英雄さまさま
結局ギルドによる探索が空振りに終わった俺は、実際に自分の目で探してみることにした。
「うわ。見事に何もないなぁ。」
伝承上、シャイアの街があるとされる場所は、右を見ても左を見ても砂、砂、砂、であった。
いままでの聖剣復活計画においても、シャイアの街にあるとされる、グリーンダイヤモンドがネックとされていた。
「ふむ。これは俺1人ではどうしようもないな。」
「そこで私の出番なのだなトウキ殿!」
「ああ、そうだ。」
俺はルクレスを連れて来ていた。
エリカには「髪は汚れるし、暑いし、私が行かないといけない理由もないからパス。」といって断られた。
ジョゼとフランクさんは相変わらずの忙しさであった。
「じゃあ、早速さがしますか。」
「ああ、そうしよう。」
ルクレスは張り切っている。
最近は活躍の場が増えているのと、単純に冒険が好きなのだろう。
―――――――
すでにシャイアの街を探し始めて、3日が過ぎていた。
なんの手がかりもなく、むなしく時間だけが過ぎていく。
途中何回もモンスターに出会ったが、姫様の敵ではなかった。
「はあ…。どうするかなぁ…。一旦帰るか。」
俺はルクレスに提案する。
「ふむ。私はまだまだ元気だが、トウキ殿の体力もあるしな。」
「すまないな。とりあえず、これが終わったらもう一度王都で調べてみるとするよ。」
「それがいいだろう。」
俺たちはワーガルに戻るべく歩き始めた。
「ところでトウキ殿。」
「ん?なんだ?」
「この3日間、ずっと気になっていたのだが、あの街は尋ねてみないのか?」
そういってルクレスは砂漠の一点を指差す。
指し示す先にはただ、砂が一面にあるだけだった。
「ああ、ルクレス。暑さでおかしくなってしまったんだね…。」
「なにを言うか!私は耄碌などしていない!トウキ殿こそあれが見えないのか!」
ルクレスは再度指し示すが、やはり何も見えない。
「なあ、ルクレスには街が見えているのか?」
「そうだ。」
「ちょっとそこに行ってもらえるか?」
「いいだろう。私だって耄碌したと思われたままではいられないからな!」
ルクレスはずんずんと進んでいく。
「ここだ!」
やはり何もない。
「おーい!グリーンダイヤモンドはありそうか!」
「ちょっと待ってくれ!」
遠くから見ると若い女性が何もない砂漠で奇妙な踊りを踊っているようにしか見えない。
ルクレス的には崩れた建物を避けているそうであるが…。
「あった。」
「なんですと!!!!」
ルクレスは俺の下に駆けてくる。
その手には、緑色に輝くダイヤモンドが握られていた。
「なるほどなぁ。」
「ん?なにがだ?」
「多分、シャイアの街は英雄の職業の人間にしか見えないようになっているんだろうな。」
「ふむふむ。」
「もっと早く教えて欲しかったよ…。」
「いや、トウキ殿にも見えていて、あえてスルーしているのかと…。」
「まあ、ともかくこれで揃ったな。」
俺たちは、再びワーガルへの途を歩み出した。
これで一旦の区切りです。




