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覇王の誕生  作者: Seisei
第二章 異界の神々の正体
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第十一 長老会議

いつも読んで頂いてありがとうございます。


第十一話 長老会議です。

第十一 長老会議


 マセランティアは、六種族の長神おさめしんと八千種族に近い神々を眷属神とする、テーランダーのなかでも十八番目に大きな勢力を誇っている。


 その膨大な数の神々の施策全てを決定しているのは僅か十二名の長老会議なのであった。


 長老会議のメンバーは、始祖神マセランティアの他、六種族の長神おさめしんの中から特に優れた者から選出されている。


 ミサは、神々の中でも特に優れた才能と頭脳を誇り、長く審議官をしている長老会議の重鎮である。


 十二名のメンバーにはそれぞれ序列があり、ミサはナンバースリーの審議官だった。


 序列一位はアキ最高議長だ。アキ最高議長は、長老中の長老であり、心技体に秀でており、押しも押されもせぬ第一位だった。次いで第二位のサキ執政官は、老齢のアキ最高議長に変わって政務を仕切るキレ者だ。


 ミサの次の序列第四位は、レト軍事総監である。彼は軍事の最高指揮官であり、武闘派として戦士の実力は最高議長に匹敵すると言われている。


 次の序列第五位から十一位までは各方面軍の軍事司令官で統括官という。長老会議の最終序列十二位は調整官という。


 この内、第八位のルイ統括官は、キンデンブルドラゴンハイツ大戦の大敗により現在謹慎中でこの会議は欠席していた。


 ミサは、楕円形の巨大な机に並んで座る長老会議のメンバーを一人一人、ゆっくりと見渡した。


 ミサ達、マセランティア神以外の長神おさめしんがメンバーには四人入っている。


 序列第六位のカイ統括官は長神おさめしんテールランプ神種である。外観は、マセランティア神とあまり変わらない。


 序列第十位のラブ統括官は、長神おさめしんスカネート神種である。外観は魔神種に近い。


 序列第十一位のマキ統括官と第十二位のサイ調整官の二人は、長神おさめしんロガンナード神種である。外観は竜種に近い。


 それらのメンバーを見渡してミサ審議官はバランスの取れた優秀な仲間だと頼もしく感じている。謹慎中の第八位ルイ統括官も大変優秀な戦士としてマセランティアでは特に人気の高い英雄だ。


 キンデンブルドラゴンハイツ大戦の大敗は長老会議にとっても大きな痛手だった。各、長神おさめしんの種族の中でも長老会議に参加していない、メロンカリバー神やサラナダーム神などは、長老会議の再選出の機会を作るよう矢のように催促してきた。


 この二種族は甲殻種族であり、好戦的で戦闘力はあるがなるべくは長老会議に参加させたくない種族だった。


 長神になって数世紀にもなり、さすがにそろそろ長老会議のメンバーを増やしてでも全ての長神おさめしんの種族を長老会議に参加させる必要があるかもしれないとミサは思案している。


 参加メンバーの中で、軍事総監と統括官の計八名は軍事関係者となる。残り四名が政務官である。


 数から言えば軍事関係者の方が多い。しかし一位から三位までが政務官であるなど長老会議は実質は政務官が長老会議を掌握しているのだ。


 マセランティアの歴史から言えば、軍事総監を含めた八名の軍族の力が大きい軍事国家だと言える。


 しかしながら軍事関係者が国政を掌握すると軍事費が突出し、国民の生活は逼迫ひっぱくされるため近年は、軍縮の施策が取られていて政務官が長老会議を掌握するようになっていた。


 その流れで序列第十二位の役職も歴史的には統括官だったものが調整官の政務官に変更されていた。


 ここに来てキンデンブルドラゴンハイツ大戦の大敗とバーナディクシン神による暴挙などが勃発したのである。


 軍部の威信がさらに低下するとともに同時に軍拡圧力が高まっている。


 今回の長老会議を臨時招集したのはミサ審議官とレト軍事総監の二人である。ミサ審議官はバーナディクシン神の暴挙についてどう対応するかという議題を掲げ、レト軍事総監は、第四方面軍の軍事施設が壊滅したことについてどう対応するかという議題を掲げていた。


「バーナディクシン共は、気が狂ったとしか言いようがない」


 吠えるように発言したのは序列第七位のムハ統括官である。


「いや。彼等の発想はわかる。我が軍は、三界への外征の失敗により、軍事力の六分の一を失った。もちろん軍事秘密で正確な数字までは掴んでいなかっただろうが、それを確かめる意味もあって、今度の第四軍の軍事施設への急襲をかけたのだと思われる」


 答えたのは序列四位のレト軍事総監だ。


「しかし、第四軍の軍事施設ではバーナディクシンの兵などの証拠が全く出なかったのであろう。これは不自然だ」


 そう、指摘したのはサキ執政官だ。


「執政官。それは逆です。あれ程の大攻撃ができるのはバーナディクシン程度以上の軍事力を保有する勢力しか考えられません。さらに、証拠を隠滅しているのが逆に証拠なのです。第四軍の生き残りもバーナディクシンを見たと言う者が多いのです。バーナディクシンであることは間違いありません」


