」
彼は一度言ってからこれが悪手であったと思い知った。
「それでも八割未満よ。だからだめ。」
彼女は一度言ったことを撤回することは無い。わがままな子供のように我を通すのだ。
「…確かに天気じゃないかもしれない。ならさっきのは無し。もう一勝負だな。」
彼女は咄嗟に抗議する。
「さっきのは反則負けでしょ。おとなしくコーヒー牛乳を奢りなさい。」
「お題は…」
「え!?ちょとまってよ!」
「犬の種類!チワワ!」
スコーン
彼は肘をピッタリ90度曲げて綺麗なガッツポーズを決めた。
あらゐけいいちさんの「ヘルベチカスタンダード」という4コマ漫画に若い恋人の日常の話があるのですが、タイトルが「SF」だったことに色々考えてしまうなみのりです。
お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。
コメントも一言貰えるだけでモチベーションが凄く上がるので、お暇であればお気軽にお願いします。
毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で11日目、今日1個目の投稿です。
と、毎回コピペしてるんですが、失礼かなとも思って、グラウンドに透ける杭を置くみたいに、次からはここになにか仕掛けるようにしたい!頑張ります!