第三 白帝の仕事
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第三 白帝の仕事
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第三 白帝の仕事
「大口叩いたが、この様だ。カッチョ悪い!」
フリンツが頭を掻く。その間にも、ズドーン! ズドーン! と高角砲が火を噴く音がしている。
フリンツの部隊が巨大な『旋風砲弾』を火山神めがけて打ち込んでいるのだ。
「仕方ないよ。あんなの反則だよ。AGAだから、古神はいないとタカをくくっていたからね。多分、魔界で初期に攫われてAGAにされちゃったんだね。あんなに大きくなって、驚いちゃったよ」
ヨランダードが言った。
「誰も失わずに、帰ってこれたら大したものよ。しかも、市民を二百人程も助けたんだから。あなたの作戦は失敗でも無駄でも無かったわよ」
珍しくメイアがフリンツを慰める。
「しかし、AGAの一匹如きでこれだからね。先行きが明るくないねぇ」
フリンツが言った。
「フリンツ。私達三人と、本当に使えそうな人だけでやりましょう。あんなのにかかっちゃ、集団戦は却って足手纏いになるわ」
「あゝ。そうしよう。俺とこの大将と中将の内、使えそうなのが二十ってとこだ」
フリンツが言う。
「充分だよ。うちの軍で使えるのは五人かな」
「良し! うんじゃヨランダード公爵様に指揮していただきましょう」
フリンツが言った。
✳
空中に『転移』。
ヨランダードが両手に巨大なプラズマ爆弾を作る。
「これで、威力的には、あれぐらいの山なら吹き飛ばせるはずだ」
フリンツが言う。
「俺も加勢するぜ」
フリンツもプラズマ爆弾を両手に作る。メイアも両手でプラズマ爆弾を作った。
メイア嬢もやるじゃん。とフリンツが目で合図する。
「各員も最大攻撃を同時に叩き込め。目標はフリンツが作った中腹の窪みだ! まず私が着弾速度をゆっくりにして発射するから各自は、それにタイミングを合わせて着弾時点を合わせるように」
ヨランダードが命じた。フリンツは成る程と納得する。いつも連携で訓練していない混成部隊では、ヨランダードのような細やかな心遣いが必要だ。着弾時点を合わせるというのは良いアイデアだ。
まず、ヨランダードがプラズマ爆弾の速度を落とし気味に発射する。フリンツも直ちに発射し、ヨランダードに速度を合わせる。
メイアは、着弾時を予想し、少し後に打ち出した。各自がタイミングを合わせてそれぞれの攻撃を発射した。
長距離攻撃が可能な魔法師は、ヨランダードの合図で一斉に攻撃魔法を発動した。
数十万人の魔法師による大攻撃の発動である。
遥かな遠方から富士山のような火山の中腹にある巨大な穴に大爆発が起きる。
目を覆いたくなるような閃光! 暫くして衝撃波が全軍を襲う。
「「「ドドドドド!」」」
◆◆◆ドカーーン◆◆◆
◆◆◆ズドーーン◆◆◆
◆◆◆ドドドーン◆◆◆
強烈な衝撃波とともに、爆音が響き体を強い衝撃が走り抜けて行く。
皆が様子を伺っている。
巨大なAGAの上半分が消えて無くなっていた。
「AGA活動停止!」
誰かが叫んだ。
「良し! 掃討戦!」
ヨランダードが命じた。ヨランダードの軍の将軍の一人が「はっ」と敬礼する。空中での敬礼はあまり様にならないなぁ〜と、フリンツは不謹慎な事を思っている。
《掃討戦! 全軍進発!》
ヨランダードに命じられた将軍が思念で全軍に指示を出した。
アルマタシティーを遠巻きにしていた三百万人を超える部隊が前進を始めた。
「こいつの残骸をAGA研に送ったら、シーナ先生怒るよな?」
フリンツが言った。
「だろうね。かと言ってこいつをどう処分するかも分からないね」
頭の痛い事だらけだった。AGA一匹にこの戦力の掛け方は本当に何と言う戦力差だろう。あんな奴がもっと大きいのも含めて何万もいたような気がする。
この火山の神さんはそれ程神通力が強く無かったがもっと強くて大きな奴だって神議ではいたように思う。
何年もかかってこれだけ強くなってもまだまだだとフリンツは肝に命じたのだった。
【最後の日まで後2140日】
✳
白帝ラーサイオン・フュラスは、エイオン城を仰ぎ見た。彼の前には、エイオンの征服王の名声で有名なディサイファ神龍王がゆったりと立っていた。ラーサイオンと同じような大きさの人型の竜種の姿だった。
