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聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
第1章 鍛冶屋大暴れ編
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自警団長の悩み その②

 俺はトウキからもらったヤカンを手にワーガルの街から2日ほど行ったところにある洞窟へとやってきた。

 妻には任務と言って出てきた。

 ヤカンを片手に家を出る夫を何も言わずに見送ってくれるホントにいい妻だ。


 ここにはストーンスパイダーと呼ばれる大きさは牛ぐらいの、クモのモンスターが居た。

 このクモは石のような粒子でできた糸を吐くことからストーンスパイダーと呼ばれていた。

 こいつのドロップする糸袋の中にある、糸の原料となる粒子は、上等の加工素材として知られていて、王国軍の上級兵士の装備はこれで作られていた。


 だが、当然そんなストーンスパイダーが弱い訳はない。

 冒険者は自身の冒険者ランク以外に冒険者ギルドが定めたS~Fまでのランクがある。

 そのうちの一人前と呼ばれるCランクに上がる条件の1つには糸袋を5つ納品することが要求される程である。

 そんな糸袋を俺はヤカンを片手に集めに来ていた。


 洞窟を少し進むと早速1匹のストーンスパイダーを見つけた。

 俺は音を立てずに近づくと、ヤカンで一撃を加えた。

 ゴンッ

 鈍い音を立ててストーンスパイダーが凹むと動かなくなった。

 そして、ストーンスパイダーは光となって消え、後には糸袋が残った。

 もちろんヤカンは凹んでいない。

 俺は深く考えないことにした。


 3時間ほど洞窟を散策して糸袋をさらに3つほど手に入れた。

 ランクがあがったおかげか、全く疲れも感じなかった。

 そういえば、最近リセが「若いころに戻ったみたい。」とベッドで顔を赤らめていたことを思い出す。


 そんなことを考えていたのが間違いだった。

 気が付くと俺はストーンスパイダーに囲まれていた。

「しまったな。」

 いくらヤカンが優れていても、囲まれるとどうしようもない。

「だが、ただでやられてやる訳にはいかないんでな。妻も息子も待っているんだ。」

 俺が覚悟を決めたとき。


「お助けします!」

 突然若い女性の声がしたかと思うと、鮮やかな銀線が幾筋も走る。

 それと同時に俺を囲んでいたストーンスパイダーの一角が消え去る。

「大丈夫ですか?」

 いつの間にか透き通るような綺麗な刀身をしたレイピアを持った若い女性が俺の隣にたっていた。


「助かったよ。ありがとう。」

「いえ、どういたしまして。ところで、それヤカンですか?」

「ああ、ヤカンだ。」

「そう…ですよね。」

 女性はあからさまにヤバい人を見るような目で俺を見る。

「ともかく、まだ気は抜けない。」

 俺はヤカンを構える。

 女性もレイピアを構えるがこちらをチラチラと見ている。


 痺れを切らしたストーンスパイダーが1匹俺に向かって飛びついてくる。

「危ない!」

 女性が叫ぶ。

「大丈夫だ。」

 俺はそういうとヤカンをフルスイングした。

 ヤカンに殴られたストーンスパイダーはそのまま吹っ飛んでいき、洞窟の壁に激突すると光となって消えた。

「す、すごい…。」

「ほら、まだ来るぞ。」

「は、はい。」


 俺と女性は数分後にはストーンスパイダーを討伐していた。

 女性と折半しても糸袋は10個になっており、十分な数になっていた。

「ふう。改めて助けてもらって感謝しているよ。それにしてもすごい剣技だ。」

「いえいえ。そちらのヤカンさばきも見事でした。」

「俺は目的を達したから洞窟を出ようと思うが君はどうする?」

「あ、私も目的を達成しましたのでご一緒します。」

「ということは君は冒険者か。」

「はい。まだまだ若輩ものですが。」


 俺たちは洞窟の外に出る。

「それでは私は行きますね。」

 そういうと、女性冒険者は走り去っていった。

「しまった、名前くらい聞いておけばよかった。」

 俺はトウキの工房に行くためにワーガルに帰った。


「トウキはいるか。」

「フランクさん。素材は手に入りましたか?」

「ああ、糸袋なのだが。」

 俺はトウキの前に糸袋を10個差し出す。

「おお!これだけあればロングソードくらい簡単にできますよ!」

「いや、それなんだが………。」


 トウキはものの30分ほどで武器を作ってしまった。

 さすがである。

 俺は新しい武器を手に家へと帰った。

「ただいま。」

 俺がそういいながら玄関を開けると、リセが待ち構えていた。

 そして、そのままリセは気を失って倒れてしまった。


 リセとしては倒れても当然である。

 夫が突然金色のヤカンを持って「任務に行ってくる。」と行って5日も帰ってこなかったのだ。

 夫がおかしくなったのではないかと、毎日泣いていた。

 そんな夫が帰ってきたかと思えば、金色のヤカンに加えて、銀色のヤカンを2つも持って帰ってきたのだ。

 フランクはそんな妻の気苦労を知らない。


フランクの新武器

【ツインヤカン】

攻撃力500

防御力300

熱伝導(大)

へこみ防止(大)

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