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覇王の誕生  作者: Seisei
第二章 異界の神々の正体
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第二十一 ティーパーティーの丘

いつも読んでくださりありがとうございます。


第二十一話 ティーパーティーの丘


です。

第二十一 ティーパーティーの丘


 憤怒ふんぬアビヌは、この事態になっていっそ爽やかと言って良い顔付きになっている。


「俺様の相手は、お前で良いのか? 俺様は強いぞ」


「ああ」青姫は一目でアビヌが強敵であると看破かんぱしている「しかし、その姿は仮の姿なのだろう」


「ふん。よく分かったな。しかしお前に俺様の真の姿を見せる必要があるかな?」


「マリアージュ。殺してはなりませんよ。聖神せいしん達の生死は、『原始の全てを統べる皇帝』を目覚めさせるキーとなっていることを忘れないでください。


 貴方の一騎打ちに水は差したくはありませんが、世界と貴方の主義を引き換えにはできません」


「分かっている。世の中には強くなる事よりも大切なものは数え切れぬほど存在する」


 青姫が、爽やかに笑った。その笑みは大人の女性の美しさが際立っていた。


「アビヌ殿。私は、このメンバーの中で一番強いわけではない。我々には、言葉にできぬほどに強い仲間がいた。我々は、そのものの弔いの為に戦う。いざ、参られよ」


「お主。マリアージュと言うのか。お主が言っている強いという者に会ってみたかったぞ」


 アビヌが言った。


 青姫は、アールの佩刀はいとうによく似た刀を作っていた。普段使うドラゴンランスは、黒帝クロの実力が低下するのでクロに返している。


 何から何までアールを真似て剣を構えた。正眼だ。全く躊躇ちゅうちょすることなく打ち込んで行く。アビヌが剣で受け止めた。激しい斬撃ざんげきの威力に憤怒ふんぬアビヌが吹き飛ぶ。


「大した威力だ。完全に威力を殺せなかったぞ」


 アビヌはいっそ嬉しそうだ。


 今度はアビヌが斬撃を叩き込んできた。


 青姫は、半身だけ身をそらし、その斬撃を首を傾けて避ける。斬撃が空を切る。そこでできた隙に青姫が刀を叩き込んだ。


 この戦い方もアールの受け売りだ。アールは不思議な剣を使うが、戦い方も独特だった。そんなにギリギリで避けては危険だろうと誰もが言ったがアールは、剣の極意を「肉を切らせて骨を断つ」という言葉で教えてくれた事が有った。異界の達人の言葉だと説明していたが誰の事か分からない。


 青姫は、どこまでもアール式に戦うつもりのようだ。


 その鬼気迫る気迫が凄い。アビヌは、これでは全く勝負にならないと判断した。


「お主は、大したもんだ。私を本気にさせてしまったな」


 そ言うと、アビヌは身を震わせた。次の瞬間には、体長数十メートルの巨人になっていた。その恐ろしい姿がアビヌの本当の姿なのだろう。


 青姫は一旦、距離をとる。本来、巨人と戦うなら空中戦だが、地上に降り立った。それが彼女のベストポジションなのだ。


 アビヌから見ると、青姫は小人よりも小さく見える。


 アビヌは変身することで体内にある基礎エネルギーを何百倍にもした。それで青姫の鬼気に対抗しようと言うのだ。しかしそれでも青姫から感じる気迫は、アビヌを上回っているように感じた。一歩でも動くと一刀両断にされそうで体が動かないのだ。


 アビヌは、周りに気を配る。序列二位の蛇足だそくハカヤの相手は、魔法が得意なのだろう。無詠唱で規模の大きな魔法をバンバン発動している。その洗練された魔法の才能にアビヌは正直、恐れをなした。


 しかも、魔法だけではなく、肉体強化した剣技もなかなかのものだ。こいつは、眼前の娘以上に厄介な相手かもしれないと舌を巻いた。


 降魔ごうまキタイに対峙している紫の姫は青姫とよく似た雰囲気の戦士だが、二人には大きな違いがある。この紫の姫の構えには青姫のような覇気が感じられず、どこまでも静かなのだ。


