ワーガルの冒険者ギルド
お騒がせしました。
ワーガルに帰ってきた俺は今後をどうするか悩んでいた。
ためしに必要な宝石を市場で探してみたが、全く流通していなかった。
そのため聖剣を作成するにはダンジョンを攻略する必要がある。
とはいえ、俺は戦闘系のスキルを持っていないし、日頃から戦闘をしているわけではないので、いくら強い武器を作ろうとも、単独でのダンジョンの攻略は厳しかった。
そんな折に朗報が舞込んできた。
ワーガルの街にも冒険者ギルドができるというのだ。
なんでも、最近有名なワーガルの街に是非とも設置させてほしいとギルド側から要請してきたそうだ。
冒険者は各都市の冒険者ギルドに所属して活動することになっている。
それゆえ、拠点としている街から大規模な移動を伴うような依頼を受けてくれる冒険者は少ない。
また、当該ギルドに所属している冒険者では到底解決できない依頼は鼻から拒否されたりする。
そうなると全国手配というベラボウに高い費用と報酬を掛けるしかない。
俺自身の収入は安定はしていても、そこまでのお金を出せるほどでもない。
俺はルクレスに頭を下げて、全国手配の費用を出してもらおうと考えていた矢先の出来事であった。
ワーガルの冒険者ギルドに誰が来るかはわからないが、引き受けてくれそうな人がいれば儲けものくらいの気持ちで、ギルドが設置されるのを待つことにした。
『ワーガルの街に冒険者ギルド開設!ギルド長にはフランク氏が就任!』
「ワーガルの街に開設予定であるギルドがいよいよ明日から始動を開始する。
ワーガルの街のギルドに誰が所属することになるのか注目が集まる中、冒険者の街ビスタにあるギルド本部がついに陣容を明らかにした。
初代ギルド長にはワーガルの街の騎士団長でAランク認定を受けているフランク氏が就任すると発表された。
実力と経験を鑑みての起用であるという。
騎士団長は部下に任せて、ギルド長の仕事をメインにするとのことである。
さらに目玉冒険者として、現在もっともSランクに近いとされている『紫電』ことジョゼ氏が所属することとなった。
本人たっての希望であるとのこと。」
「よ、よっしゃぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
俺は新聞の内容を見て狂喜した。
Aクラスの冒険者が2人、それも知り合いが所属するのである。
何とか聖剣作成の目途が立ちそうであった。
翌日、俺は早速新設されたワーガルの冒険者ギルドへと足を運んだ。
「いらっしゃいませ。」
聞いたことのある声がする。
「リ、リセさん!何しているんですか!」
「ふふ。夫がギルド長になったので、私は受付をしています。」
リセさんはそういうとニコリと笑った。
あの変な性癖さえ知らなければ完璧であった。
いや、原因の一端は俺にあるのだけど…。
「それでどうしましたか?」
「早速依頼をしたいと思いまして。」
「なるほど。どういった依頼ですか。」
「ピナクル山にあるオレンジサファイアを取ってもらいたいのです。」
ピナクル山は王国北部に位置する山で、ワーガルの街から一番近い聖剣の対象ダンジョンである。
「わかりました、少しお待ちくださいね。」
そういうとリセさんは分厚い本を取り出して調べものを始める。
「なんですそれ?」
「これは、ダンジョンの難易度や採取物のレア度、討伐依頼なら対象モンスターの強さなどが記載されているの。これらの組み合わせによって推奨依頼料が算定できるの。依頼者はそれを参考にして依頼料を決めるの。」
「なるほど。」
そういうと、リセさんは再びペラペラと本をめくる。
「え、えっと…。トウキ君。」
「はい。推奨料金でましたか?」
「出たのだけど…。まず、オレンジサファイアの採取難易度がS、ピナクル山でオレンジサファイアの存在する場所は山頂なので、Bランクの5人以上パーティー推奨となっているわ。これだとワーガルのギルドでは、うちの夫とジョゼちゃんのコンビしかないわ。そうなると、推奨料金は5000万Eにもなっちゃうわ…。」
