お前っていい奴だったんだな
魔王が復活してからすでに数か月が経っていた。
生きる伝説ことSランク冒険者のアーネストが魔王の部下であり、彼が魔王を復活させたと知ったときは動揺していた王国の人々であったが、送り込まれるモンスターを次から次に撃退しているうちに落ち着きを取り戻していた。
「さてと、そろそろ本番に行きますかな。」
俺の鍛冶のランクは26にまで成長していた。
先日にアベルに渡した武器を見る限り、4種類の宝石を素材とすれば聖剣を復活させられるのではないかと考えていた。
「さすがに緊張するなぁ。というか、この宝石扱ったことないから大丈夫かなぁ…。」
いざとなるとやはり弱気にもなる。
「トウキ殿なら大丈夫であろう。」
腕を磨く一環でアップグレードをした雷虎を受け取りに来ていたルクレスが励ましてくれる。
そんな時だった。
「トウキはいるか。」
「はい。ってホルストか。」
その声に反応してルクレスは工房の2階へ逃走した。
「今のは姫様か!貴様、姫様を連れ込んで何をしていたのだ!」
「いやいや、武器を強化しただけだよ。」
「ならよいが。」
「それで、今日はどうしたんだ?」
「ふむ。実はな。」
「実は?」
「大変遺憾であり、このような緊急事態でもなければ死んでも嫌なのだがな。」
「どんだけだよ。」
「お前の聖剣作りを支援してやろうと思ってな。」
「ほう。」
「なんだその反応は。もっと泣いて喜んだらどうなのだ。」
「いや、何を手伝ってくれるかわからないのにそこまでできるかよ。」
「なるほど。それももっともだ。見よこれを!」
「こ、これは!…なんだ?」
ホルストは古い巻紙を取り出した。
「なんだではない!これは聖剣の作り方が書かれた古文書だ!」
「ホルスト様!ありがとうございます!靴を舐めればいいんですね!」
「やめんか!気持ち悪い!」
「けどなんでそんな物を持っているんだ。」
「なっ!貴様、我がシュミット家こそ聖剣を作り出した家だと知らなかったのか!」
「本当に申し訳ありません。なんと謝罪して良いのかわかりません。」
「なぜ急に土下座するのだ。ともかく、聖剣作りに失敗されても困る。これは1つ貸しにしてやるから、さっさと聖剣を作るがいい。」
そういうと巻紙を置いてホルストは去って行った。
ホルストの先祖に呪われても文句言えないな…。
―――――――
ふう。
聖剣を作り出したシュミット家の人間が聖剣を復活させることができないなど先祖になんと言えばいいのか。
己の無力が恥ずかしい。
俺はトウキに聖剣の設計図を渡すと足早に馬車乗り場へと向かっていた。
「ホルスト殿!」
突然後ろから姫様の声がする。
「どうなさいまし…な、何をしておられるのですか!」
そこにはビキニアーマーを着た姫様が、顔を耳まで赤くして恥ずかしそうにモジモジしながら立っていた。
ちょっと破壊力増しすぎではないですかね。
「ホ、ホルスト殿との約束をまだ果たしていなかったからな。王族として臣下との約束を破る訳にはいかぬ!」
恥ずかしさのあまり後半は大声であった。
「グッドです姫様!」
「な!どうしたのだホルスト殿!ちょっ!」
ここから先はよく覚えていないのだが、気が付くと王都に帰っていた。
顔面が腫れ上がっていてしばらく仕事ができなかった。
王城の女性たちが私を見る目がいささか冷たい気がする。
―――――――
「おお、ルクレスお帰り。」
「……。」
「どうしたんだ?」
「トウキ殿。」
「ん?」
「ホルスト殿にふとももをスリスリされた。」