 レト軍事総監が答えた。


「先の三界への外征における大敗北も、影でバーナディクシンが援助していたと、三界の者が申しておます」


 ミサもレト軍事総監に呼応するようにバーナディクシンの非を証明するために発言する。


「それで、スッキリする。我等の優秀な軍団が下等種族との交戦で大敗するなどありえない」


 第十位ラブ統括官が膝を叩いて叫ぶ。


「三界への外征は、ミサ審議官殿からの警告もあったため、第四軍団全てと第五軍団の一部を強化した大軍団を当てたにもかかわらず大敗した。あのような大軍団をあれ程までに完膚なきまでに撃破するにはバーナディクシンは相当な軍団を派遣したに違いありません」


 レト軍事総監が言った。長老会議の全メンバーが大きく頷いている。それだけ第四軍団の壊滅的な大敗に違和感を感じていたのだ。


 バーナディクシンの大軍団が援助していたと言う事ではじめて納得したのだ。このためバーナディクシンが暴挙に出ているという事は長老会議のメンバーにとって既成の事実のようになってしまった。まんまとサーリの策にはまってしまったのだ。


 アール達がこの長老会議の様子を見たら、ほくそ笑んだ事だろう。


「三界の下等種族にも、強者がおります。三界の帝王とその取り巻きの十二名ほどの者達ですが、なかなか侮れぬ実力を持っています」


 ミサが付け足すように述べた。


「下等種族など、どれほどのものでもないでしょう。場合によっては我等長老会議のメンバーが外征して一捻りにしてやれば良い」


 序列第十二位サイ調整官が言った。自分が行ってひねりつぶしましょうと顔に書いてある。ミサがその頼もしい顔を見て笑って頷く。


「確かに。彼らがいくら優秀であっても四諦神したいのかみにすら及ばぬ所詮は下等種族。恐るゝには及びませぬな」


 ミサがサイ調整官に笑いながら答えた。


「下等種族の事は暫く放っておいても大丈夫でしょう。当面は、バーナディクシンとの戦いを真剣に考える必要があります」


 レト軍事総監が言った。


「直ちに、外征に出している全軍団をテーランダーに戻すとともに、我等の八長神やおさがみ八千神やそがみ世界から戦時徴兵するなどの対応を考えましょう」


 サキ執政官が結を取るように言った。


「では、バーナディクシンの討滅のため全軍団をテーランダーに集結させる事でよろしいか? さらに戦時徴兵を実施すれば、たちまち八軍団程度は増員できるでしょう」


 レト軍事総監がニンマリと嬉しそうに言った。ミサはレト軍事総監の胸の内が手に取るように理解できた。大敗を喫して軍部の威信が低下するも軍拡で勢力を伸ばせれば結果良しという算段なのだと容易に推測できた。


 一件が収まってから、そもそもの責任を軍部に取らせ、長老会議を再編成するなどの構想がミサの頭に過ぎった。頭の痛い事ばかりだがやり甲斐はある。しかしミサの思考を老人の声が遮った。アキ最高議長が発言したのだ。


「皆。聖神様達の存在を失念しておる。テーランダーでの長神おさめしん同士のいさかいは、御法度ごはっとだ」


 アキ最高議長の古臭い言い回しが耳についたが、聖神のことは確かにアキ最高議長の言う通りだ。


「アキ最高議長。我々は聖神様達の事は伝説程度しか知らないのですが、聖神様達は我等の戦いに介入されるでしょうか?」


 ミサが尋ねた。


「お前達は、あの恐ろしい方々を知らぬのだなぁ」


 アキ最高議長が呟く様にいった。


「そもそも、テーランダーで誰も戦わないのは、聖神様達がおられるからだ。あれは、三万年も昔の事になるが、真相はこうであった」


 アキ最高議長が長い昔話を語り始めた。それは伝説とは少し違う内容で、長老会議のメンバーに強い恐怖心を与えた。


「我々は、所詮は聖神様達の眷属神に過ぎぬ。テーランダーは聖神様達が創造された世界だ。テーランダーの全ての出来事を聖神様はご覧になられている。下手に争うと両勢力は消滅させられてしまうだろう」


 そこでアキ最高議長が沈鬱ちんうつな表情で一旦話を止めた。すっと背筋を伸ばし厳しい顔で皆を見回した。若かりし日の英雄の姿が再現された。


「聖神様達の住まわれるハイランダーに赴き、全てをお見通しの聖神様達にバーナディクシンの暴挙を訴えて我等の戦いに援助を請うのだ」


 アキ最高議長が大きな声で宣言するように言ったのだった。


 こうして、アール達が思いもよらない結論が決定されたのである。


次回は、三界の民達の活躍の様子を描きます。


楽しんで頂けると嬉しいです。

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