ムナカタ
「これがホルスト殿に届いた手紙か。」
「はい。律儀にちゃんと我が国の郵便制度を利用して送ってきました。」
「そ、そうか。」
「さすがに差出人の住所は調べさせたところ虚偽でしたが。」
「中身は見たのか?」
「いえ、まだ中身は見ておりません。」
「そうか。では開けるとするか。」
ルクレスとホルストは開封して中を見る。
「拝啓
時下ますますのご清栄のこととお慶び申し上げます。
先日はルクレス杯にて、お騒がせをいたしました。
さて、本題に移らせていただきたく思います。
私はシュミット家に対して深い憎悪の念を抱いております。
つきましては、復讐させていただきたく思います。
お手数をおかけいたしますが、お会いしたく思います。
別紙を参照して頂けたらと思います。
敬具」
ご丁寧に別紙には集合日時と場所が書かれていた。
「なんだこのやけに丁寧に見せかけた失礼な手紙は。」
「さ、さあ。私にもわかりません。」
「ホルスト殿のご先祖は何をしたのだ?」
「それが、さっぱりわかりません。私も調べてみたのですが…。」
「ふむ。ともかくこの情報をトウキ殿にも共有せねばな。」
「はい。」
ルクレスとホルストはワーガルに向けて移動した。
―――――――
一方そのころワーガルでは、フランクが工房を訪ねていた。
「トウキは居るか。」
「あら、フランクさん。ちょっと待ってください。トウキ、フランクさんよ。」
「あ、フランクさん。どうしましたか。」
「いやな。その、お前の探していた謎の男についてわかったことがあってな。」
「おお!本当ですか!」
「ただな…。」
「ただなんですか?」
「う、うむ。トウキ達は時間あるか?」
「ええ、ありますよ。仮に無くてもあの男に関することなら無理矢理でも時間作りますよ。」
「そ、そうか。じゃあ、すまないがついて来てもらえないか。実際に見てもらった方がいいだろう。」
「わかりました。今すぐ行きましょう!」
俺とエリカはフランクさんについて王国東部の街を訪れることにした。
―――――――
「あれなんだが…。」
フランクさんに連れられて俺たちはワーガルから数日の街に来ていた。
「な、なんですかあれは?」
「ムナカタの店だそうだ。」
そこには『ムナカタ工房』と看板が掲げられた建物があった。
「あんたら、ムナカタさんに用事かい?」
店の前で呆然としている俺達を不審に思ったのか街の老人が話しかけてくる。
「え、ええ。」
「そうかい。じゃが、残念じゃったな。今ムナカタさんは用事があるとかで工房を空けているのじゃ。」
「そうなんですか。ところで、このムナカタさんとはどのような人ですか。」
「ムナカタさんは昔からここで鍛冶屋をしておる人じゃ。わしが子供のときにはあったのう。ムナカタさんは、それはそれは良くしてくれている。」
「具体的に教えていただけませんか。」
「最近じゃと、貧乏なワシらにもトウキ製品と同じような日用品を作ってくれたのう。」
アーネストといい、ムナカタといい、魔王の関係者は人間界に馴染み過ぎなんじゃないか。
それに、このおじいちゃんのムナカタを慕う顔を見ると、復讐し辛いじゃないか。
なるほど、フランクさんが見せたかったのはこういう事か。
「色々教えていただきありがとうございました。」
「いやいや。いいのじゃよ。」
俺たちはムナカタの工房をあとにした。
「はて、そういえばムナカタさんはいくつなのじゃろうか。」
―――――――
「どうするよエリカ。」
「そうよねぇ…。ちょっとさすがの私もねぇ…。」
帰りの馬車で俺たちは今後について話していた。
あの後、街でムナカタについて聞いて回った。
「ムナカタさんはいつもタダで農具を修理してくれるんですよ。」
「モンスターが出たときもムナカタさんが倒してくれるので助かってます。」
「あの人は、飢饉のときはどこからともなく食べ物を買ってきて分けてくれたこともあったのう。」
「あのね。ムナっちはね。いっつもね。わたしたちとあそんでくれるの!」
「そういえば、ムナカタさん。ルクレス杯で優勝してこの国の貧しい人たちのためのお願いをするっていっていたなぁ。」
俺達なんかよりよっぽど善人じゃないか!




