迷える子羊の手引き
SNOWMANの描くイラストの世界観の定義を説明する要素が強い作品です。
これからの小説のイントロデュース的なものです。
挿絵は、2017.2.5~2.12まで原宿で開催された。【白と黒~合同展示編】の作品となっております。
挿絵にはグロテスクな表現が含まれます。ご注意ください。
サブタイトルはイラストのタイトルとなっております。
何の気無しのただの暇つぶしに、ネットサーフィンをしていた時にふと目にいた項目。
【迷える子羊への手引き】
項目をクリックすると、真っ白な画面にスクロールするごとに文字が浮かび上がってくる。
― この世界は三つの時空で構成されている。
雪だるまのようにくっついた二つの世界とその外側にある一つの世界である。
雪だるまの胴体部分の世界は【IN THE DARK】
雪だるまの頭部部分の世界は【blanc soufflé】という。
そして雪だるまの外郭の外側に広がる世界はあなた様方が住まう【現実】である。
【IN THE DARK】内においても世界は層状に折り重なっており、そこから煮詰められ、精査され、溢れでたものが押しあがり、上部に位置する【blanc soufflé】へと昇華される。
【blanc soufflé】の外郭は【IN THE DARK】の外郭よりも薄いため、あなた様方の【現実】へと干渉する力も僅かながらにも有している。 ―
なんとも理解ができない論理が展開されている。
閉じようとも思うのだが、更に浮かびあがる文字になぜか目を走らせてしまう。
― 【IN THE DARK】は愛を渇望し、餓えた世界だ。そこに住まう住人は刹那を孕んで、あなた様方のように生活を営んでいる。そこには、あなた様方にとって所謂〝アヤカシ″というものが存在している。
【IN THE DARK】に住まう住人は、その〝アヤカシ″のことを【白と黒の瓦礫】と呼んでいた。 ―
妖…ねぇ、そんなものこの世界では迷信だ。
それがこの世界の定義では【白と黒の瓦礫】と言うらしい。
…そろそろ24時になる。明日に備えて寝る事にしよう。
ベットへと潜り、目をつぶり、夢の浅瀬へと意識は旅立っていった。
―ぽくり ぽくり ぽくり
馬の蹄の足音が聞こえる気がする。
真っ黒な世界からだんだん、夢の中特有のぼやけて曖昧な世界が広がってきた。
するとどうだ。真正面には〝何か″がいた。
羊のように雄々しい角を頂き、黒く長い髪はたなびき、前髪はカーテンの様になっていて、その視線が何処へ向かっているのか分からなかった。
胸の皮膚は聖痕の様に傷がつき、皮膚なのかドレスなのかフリルが足首近くで揺れている。
脚は人のそれではなく、馬の蹄のような形をしていた。
そう、それはまるで悪魔のような…
「いやいや、これは悪魔なんて崇高な存在じゃあないさ」
それはこちらの考えに言葉を返しているようだ…
喋らずに会話が繋がる違和感をおぼえる。
「おやおや、みな様お忘れか? はたまた 随分お待ちかね? ではでは、これが誘いましょう。
【白と黒の瓦礫】の下の夢の世界へ」
こちらに手を差し出しながら、それは誘いの言葉を紡いだ。
するとその皮膚のフリルはぶわりと翻って中の世界を覗かせた。
そこには、何とも形容しがたい、別の空間が広がっていた。
その中の〝何か″と目があったような気がする…
「もっともっと、近くにおいで。おはいりおはいり、【IN THE DARK】の浅瀬へと」
そう言うと、いつのまにか近づいたそれのフリルに
包まれた感覚がした。