 アビヌは、ニヤリと笑った。奥の手を出そうが出すまいがかれら聖神との勝敗は決していたようだ。果たして、闘いの最中に他の勝負に注意をらすなどは有ってはならない。


 相手は本当の剣の達人なのだ。青姫は、その隙を見逃さず、二歩で巨人のアビヌに肉薄し、斬撃ざんげきを浴びせた。アビヌは、アッと避けようとするが巨大化した体に反応がついていかなかった。


 右手に鋭い痛みが走った。右腕がゆっくりと落ちて行くのがスローモーションのように感じた。追撃を避けるために、切られた腕が宙にある間にアビヌは後ろに飛び退いていた。しかし、見ると目の前に青姫の小さいが巨大なエネルギーの塊のような姿が追いすがってくるではないか。そして、そのまま恐ろしい速さで追い越していた。しかも青姫は、すれ違いざまアビヌに鋭い斬撃を浴びせていた。


 しかし、聖神せいしん序列第一位アビヌは、さすがであった。袈裟懸けに彼の肩から胸に掛けて致命傷の傷が作られていたのにもかかわらず、そのまま、追い越した青姫を後ろから追撃したのである。


 殺してはいけないとのサーリの忠告のため手加減をした為だった。


 しかし、青姫は、更に上を行っていた。容赦なく追撃してきた手を切り落としたのだ。そして、さらに先ほどとは逆の袈裟懸けに肩から胸に掛けて切り落とす。


 アビヌが大きな音を立てて倒れた。


 既に相手を圧倒し捕縛していたサーリは、青姫とアビヌの闘いを見ていたが、慌てて、アビヌのところに飛んできて回復の呪文を掛けた。


 切られた両腕はそのままにしてある。


 回復呪文で意識を取り戻したアビヌは、周りを確認し、全ての聖神せいしんが生け捕りにされているのを見た。


「情けない奴らだ。死ぬ気でかからぬからだ」


 アビヌが仲間たちに言った。皆の様子を見ながら敗因は何かと考えてみる。しかし考えるまでもなく鍛え方が足りなかったのだ。特にこの何万年かは全く修行をして来なかった。それが原因だとアビヌには身にしみて分かった。


「悔し紛れにしか聞こえぬだろうがな、我々も全盛期はそなたらと同じほどに強かった」


「分かっています。我々はあなた達よりも強いなどと少しも思っておりません。ラルカから得た情報をもとにして闘い方を修行したからこそ勝てたのです」


 サーリが言った。マリアージュは別だったが敢えて言わなかった。青姫マリアージュは、一人修行の旅に出て本当に強くなって帰ってきた。アビヌ達の情報はマリアージュには伝わっていない。マリアージュは実力でアビヌを圧倒したのだ。


 青姫は口には出さないが、自分の未熟さからアールを亡くしたと責任を感じていた。だから死に物狂いで修行したのだ。


「皆、集まってください。聖神せいしん達と協議を始めます」


 両腕をなくしたアビヌの周りに捕縛された聖神せいしん達が集められた。


「ラルカはいかがしました?」


 メイアが尋ねた。尋問役を買って出たのだ。鋭く聞くのはメイアの性格に一番合っている。


「私が始末した」


 蛇足だそくハカヤが答えた。


「私達は、ハイランダーにも、テーランダーにも興味はありません。貴方方を解放するので放って置いて頂けませんか」


 サーリが聞いた。


「お間達は、もはや『原始の全てを統べる皇帝』の配下に入って長い。お前達の世界もテーランダーの一部になっていることが分からぬのか」


 降魔ごうまキタイが言った。


「つまり、ここに至って逃げる事は許さんと?」


 メイアが聞く。


「そもそも、『原始の全てを統べる皇帝』から逃げるためのシステムを無効にしたのはお前達だろう。我々は、ほとほと疲れたのだ。さっさと始末して、我々と同じように『原始皇帝』に堂々と勝負を挑んでみろ」


