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聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
第5章 エクストラ編
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犬と猿だって手を結ぶ

「それで、何の用事が有って来たんだ?」

 爆発寸前のホルストを何とかなだめて、トウキが尋ねる。

「大変残念で、このような切迫した状況でなければ、絶対に嫌なのだが。」

「ずいぶんな言い草だな。」

「お前に私の武器を作ってほしくてな。」

「はい?」

「悔しいが鍛冶師としての腕前はお前の方が上だ。そこで頼みに来たのだ。」

「なんでまた武器が必要なんだよ。」

「あの男を始末するためだ。」

「あの男ってまさか…。」

「その通り、ルクレス杯に現れたマントの男だ!あいつだけは絶対に許さん!」

 ホルストの目は復讐の炎に燃えているかの如く鋭く輝いていた。


「ホルスト。」

「なんだ。」

「俺は今、初めてお前と意見が一致したと思う。」

「どういうことだ。」

「俺達夫婦もあの謎の男を始末すべく動いているんだ。野郎には必ず落とし前をつけてもらう。」

「トウキよ。」

 そういうとホルストは右手を差し出す。

 俺はその手をがっちりと握り返す。


「おお!あの2人が仲良くしてるぞ!」

 ルクレスが驚きの声を上げる。

「ホントに良かったわ。」

 エリカは涙を流している。


「ホルスト。必ずお前に最高の武器を作ってやる。」

「トウキよ。討伐までの費用は気にするな。シュミット家がすべて面倒を見てやる。」

「私も協力するぞ!」

「ひ、姫様!二度も助けていただくわけにはいきません!」

「私が協力したいのだ。ダメか?」

 ルクレスの上目遣いが発動!

 ホルストには効果抜群だ!

「ダメではありません!共に倒しましょう!」


「それでは私と姫様は一度王都に戻り、王都での情報収集に努めるとしよう。王都の牢にはアイツが居ることであるしな。」

「ああ、そういえばそうだったな。」

「うむ。ホルスト殿の言うように、謎の男は魔王と関係があるのだろう。奴に問うのが一番であろう。」

「じゃあ、そっちは任せるよ。」


 俺は2人を見送る。

 そういえば、さっきからエリカが静かだが、何をしているのか。

「おーい、エリカ。」

 呼びかけても返事がない。

「エリカ、何をしているんだ?」

 エリカは黙々と紙に何かを書いていた。

「ああ、トウキごめんなさい。夢中になっちゃって。」

「それなんだ?」

「これ?これはシュミット家に送る請求書よ。」

 ニッコリとエリカが応える。


 ああ、俺とホルストの握手で涙してたのはそういう事なのね。

 こいつ、本当にたくましくなったな。

 まあ、俺にはこれくらいの奥さんがちょうどいいな。

 そう思いながら俺はホルストの武器作成に取り掛かる。


 ―――――――


 俺とエリカがそれぞれ作業をしていると、工房の扉を開ける音がした。

 はて、誰だろう。

 お客なわけはないだろうし。


「どちら様ですか。」

 エリカが対応する。

「エリカさん、俺っす。アベルっす。」

「あら、アベル君。どうしたの。」

「いえ、その、トウキさんいますか。」

「ええ、居るわよ。上がって待ってて。」

「ありがとうございます。」


「アベル、今日はどうしたんだい?」

 なにやら緊張した面持ちのアベルに尋ねる。

「あ、あの、その。」

 普段はハキハキしているアベルが妙にしおらしい。

「最近工房の前をうろちょろしてたのと関係あるのか?」

「げっ、ばれてたっすか。」

「いや、バレバレだったよ。」


「トウキさん!」

 突然俺の手を掴んでくる。

「は、はい!」

 え、なに?まさか愛の告白!?

「今回の謎の男討伐、俺も入れてください!そして、活躍したら俺のお願いを聞いて下さい!」

「ま、待て!俺にはエリカが居るんだ!」

「なんでエリカさんが関係あるんっすか!ってかなんでエリカさんも顔を赤らめてるんっすか!」

「い、いや。その、こういう世界があるってのは友達の女の子から聞いていたけど、いざ目にすると…。」

「なに変な勘違いしてるんすか!別にトウキさんに興味はないですよ!ただ、作ってもらいたいものがあるだけです!」

「なーんだ。」

 そういうとエリカは請求書作成に戻って行った。 


「それぐらいでSランク冒険者が雇えるならお安い御用さ。それで、何が欲しいんだ?」

「それは…。またその時に言います…。」

「俺は別にかまわないが。」


 腑に落ちないところもあるが、ともかく討伐隊が結成されたことを今は喜ぶとしよう。



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