約束を果たしに
俺たちは王城に来ていた。
宝石を各種集めたことを報告するためである。
「トウキよ。よくぞ宝石を集めたな。」
「はっ。」
まあ、ほとんどおたくの娘さんが集めたんですけどね。
「して、聖剣を完成させることはできそうか。」
「それはわかりません。ためしに作って失敗しましたではすまないので、しばらくは他の物を作って実力をつけようかと思っております。」
「ふむ。なるほどな。では、引き続き聖剣の復活に尽力するように。」
「はっ。」
「ところで、その重そうなものが入った袋はなんじゃ?」
「姫様の装備でございます。」
「そうか。」
国王との面会を終えた俺は、もう1つの用事を済ませるべく、宮廷鍛冶師の仕事場にルクレスを連れて向かっていた。
「な、なあトウキ殿。やめないか。ほら、せっかく宝石も集まったんだ。こんなことをする暇があるなら腕を磨こう。」
「いやいや、これは貴族同士の大事な約束ですから。」
「だ、だがなあ!」
「おお!姫様!」
これでもかというタイミングで、ホルストに見つかる。
ルクレスはこの世の終わりのような顔をしていた。
「なんだ、トウキもいたのか。」
「おい、そんなこと言っていいのか?」
「どういうことだ。」
「今日はあの約束を果たしに来たんだぞ。」
「!!!!!!!!」
ホルストは充血するほどに両目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待っていろ!今すぐ部屋を用意する!」
ホルストは駆け出して行った。
「くっ。ええい!こうなったら覚悟を決めるぞ!」
ホルストを待っている間にルクレスが気合を入れる。
さすが、こういう時は腹を括るのが早い。
「ひ、姫様!」
突然ホルストとは違う方向から声が聞こえた。
城の衛兵がルクレスを探していたようだ。
「どうしたのだ。」
「た、大変です!魔王が復活したとのことです!国王の下へお戻りください!」
「「な、なんだって!」」
俺とルクレスは駆け出して行った。
―――――――
くふふふ。
ついに、ついに愛しの姫様のビキニ姿を見ることができる。
ホルスト・シュミット、この日ほど宮廷に仕えていて良かったと思うことはない。
トウキとやらも見直してやらねばならぬな。
ともかく、早く姫様の下に戻らねば!
俺は部屋を用意するとすばやく駆け出した。
「ひめさ…ま…。」
おかしい。
先ほどまでいた姫様が消えている。
どこへ行かれたのか。
「おい、そこの衛兵!姫様はどちらだ!」
俺は妙に慌ただしくしている衛兵に声を掛ける。
「ああ、ホルスト様。姫様ならワーガルへとお戻りになりましたよ。」
「なんだと!どういうことだ!」
「わっ!は、離してください!ぐるじい!」
「す、すまぬ。」
「魔王が復活したんですよ。それで今すぐにでも聖剣が必要だとかでトウキ様の護衛で姫様もワーガルに…ってホルスト様!」
その日王城では「魔王許すまじ!!!」と叫んで走り回るホルストの姿を見たという報告が相次いだ。
王城の者はみな「さすが筆頭宮廷鍛冶師だ。魔王が出てもおびえるどころか闘争心むき出しだ。」と勇気をもらったという。
第3章は短いです。