「5000万E!」
俺は料金の高さにびっくりする。
とはいえ、向こうも命がけである。
それに全国手配にくらべたらなんのことはない。
「わかりました。5000万Eでお願いします。」
「え、ええ。わかったわ。といっても、まだ夫もジョゼちゃんも来てないのよ。」
「そうなんですか?」
「夫は騎士団の離任式でね。ジョゼちゃんはワーガルに向けて移動中よ。」
「なるほど。」
「2人が来たら工房に呼びに行くわ。そこで交渉して頂戴。そもそも2人が引き受けてくれるか分からないし。まあ、うちの夫は常にトウキ君に感謝しているから、大丈夫だと思うけど。今使ってるトングなんて…掴む姿がかっこよくて…。」
「あ、ああ!リセさん、ちょっと用事があるので。では、失礼しますね。」
リセワールドが展開されそうであったので撤退することにした。
―――――――
トウキが去ってから2時間が経過したころ、ギルドにフランクがやってきた。
「あら、お帰りなさい。あなた。」
「ああ。」
「離任式はどうでした?」
「部下が泣きながらなかなか離してくれなくてな。困ったものだよ。」
そういうフランクの顔は誇らしげであった。
丁度そのとき、ギルドの扉が開く音がした。
「いらっしゃい。」
「は、はい!え、えと!ジョゼと言います!よろしくお願いします!」
緊張からか大声で挨拶をする。
「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね。私は受付のリセです。」
「俺はギルド長のフランクだ、よろしく。」
ジョゼはフランクを見る。
そして開口一番。
「ヤカンのおじさんだ!!!」
―――――――
2時間ほどしてリセさんが工房に呼びに来てくれた。
俺はさっそく依頼の説明をする。
「ふむ。トウキはすごい鍛冶師だとは思っていたが、聖剣の作成を任されていたのか。」
「私のレイピアよりも強い武器を制作しようとしているなんて…。」
「い、いやー。そうかなあ。」
2人の純粋にすごい人を見る視線が心に突き刺さる。
そんな目で見ないで!
「お世話になったトウキのためだ。もちろん行かせてもらおう。」
「わ、私も当然行きます。」
2人は予想通り快諾してくれた。
「ありがとうございます!」
俺は頭を下げる。
「今の話聞かせてもらったぞ!」
突然女性の声がギルドに響き渡る。
「水臭いではないかトウキ殿!私も行くぞ!」
声の方を見ると、ギルドの窓の外にルクレスがいた。
そしてそのままギルドの窓からルクレスが入ってきた。
おい、王族がそんなことしていいのか。
「今の話聞かせてもらったぞ!」
「いや、それはもう聞いたよ。」
「うむそうか。なに、私には報酬はいらない。」
ルクレスは1人で話を進める。
「えっと、この人は…?」
ジョゼが聞いてくる。
「ああ、聖剣作成のために王国政府から派遣されてる役人のルクレスだよ。」
「ルクレスだ。そなたが高名なジョゼ殿か。」
そういうとルクレスは手を差し出す。
「は、はい!」
2人は握手を交わす。
ルクレスから自然と溢れるオーラに当てられたのか、ジョゼは緊張しているようであった。
「え、えっと。ルクレスちゃんは外部協力者ということでいいのかしら?」
リセさんが話を収集しにくる。
「そういうことだ。リセ殿、よろしくお願いする。」
「ちょっとまってくれ。」
フランクさんが止める。
「俺はルクレスの力量をしらない。正直この依頼はかなりの高難易度だ。ルクレスの力量を知りたい。」
「ふむ。フランク殿の言うことももっともである。」
「そこで、俺と一戦交えてもらえないか?」
「そうだなそれがいいだろう。」
そういうと示し合わせたかのように2人は外へと出て行った。