 蛇足だそくハカヤが挑戦的に言った。


「貴方方と共闘きょうとうする事は叶いませんか?」


 尋ねたのはサーリだった。


「悪逆非道の我々とお前達のような甘ちゃんが共闘できるはずがあるまい。それにお前達がいくら強くて我々と共闘しようとも『原始皇帝』にかなうはずがない。あの方は本当の神だ」


 蛇足だそくハカヤが言った。


 憤怒ふんぬハビヌが身を震わせたのは正にその時だった。皆、油断していた訳ではないが両腕をなくしたアビヌには注意がおろそかになっていたのだ。


 彼は巨人から普通の大きさに戻った。そして、その変化の途中で両腕を治したのだ。すぐに両腕が使えるようになる。


 彼は錬金術で剣を出すと、横にいだ。聖神せいしん達の首が飛ぶ。次に自分の首も自ら飛ばしてしまった。


 最後に思念波で《バトンタッチだ》と言い残した。


 皆が「アッ」と叫んだが遅い。


「しまった。キーが発動されてしまいました。全軍に防御体制。元素魔法六以下のレベルの者は、全て三界に退避させてください」


 サーリが直ちに命じた。大変なことになった。『原始の全てを統べる皇帝』が目覚めてしまう。


「すぐに、亡き陛下が考案された対『原始の全てを統べる皇帝』封じの武器の準備をしてください」


 見ると、テーランダーの上空に大きなお城が姿を現した。ブルトランド宮だ。あそこに『原始皇帝』が眠っている。


「最初は百億の分身による攻撃です。レイルガンをブルトランド宮にむけて打ち込みなさい」


 サーリの命令により、三界連合軍の数億人いた軍団から六大元素魔法以下のレベルの者達が三界に撤退した。ここに残ったのは七大元素魔法と八大元素魔法を操ることができる精鋭だった。


 次に、レイルガンが次々に放たれる。本当ならその一発でも当たればブルトランド宮には大きな被害が出るはずだが、ブルトランド宮から無数に発生した分身達に阻まれてレイルガンの砲弾はブルトランド宮には届かなかった。


 しかし、ブルトランド宮から発生した分身達に大きな被害を与えることには成功する。


 サーリは、ブルトランド宮から一直線に飛びかかってくる『原始皇帝』の分身達の単純な攻撃に半ば呆れてしまう。ブルトランド宮とサーリ達の間に目隠しの網を作りその後ろに巨大なブラックホールを作るように命じる。


 このブラックホールは、魔法のブラックホールとは違い、アールが遺した科学魔法を応たもので本物だ。


 その作戦はまんまと当たり、無数の分身がブラックホールに飲み込まれて行った。


 さすがに百億の分身全てをブラックホールに落とすことはできなかった。無数の分身がサーリ達の軍団に降り注いだ。


 サーリを含めて三界連合軍の者が分身と闘った。乱戦と言うのもバカバカしいほどの物量だ。見ると、分身は、テーランダー全土にも広がってゆく。


「ブルトランド宮が手薄になったぞ、レイルガンを撃ち込め」


 この乱戦で無茶な命令だと思ったが、何発かのレイルガンが発射された。ここでレールガンを発射した者達は大したものだ。


 ブルトランド宮の何箇所かが吹き飛ぶ。


 次の瞬間。全ての分身が消えた。見回すと惨憺さんたんたる有様だった。


 後、数分あの分身達が暴れ回ったらサーリ軍は全滅したかもしれない。幾千万の命がほとんど一瞬で消えてしまっていた。なんという事だろうか。


 さぁ、ついに『原始皇帝』本体のお出ましだ!


