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聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
第4章 小話編
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最強?の鍛冶師

「ねえトウキ。」

「ん?」

「これ、どうするのよ。」

「どうするかなぁ。」

「さすがに王家に報告しないとヤバくない?」

「だよなぁ。」

「あんたホントどうなってるのよ。」

「やりすぎだよなぁこれ。」


 朝日が昇る時間帯、俺たち夫婦はある制作物を目の前にして頭を抱えていた。

 聖剣を作成したことによって鍛冶の腕前はとうとうランク30という前人未到の領域に達していた。

 昨晩エリカと2人で晩酌をしているとき、つい悪ノリで、「今の腕前で素材にこだわってガチの日用品作ったらどうなるんだろね。」なんて会話をしたのが間違いだった。

 そこからはもう、深夜のテンションに酒も入って、手許にある高級素材を手当たり次第に試しては鑑定し、試しては鑑定し、「なによこれー!」などと言ってはしゃいでいた。

 そして夜明け頃、ミスリルとオリハルコンの合金に聖剣で余った宝石を使って作成した、1つの物品の鑑定結果に俺たちは正気に戻った。


【英雄殺しのフライ返し】

攻撃力 1000

防御力 1000

重量削減(極大)

耐久性(永久)

裏返し(完璧)

黄身保持(完璧)

対英雄(確殺)


「とりあえず、使ってみなよ。」

「そうね。ちょうど朝食の時間だし。」

 エリカが台所に移動する。

「すごいわ。目玉焼きの黄身が潰れることなく、お皿に盛りつけられたわ。」

「わー、これでいつでも半熟が食べられるね。」

「見て、パンケーキもくっつかないわ。」

「おー、主婦必見だね。」

「……。」

「……。」

「ねえ、触れなさいよ。」

「なにに。」

「一番最後の能力に決まってるでしょ。」

「エリカ。」

「ん?」

「これはなかったことにしよう。」

「それがいいわ。」

「食事が終わったら溶かしてしまおう。」

 エリカがフライ返しを台所に置いて食事を運んでくる。


 攻撃力1000や防御力1000など、もはやいつものことである。

 その他の能力も問題ない。

 だが、対英雄(確殺)ってなんだよ。

 そんなもん持ってたら国家反逆もいいところじゃねえか。

 ルクレスを殺すなんて俺にはできません。そもそも殺す理由もないし。


「ふむ。これがトウキ殿の新しい日用品か。」


 突然声がする。

 恐る恐るそちらを見ると、何食わぬ顔で台所に居るルクレスがいた。

 その手にはフライ返しが握られている。

 ああ、そういえば聖剣を持っていると足音聞こえなくなる副次効果があるんだった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!ルクレス!今すぐそいつをこっちに渡すんだ!」

「そうよ!早くトウキに渡して!お願い早く!」

「何をそんなに慌てているのだ。」

「いや、ホントそれマジでヤバいから!そうだ、ルクレスの欲しいものなら何でも作ってやるから。だから返して!」

「おお!本当か!何にしようか。」

 そう言いながらルクレスはフライ返しをクルクルと回している。


 俺の作った日用品は攻撃の意思を持って使用しない限りあのトンデモない攻撃力は発揮されない。

 普段使いならなんの問題もない。

 だが、能力は違う。

 あれは基本的に常時効力を発生させている。

 フライ返しの柄の部分以外が体に当たればどうなるか分からない。


「まずはそれをこっちに渡してくれ!」

「むう。そこまで言うのなら返そう。」

 ルクレスが俺にフライ返しを手渡そうとする。


「「あっ。」」


 受け取ろうと伸ばした俺の手とルクレスの手が当たってしまい、フライ返しが落ちる。 

 フライ返しは一直線にルクレスの足の甲を目がけて落ちていく。

 ああ、ルクレス。すまない。

 先にあの世で待っていてくれ。処刑されたらすぐそっちに行って土下座でもなんでもして謝罪するから。


「とりゃぁぁぁぁぁ!セ、セーフ!」

 間一髪、エリカがルクレスの足に抱き着くようにヘッドスライディングをして、背中でフライ返しを受け止めた。

「よくやったエリカ!」

 俺は急いでフライ返しを掴むと、そのまま工房に持って行ってとっとと溶かした。


 俺たち夫婦はしばらく禁酒することにした。


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