新婚旅行?
俺とエリカは新婚旅行半分、仕事半分で、ルクレスは里帰りで王都にいた。
エリカは王都に行ったことがないとのことで、到着と同時に連日大はしゃぎであった。
初日にいきなり迷子になって王国軍のお世話になっていた。
今現在はエリカとルクレスは2人で王都を散策している。
俺はというと、王城の書物庫にいた。
聖剣を制作しようにも、そもそも聖剣のことを良く知らなかったので、午前中は王都の図書館と王城の書物庫に通っていた。
これが仕事である。
俺が常に一緒に居られないことをエリカは意外にもすんなり納得してくれていた。
ルクレスは「エリカ殿は良妻の鑑だな!」と感動していたが。
なんだか妙だ。
1週間の研究によって分かったことは、聖剣は大陸の東西南北にある高難易度ダンジョンにあると言われる宝石を利用して作製されたということだ。
なんというテンプレ。
ただ、宝石があったとしてもそれを加工できる腕前の鍛冶師が居ないと意味がない。
そのため、今まで王国では何度も聖剣復活計画が立案されたが、頓挫していたようだ。
「そんな中、こんなぶっ飛んだ鍛冶屋が居れば復活させるわなぁ。」
俺はつぶやく。
お前が解体しなければそもそも問題にならなかったというツッコミは考えないようにした。
先日はワーガルの街にロックゴーレムが現れた。
聖剣が力を失ったことが理由だろう。
聖剣復活はもはや王国にとって必要不可欠な国策となっていた。
まあ、そんなロックゴーレムはフランクさんがまな板で討伐したが。
俺は調査を終えると、エリカたちに合流すべく書物庫をあとにする。
「おーい、エリ…カ…?」
しばらく街を歩いていると愛しの妻を見つける。
だが、その姿が問題であった。
「ふぁ、ほうきだ!」
口いっぱいに物を詰め、口の周りには何かのソースが付いている。
更に右手には串に刺さった焼き物を持っている。
横にいるルクレスにはもはや生気が無くなっていた。
「お、おい。大丈夫かルクレス?」
「うぷ。エ、エリカ殿は食いしん坊なのだな…。」
それだけ言うとルクレスはおとなしくなった。
「おい、エリカ。」
「ふぁい?」
「とりあえず口の物を呑みこめ。」
「ん。でなによ。」
「ワーガルに帰るぞ。」
「えっ!なんで!」
「なんでじゃねぇよ!見ろよルクレスを!1週間お前に付き従ったせいでこんなにふっくらしてるじゃねぇか!」
ぷにぷにになってしまったルクレスの頬をつつく。
「いやよ!まだ食べてないお店いっぱいあるのよ!ルクレスと回るんだから!」
そういうと、むちむちになったルクレスを抱きしめる。
「新婚旅行の資金はとっくにオーバーしてるんだよ!」
ルクレスよ、これのどこが良妻なのだ。
「いやだぁ!いやだぁ!いやだぁ!」
もはやただの駄々っ子である。
その動きに合わせて抱きしめられたルクレスも左右にゆすられる。
みるみるルクレスの顔が青ざめる。
「もう…だめだ…。」
英雄でも吐き気には敵わなかったよ。