あれから、何年か時が経っている。短い間だったが随分と変わった。
「あの小僧か? 随分と立派になったもんだな。お前が白帝とはな。何が何だか訳がわからん」
ディサイファ神龍王が言った。
「俺もいろいろ経験したって事だ。エイオンに来たら、お前との因縁の勝負を決すると決めていた。あの時と同じとは思わず、本気でかかって来いよ」
白帝ラーサイオン・フュラスが言った。
「この様な短時間で、あの小童がそれ程の器に変わるものか」
ディサイファ神龍王は、鼻で笑う。
「やれば分かる」
白帝ラーサイオン・フュラスが静かに言った。
白帝ラーサイオンは、大剣を片手で引き抜く。神魄の魔法力を全身にめぐらし、肉体を強化した。
大剣に、爆発力を押し込める。見るとディサイファ神龍王は、全身に覇気の鎧を纏っている様だ。成る程、ラーサイオンの闘気程度では撃破できないはずだ。
「ディサイファ。物理攻撃無効だとか魔法攻撃無効だなどと笑えぬ冗談をよくも言ってくれていたものだな」
白帝ラーサイオン・フュラスは、全身を神魄で押し包み迫力の一閃と同時に神速の一刀両断の斬撃を見舞う。
ディサイファ神龍王は、辛うじてラーサイオンの斬撃を受け流した。その受け流した力を反作用にして剣を振るう。ディサイファは戦士として超一流だ。
剣筋が鋭く隙が無い。高速の突きがラーサイオンの喉元に吸い込まれるように叩きつけられたかのように見える。
しかし、ラーサイオンは紙一重でそれを躱している。神魄の力で強化された反射神経により、ディサイファ神龍王の神業とも言える突きがラーサイオンにはハッキリと見えるのだ。
ラーサイオンの左手の拳がディサイファ神龍王の鳩尾の辺りに軽く当てられている。
ラーサイオンは拳から神魄の衝撃波を送り込む。
無言でディサイファが崩れ折れた。ラーサイオンはハッキリとディサイファとの力の差を感じていた。
✳
「突然一人でやって来て、玉座を明け渡せだの、勝負をしろのと仰せで目を白黒させましたぞ」
ディサイファ神龍王が豪快に笑った。
「ディサイファ。魔神種の転生計画を聞くまでは、お前が長年、この城に閉じこもっておった理由が理解できなかった。お前もあの計画を聞いたので有ろう?」
白帝ラーサイオンが尋ねた。
「私は、当時は有頂天でしたからな。当時は魔神種の英雄が選ばれ、我々と共に淵魔界に入りましたが魔神種は異界の神々に囚われました。我らは命からがら帰りましたが。
魔神種の大規模な転生魔法計画が功を奏するならさらに強力な転生者が生まれるであろう事は分かっておりました。あの時は貴方には無理だろうと思ったのですが。
十勇士として帰還されるとは思いませんでした」
「しかし、話が好転したわけでは無い。魔界の領地や攫われた人々は帰ってきたがそれも一時凌ぎにすぎぬ。来る『最終戦争』では勝てる見込みなど皆無だ」
白帝ラーサイオンが呟くように言った。
「しかし、先程使われた技は、昔の我々には無かった新たな技でしょう。異界の神々によって古魔法、古奇跡である、魔技、神技が封印され、歴史が改ざんされ我々には勝つ見込みが全くなかった。
私には魔界が滅びるのを手をこまねいて待つしかなかった。
奴等の歴史改ざんの大神通力も貴方達の活躍で効果が無くなり、巷では魔法や奇跡のレベルアップが凄いようです。
奴等に取っても密かに侵略し犠牲が無く取り込めるところ、我々は少ないとは言え準備し少しでも抵抗する機会があるのですから。無意味ではありますまい」
ディサイファ神龍王が真意を述べた。
「ディサイファ。キンデンブルドラゴンハイツ王国のAGA共を排除しにゆくぞ。
俺には悪魔上皇ヨロンドンと魔神種女帝エルシアの助けがある」
白帝ラーサイオンは、この数年で、選帝になり、地方の竜種の王国を併呑して行った。もちろん、彼の両親を不幸のドン底に落とした先代の選帝は、白帝ラーサイオンに滅ぼされた。
最後の仕上げがエイオンだったのだ。しかし、今回もラーサイオンは決闘を申し込み遂に勝ちを得たのだ。
最後にキンデンブルドラゴンハイツ王国の領土を手中に収めればラーサイオンは竜種の国を統一できるのである。
いかがでしたでしょうか。
キンデンブルドラゴンハイツ王国を蹂躙したAGAは、どんな奴でしょうか?
次回は、竜種の帝王ラーサイオンの活躍です。
もちろん、ラーサイオンと言えばドラゴンライダー青姫も出てきます。
楽しんで頂けると嬉しいです。




