金はないが人脈はある
俺とエリカは王城を出ると、聞き込みをしたが、男が東方に飛び去った以降のことは誰も知らなかった。
このまま王都に居ても収穫は無いと考え、俺達は一旦ワーガルに帰ることにした。
「こんにちは。」
「あらトウキ君にエリカちゃん、こんにちは。」
ワーガルに着くとそのまま俺達はギルドを訪れていた。
「な、なんだか2人とも気合十分って感じね。」
「ええ、私たち新しい目標を見つけたので。」
「新しい目標?」
「はい。武闘大会で暴れた男が居ましたよね。」
「え、ええ。エリカちゃん、目が怖いわ…。」
「あいつを俺達夫婦で始末することにしました。」
「ト、トウキ君が自ら進んで荒事を!」
「そこでなんですが、依頼があります。」
先日の日用品で荒稼ぎしておいてよかった。
「なにかしら?」
「今後ギルドで謎の男に関する情報が入ったら教えてもらえませんか。」
「そうねぇ…。ちょっと待ってて。」
そういうと、リセさんはフランクさんの下に行く。
2,3言葉を交わすとリセさんは戻ってきた。
「あの人がワーガルのすべてのクエストに副目的として謎の男の調査を付け加えてくれるそうよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「いいのよエリカちゃん。今まで私たちは2人に助けられてきたんだから。これくらいはね。それに、あくまで情報があったらってだけで、お役に立てるか分からないわ。…ってちょっと、2人とも泣かないでよ!」
俺たち夫婦は人の温かさに触れて号泣した。
こんな涙を流すのは初めてなんじゃないか。
俺達にもまだ人の心が残っていたのか…。
「それではお願いします。」
俺達はリセさんに挨拶をしてギルドをあとにした。
ギルドを去るトウキ達の後姿を見ながら、ギルド夫婦が話す。
「まさか、あのトウキがこんなことになるとはな。」
「そうですね。」
「安心しろ。あの2人ならなんとかなるさ。」
「ええ。わかっていますよ。」
「では、俺は少し依頼に行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
そういってフランクは掲示板から王国東部の依頼を取って行った。
―――――――
「おお!遅かったなトウキ殿、エリカ殿。」
「なんで俺達より早くルクレスが工房に居るんだよ。」
「いや、2人を追い掛けねばと思って飛ばして来たらな。2人こそどこにいたのだ。」
「ギルドで情報を集めていたんだ。」
「ふむ。なるほどな。ところで、2人はあの謎の男を倒すのだな。」
「ええ、そうよルクレス。私とトウキでアイツの○○○を引っこ抜いて、鉢植えに植えてやるわ。」
俺の股間がまた委縮する。
「エ、エリカ殿!女性がそのようなことを言ってはいけない!」
姫様は茹で上がったかのように真っ赤である。
「おっほん。実は2人に朗報があるのじゃ。」
「朗報?」
「うむ。父上に掛け合ってな。謎の男の討伐で功績を上げれば、エルス家を免税としてくれるように頼んだのだ。」
「「ルクレス様!一生付いて行きます!愛してる!」」
「ちょ、ちょっと!や、やめるのだ!」
俺とエリカはルクレスに飛びつく。
嫌がりつつも嬉しそうなルクレスであった。
「姫様になんということを!トウキ!貴様もあの男と一緒に成敗してくれる!」
なんだか今日はいろんな人と絡むなぁ。
工房への新たな乱入者を見てトウキはふとそう思う。




