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聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
第1章 鍛冶屋大暴れ編
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運命の来訪者

 エリカに櫛を贈った翌日、俺は工房の前が騒がしいことに気付いて目が覚めた。

「な、なんだいったい?」

 俺は工房の扉を開ける。

 そこにはとんでもない行列ができていた。


 俺が出てきたことに気付いた人々は、口々に「俺の武器をつくってくれー!」「私にもジョゼ様みたいなレイピアをください!」「うちの騎士団に武器をつくってくれ!」といったことを言っている。

「こりゃいったいなんだ?」

 俺は困惑する。

 そして昨日見た新聞の記事を思い出した。

 あ、ジョゼのおかげか。


「ち、ちょっとお待ちください!」

 そういって俺は店の中に引っ込む。

 まさかここまでの評判になるとは思ってなかった。

 どうしたものか。

 今の俺ならあの人数の武器を作ることは可能である。

 しかし、自分の技術を安売りするつもりはない。

 ジョゼやフランクさんは例外である。

 なにより、あんな化け物じみた武器を世の中に大量に出回らせないとエリカと誓っていた。


「よし、これしかねえか。」

 俺は店の看板を一旦しまうと書き直してから店の前に置いた。

『オーダーメイドでの武器のみ作成します。1000万Eから受け付けます。』

 この看板は効果抜群であった。

 興味があって店の前に残った者もいたが、ほとんどは去って行くか、エリカの店に行った。

 武器を売らなくても食っていけるからこそできることであった。


「ふう。これで少しは落ち着いたかな。」

 俺が平穏を取り戻したことに安堵していたとき。

 ギィーと扉を開ける音がする。

 俺はてっきり朝食をエリカが作りに来てくれたものと思い反応しなかった。

「店主はおらんのか?」

 聞いたことのない女性の声がして。

 俺は急いで工房の奥から出てくる。


「すいません!少し用をしていまして。」

 俺はそういいながら、女性に対応する。

 青髪のエリカと同じくらいの年齢の見た目をした女性が立っていた。

「そうか。貴殿がトウキ殿か?」

「ええ、そうです。」

「うむ。実はな私の武器を作ってほしいのだ。」

「ええと、表の看板は見ていただけましたか?」

「当たり前だ。製作費は10億Eまでなら好きに使うがいい。」

「は?」


 意味が分からなかった。

 人生で初めて聞く金額だった。

「失礼ですが。それほどの大金を本当にお持ちですか?」

 当然の疑問だ。

 こんな若い女性がそんな大金を持っているとは到底思えない。

「貴殿の疑問ももっともだ。」

 そういうと女性は目の前のカウンターにドサッと袋を置いた。

「この中には1億Eが入っている。さすがに10億Eも持ってくることはできなかった。とりあえず、当面はこれで作成して、足りなくなれば追加することでどうだ?」

「ははあ。謹んでお受けいたします。」

 金の力は偉大である。

 いや、これだけの金があれば自分の腕を存分に振るえるからね。

 気合も入るよね。仕方ないよね。


「お客様、お名前を頂戴しても。」

「ああ、私の名前はルクレスだ。そうだな。3日ごとに進捗を聞かせてもらいに来るとしよう。追加の資金が必要になればそのときにいうがいい。」

「承知しました。それでは、どのような武器を作成しましょうか。」

「トウキ殿に一任する。」

「は?」

「よろしく頼むぞ。」

 そういってルクレスは工房をあとにした。


「さて、こりゃとんでもない大仕事が舞込んできたぞ。」

 俺はついニヤけてしまう

 なにせ作る武器の種類すら自由なのだ。

 ニヤけるのも仕方ない。

 顔を引き締めて仕事に取り掛かった。


 それから、ルクレスは律儀に3日ごとに進捗を聞きに来た。

 俺はそのたびに説明をしていた。

 ルクレスは毎回もっと資金が必要なのではないかと聞いてきたが、はっきり言って1億Eなんて使い切れるわけもなく、毎回断っていた。


 だが、もっと厄介なのはエリカだった。

『最近トウキのところに青髪の綺麗な女が出入しているらしい。それもエリカちゃんのいない時間を狙って。』

 などという噂が流れてしまって、それを耳にしたエリカが烈火のごとく怒ってきた。

 もうすこしでフライパンで殴り殺されるところだった。

 何とか誤解を解いたものの、それ以来機嫌が悪い。


 依頼から丁度2ヶ月が経過したとき、ついにルクレスの武器が完成した。

「トウキ殿、進捗を聞きに来たぞ。」

「ああ、ルクレスさん。実は完成しましたよ。」

 2ヶ月の交流ですっかり仲良くなっていた。

「おお!そうか!早速見せてくれ!」

 ルクレスは興奮したようにせかす。

「こちらです。」

 俺は一振りの片刃の剣を差し出す。

「これは?」

「カタナと言います。かつて東方で使われていた武器だそうです。文献では知っていたのですが、初めて作成しました。そのせいで時間が掛かってしまいました。」

 俺はせっかくだから、今まで現物を見たことないものを作ろうと思った。

 そこで真っ先に思い浮かんだのがカタナであった。


「カタナと言うのか。ではいざ拝見させてもらう。」

 ルクレスは鞘からカタナを抜く。

 その刀身はまるで鏡のように磨き上げられ、ルクレスの端正な顔を映し出している。

「う、美しい。なんと美しい刀身なのだ…。」

 ルクレスは食い入るようにカタナを見ていた。

「かつて東方ではカタナは美術品としての意味も持ち合わせていたようです。」

「うむ。それもうなずけるな。」


「おっと、忘れるところだった。鑑定をしないと。美しいだけで使い物にならなかったら意味がないからな。」

 そういうとルクレスはカタナに手をかざす。


【名刀・雷虎】

 攻撃力1500

 雷属性

 速度上昇(大)

 状態異常耐性(完全)

 切れ味保持(特大)


「なんだこれは!」

 ルクレスが叫ぶ。

「お、お気に召しませんでしたか!」

 や、やばいよ。

 あれには1億Eのほとんどをつぎ込んだんだぞ。

 弁償なんてできないぞ。

 こうなったらエリカに体を売るしか…。


「とんでもない!これほどの名剣を私は見たことがない!トウキ殿!貴殿はなんと素晴らしい腕をしているのだ!」

 ルクレスはこれ以上ないくらいの賛辞をその後もしばらく言っていた。


「そ、そこまで気に入っていただけるとは。」

 俺自身今回は金に物を言わせて様々な高級素材を使って、作っては壊し、作っては壊ししたことで、腕が上がっていた。

 具体的には鍛冶屋ランクが21になった。

 出来には自信があったのだ。

 エリカが拗ねて鑑定してくれなかったときは少しあせったが。


「雷虎というのだな。」

「はい。本来は剣の命名は所有者がいたしますが、東方では製作者が銘を付けていたようなので、それにならいました。」

「ふむふむ。よし、決めた。貴殿で間違いなかろう。」

「はい?」

「いや、こちらの話だ。今は・・気にしなくてもよい。」

 そういうとルクレスは意気揚々と去って行った。


こんなにもブックマーク等してもらえるとは思っていなかったのでびっくりしてます。


…どうしましょ。期待に応えられるか不安です。

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