ある奥様の悩み その②
「トウキ!今すぐフランクさんに専用の武器作ってあげて!それも飛び切りすごいやつ!」
帰って来るなりエリカは捲くし立てる。
エリカの様子からはとてつもない緊急性を感じる。
「い、一体どうしたんだよ?」
俺が尋ねるとエリカはリセさんと話した内容を教えてくれた。
「エリカ!今すぐ金を用意してくれ!素材を買いに行ってくる!あと、おやじさんにしばらく作業できないって伝えてくれ!」
「わかったわ!必ずお父さんは説得するから、トウキもお願いね!」
俺の人生でここまで制作意欲が湧いた作品があるだろうか。
もはや脅迫観念に近い。
既に体中汗だくであるが気にしてはいけない。
俺は一心不乱に作業に取り掛かった。
そりゃ、そうだ。
俺だってエリカが日用品で全身コーデしてデートに誘ってきたらグーで殴る。
ともかく最高のロングソード系の武器を作らないと!
「できた…!」
俺は完成品をエリカに見せる。
「鑑定するわね。」
【ミスリルのバスタードソード】
攻撃力2000
全ステータス強化(小)
状態異常耐性(特大)
切れ味保持(極大)
速度上昇(大)
重量削減(中)
「す、すごいわ。トウキ!」
「ああ、ランク22の力を惜しげもなく使ったからな。あとはリセさんに命名してもらおう。」
「そうね。それがいいわね。」
これが聖剣でもよくね?ってくらいの物を仕上げた俺たちは早速リセさんの待つ宿屋へと向かった。
「うーん、気持ちは嬉しいけど。却下ね。」
「なっ!なんでですか!」
俺は思わず声を出す。
「だって、これ普通の武器でしょ?」
そう言ったあと、リセさんの目が変わった。
あ、これヤバい奴の目だ。
「ヤカンを持った彼を見たときから、私、皆と違う武器を振り振り回す彼に惚れ直してしまったのよ。やだ、恥ずかしいわ。」
そういうとリセさんは頬を赤らめている。
若干ハアハア言っている。
「だ、だからね!できれば、彼が自信を取り戻してあの格好を辞める、まな板以外の武器がいい!」
まな板をやけに強調しながら、リセさんが捲くし立てる。
隣のエリカをチラッと見ると、その目は憧れのお姉さんを見る目ではなく、変人を見る目であった。
―――――――
翌日俺は騎士団の訓練場を訪れていた。
エリカに付いてくるかと聞いたら丁寧に断られた。
「フランクさん、お話があります。」
「おお、トウキか、どうした?」
「いえ、最近悩み事はないですか?例えば奥さんとか。」
「ぐ、なぜ知って居るのだ。」
「エリカから聞きました。」
「そ、そうか…。」
「そこで、同じ夫として、協力させてください。」
「なに!本当か!」
「ええ。そんな格好しなくてもいい、素敵な武器を持ってきました。きっとリセさんも喜んでくれますよ。」
「トウキ、なんとお礼を言えばいいのか。実際この格好は動きにくかったんだ。しかし、本当にリセが喜んでくれるだろうか…。」
試作品見せたとき実際に喜んでいたから大丈夫です。
「これです。エリカの鑑定結果もこの紙に書いています。」
「こ、これは!」
「さあ、今すぐリセさんに会いに行ってください。」
中年男性にこんなもの渡しているところは誰にも見られたくないので早く。
「この恩は必ず返すからな!」
そういうとフランクさんは日用品を脱ぎ捨てて走って行った。
―――――――
翌日、リセさんが工房を訪ねてきた。
興奮気味に今の夫がどれだけ素晴らしいかをエリカに1時間ほど語ったあと、お礼をいって去って行った。
昨日は俺が罰ゲームに会ったんだからお互い様だと思い、呆然としているエリカは放置した。
今日からリセさんは、「トングのおばちゃん」と呼ばれるようになる。
【ミスリルツイントング】
攻撃力500×2
防御力500×2
握力強化(極大)
耐久性(極大)