「対『原始皇帝』封じ用意! 急ぎなさい!」


 サーリが命じる。一刻も早くあの怪物をどこかに消しとばしたい。アールの遺した科学魔法による退治法だ。しかし、見るとその重要な任務を担ったもの達に大きな被害が出ているようだ。


 見ると、『原始皇帝』は、目を赤く光らせて周りを見ている。


「あっ!」


 思わずサーリが叫ぶ。『原始皇帝』の目から光線が発射されたのだ。その光線は、サーリ達はから遥かに離れた地点に落とされたがその爆発の大きさは筆舌に尽くし難かった。


「「「「「ドドドドド!!!」」」」


 あまりにも巨大な爆発が全てを土埃つちぼこりで覆う。


 サーリは、その様子を見ながら半ば諦めた。想像以上だ。なんという破壊力だ。


「対『原始皇帝』封じの重力制御開始。巨大ブラックホール作成。射出用レール用意」


 次々にサーリが命じる。残った科学者達で可能かどうか不明だ。見るとシーナ教授が科学者達を指揮していた。


 その時、ブルトランド宮の方からキャーギャーキューと耳をつんざくような恐ろしい鳴き声が聞こえた。


 恐ろしい姿だった。羽は、コウモリ、角は山羊、目は金色に黒の虹彩こうさいがおぞましい。手は左右八本ずつ尻尾が三本ある。正に巨大魔獣だ。


「対『原始皇帝』封じ砲。射出!」


 サーリの命令で、巨大なレイルから射出されたのは、人工の巨大なブラックホールだった。アールの秘策だ。ブラックホールは、魔法で作ることができるがそれは本物とは全然違うものだという事をアールは研究していた。そのブラックホール魔法の弱点を克服し、科学魔法の究極の兵器としてブラックホールを使えないか、アールは研究を繰り返してきたのだ。


 それがこのブラックホール射出レールガンだ。巨大な重力を持つブラックホールを作りそれを光の速度で射出すればどれ程のエネルギー量になるか想像できない。


 それはもう、神の領域だ。物理攻撃無効のステータスを持つ『原始皇帝』を絡め取り封印しどこかに捨てるための一石三鳥いっせきさんちょうを狙った攻撃だった。


 思った通り、『原始皇帝』は、発射されるのをそのまま見ていた。次の瞬間、光の速度に達したブラックホールが『原始皇帝』を取り込み光の速度で飛んで行った。宇宙の彼方に飛んで行ったのだ。


 三界連合軍が歓声を上げた。


「やっつけたのでしょうか?」


 紫姫がサーリに尋ねた。


「いいえ。残念ながら時間を稼げただけでしょう」


 サーリが残念そうに呟いた。


「あの装置を操る者が少なすぎたようです。もっと大きなエネルギー量でないとブラックホールの自己崩壊がうまく働かず直ぐに効力が無くすそうです」


《皆! せっかくできた休憩時間だ。お茶にしよう!!!》


 青姫が皆に大きな思念波で呼びかけた。


「マリアージュは元気ですね」


 サーリが笑った。


《では、皆さんあの丘に集合してください》


 サーリが皆を誘った。


 皆が、その丘に転移してゆく。マキシミリアン王国王妃サーリ。青姫マリアージュ・サースラン、紫姫アルテミシア・サースラン、大祭神ツウラ・トウサ、ヨランダード・カールカライド公爵、メイア公爵夫人、エルシア大魔神帝、ラーサイオン白帝、ヨロンドン悪魔上皇、フリンツ・ホップル上級大将、そしてクロ黒帝の十一人がその丘に勢ぞろいした。


 伝説の英雄達が勢ぞろいする丘の麓には三界連合軍の生き残り達も集まりだした。


 彼等は伝説の英雄達を見るために丘を見上げた。天から光が差し丘の頂上付近だけを照らし出した。十一人の英雄達が談笑しているのが見えた。絵に描いたような美しい光景だった。


 その時、丘の頂上で転移の兆候が現れた。十一人の戦士達は、もう来たのかと呆れた顔をして身構えた。


 しかし、転移してきたのは彼等の予想もし無かった存在だった。

さて、次回は実質的な最終回です。


ご期待くださいね。

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