姫様の悩み
魔王を打倒してから数週間が経過した頃、俺とエリカ、それにお義父さんは王城に呼ばれていた。
「此度の魔王打倒に際して、多額の寄付を行ったサスカ、聖剣を作成したトウキ、娘と共に戦ったエリカ、エルス家の功績は多大である。よって、男爵から一気に伯爵へと取り立てることとした。これからも王国の発展に寄与することを願う。」
「承知いたしました。謹んで伯爵位を賜ります。」
お義父さんは深々と頭を下げる。
俺とエリカもそれに続く。
「なあ。」
「ん?」
「伯爵になったからってなにか変わるのか。」
「うーん。そりゃ偉くなったから、権力振りかざすことはできるんじゃない。まあ、うちのお父さんがそんなことするとは思えないけど。」
「だよなあ。エリカたちは権力よりも商売だもんな。」
「うん、うん。」
俺とエリカは王城を歩きながら談笑していた。
「ト、トウキ殿、エリカ殿、助けてくれ!」
後ろから聞きなれた声がする。
「おお、ルクレスじゃないか、久しぶり。」
聖剣が完成したため、監視兼護衛をしていたルクレスは王城へ帰っていた。
そのため、会うのも久しぶりである。
「ああ、久しぶりだな。…って、ゆっくりしている場合ではないのだ!」
「どうしたんだ?」
「頼む!私をメイドたちから匿ってくれ!ともかく頼んだ!」
そういうとルクレスは走り去って行った。
しばらくすると、ルクレスを追ってメイドたちがやって来る。
「これはこれは、トウキ様にエリカ様。」
「やあ。急いでるみたいだけどどうしたんだい?」
「実はルクレス様を探しておりまして。」
「ほう。またどうして。」
「はい。ルクレス様は先日の活躍から国民の皆様から大変慕われるようになりました。そのため、今後は政治に関与しないのは従来通りですが、表舞台には出ていただこうかと思いまして。」
そういうと、メイドの1人が前に出てくる。
その手には、とても綺麗なドレスが握られていた。
フリフリだらけの。
「わあ!綺麗なドレスですね!ルクレスにすごく似合いそう。」
「エリカ様もそう思いますよね!けど、ルクレス様は嫌がって、逃げてしまうのです。」
「えー、もったいない。じゃあ、もしルクレスに会ったらドレスを着るように言っておきますね。」
「すみませんエリカ様、よろしくお願いします。」
そういってメイドたちはルクレス探しを再開した。
「匿い方うまいな。」
「そりゃ、商人ですから。口で負けてられないわよ。」
―――――――
このままではメイドたちに捕まってしまう。
ともかくどこかに隠れよう。
あそこの部屋にしよう。
私は目についた部屋に飛び込む。
「ハア…ハア…。」
とりあえず安心…じゃなかった。
目の前には奴がいた。
「ひ、姫様!ああ!ついに姫様から私を訪ねてくれるなんて!しかもそんなに興奮なさって!」
「いや!これは違うぞ!ただ息切れをしているだけだ!それにここに来たのは偶々だ!」
「照れ隠しですね!」
「ええい!すまぬ!」
「うぎゃ。」
ルクレスはホルストを気絶させると部屋に籠った。
幸い、メイドたちもまさかルクレスがホルストの部屋に行くとは思っていなかったので、逃げ切ることができた。




