欲には勝てない
トウキがエクスカリバーを拾ってから3日が経った。
あのあと私は「今すぐ王都に知らせた方がいい。」と言ったのだけど、トウキは「王国の法律では拾ったんだから俺の物だ!」と言って聞かなかった。
結局、勇者の物を持っていることがバレたらどうなるかわからないから、返還することになったが、せめて3日待ってほしいというトウキに負けて今日まで待っていた。
あの日から、「世話をしに来なくていい。」とトウキは言って工房に籠っている。
一度様子を見ようと工房の扉を開けたら鬼のように怒られた。
納期が来たものは、工房の前に置かれていて仕事はちゃんとしているようだけど…。
ともかく、約束の日が来たので私は王都へ勇者ゆかりの物が見つかったと速達で連絡してから工房へと足を運んだ。
「トウキ、入るわよ。」
私は工房の扉を開ける。
「うっわ、なにこれ。」
工房の中はゴミだらけであった。
おそらく、2階の居住スペースに行かず、工房でこの3日を過ごしたのだろう。
こうなるから、私が世話をしていたというのに…。
「こらトウキ、約束の日よ。」
そういって工房の奥へと足を踏み入れる。
「あ、ああ…、エリカか…。」
そこには目の下に大きなくまを作って、よれよれの服を着たみすぼらしい男が居た。
「ち、ちょっとトウキ!大丈夫なの!」
「ああ、3日寝てなくて、ご飯もあまり食べてないんだ。それよりもすまないエリカ…、俺にはダメだった…。」
「なにがよ?」
「なあ…、俺と一緒に死んでくれるか?」
「は?へ?」
急に何を言い出すのこいつは?
なんでこんなムードもなにもない状況でプロポーズしてくるの?
いやトウキらしいけど…。
私にだって心の準備ってものがあるのよ!
ま、まあ…、別に嫌なわけじゃないけど…。
「う、うん。わかった。私でいいの?」
「お前以外いないだろう…。」
「トウキ…。」
全くほんとこいつは私が居ないとダメね。
私が一人感動していると、トウキがおもむろに一点を指差した。
私がそっちを見ると、エクスカリバーが置いてあった。
ただ、なんだろう。前に見たような輝きが感じられない。
「こ、これがどうしたの?」
「鑑定してくれないか?」
私は恐る恐る鑑定する。
【聖剣エクスカリバー】
攻撃力 1000
「は?」
おかしい、この前見たときはもっとすごい能力をしていたはずだ。
「ちょっとトウキこれはどういうこと?」
するとトウキは地面に手を突き、頭を地に着けた。
そう土下座の格好である。
「すいませんでした!最初は表面を見てただけだったんだけど、だんだん柄を外したり、知的好奇心に勝てずに解体したり溶かして作り直したりしてました!そしたら輝きを失っちゃって…。」
「はああああああああああ!!!!!!!!!」
村中に私の叫び声が響き渡る。
村人は「また道具屋の夫婦喧嘩がはじまったわい。今日は一段と大きいのう。」と思っていたが、当事者はそれどころではなかった。
「あんたどうすんのよ!もう私、王都に連絡しちゃったわよ!」
「いやだから一緒に死んでくれと…。」
「あれはホントの意味だったのね!サイテイ!」
「しかたないだろう!目の前にあんなものあったら研究したくなるさ!」
「なに自慢げに言っているのよ!」
「けど大丈夫だ。俺に考えがある。」
「なによぉ?」
私は半泣きでトウキに尋ねる。
「それはな………。」