025 銀の剣匠
2015/12/27
修正加筆を行っています。
謁見の間では引き続き、テオストラ探索について報告が行われた。
元々、国王からの極秘依頼ということで、モルヴィス国王とゴード、ウォルス、シャティル達以外は知らなかった事。どの時点で他の重鎮に知らせるかという判断に、テオストラの危機が去った事で情報公開することになったのであった。
ジーナロッテやアリシアの事は隠す事にしていた為、その辺は伏せた上で説明する。
首無し騎士と自動人形、それを操ったウェンデという魔法使い。確証は得られなかったがシュナイエン帝国の者である可能性が高い事を、ウェンデの遺品である書物を提示し、ノキアがそれを検分した。また、騎士達の遺品である剣を、レドが「見えざる魔法の鞄」から取り出し、ユーノスとコームがそれを検分する。
「確証が無いので表だった抗議はできませんね。しかし、シュナイエン帝国の工作と見て今後の心づもりをしたほうが良いかと思います」
ノキアの言葉に、モルヴィスも頷く。
「剣については確認できました。テオストラで行方不明となった者達のもので間違い有りません」
ユーノスの言葉に、モルヴィス国王は遺族への連絡と国葬の手配を指示した。
「しかし、シュナイエン帝国関与の証拠を掴めなかったのは落ち度ですな。シャティル殿?もう少しやりようがあったのではないですかな?」
シヴァース大臣の嫌みな物言いに、ミーナがむかつくが。
「それに関してはまだ話の続きがございます」
レドがそういい、国王に促されて続きを話し出した。
シャティル達がコボルド達と遭遇して転移のマトックの存在に気付いた事、コボルド帝国に逆に乗り込み、コボルド王を倒したが捕虜にしていた自動人形を寄代にナシュタイン神が降臨したこと、勝利して略奪のマトックからテオストラの記録を消去してもらい、今後コボルドが侵入する可能性が極めて低くなったことを話すに至り、重鎮達の間には驚きの表情が浮かぶ。
レドは、証拠品として“探索のマトック”と“略奪のマトック”、そしてガラス瓶に入った“コボルドの王水”を提出して話を終えた。
「いくらなんでもナシュタイン神が降臨するだなんて作り話ではないか!謀るとは無礼だぞ!それで責任逃れするつもりか!?」
激高するシヴァース大臣にシャティルが向き直る。
「勘違いするな。俺は依頼を受けたが、あんたの部下になった覚えもないし確実な証拠を持ってくる義務もない。全てこちらの判断で良かれと思ってした事にすぎない。確かに自動人形を壊されたのはこちらも不本意だったが、だからといってあんたに怒鳴られる筋合いはねぇよ。そもそも、証拠の有る無しと、シュナイエン帝国に対する腹を括るかどうかは別問題だ」
「控えろ、シヴァース。シャティルの言うとおり、帝国に対する判断は証拠が確定でも不確定でも我々がどう判断するか、だ。それに、確証があったところで、戦争開始するつもりでもなければ正式抗議はできんよ」
モルヴィス国王に諫められ、低頭するシヴァース大臣。
丁度その時である。部屋の隅に控えていたのであろう、伝令の兵が駆け寄ってきた。
ノキアが近づいて要件を聞き、次いで国王の元へ何事かを伝えたところ、国王が頷く。伝令は部屋の済みに戻り、何か機器の操作をしているようだった。やがて・・・・・・
謁見の間の扉がノックされ、衛兵が大声で伝える。
「神殿長ブラームス様、姫巫女ルウィーネ様がお出でになりました!」
見ると、扉が開かれ、そこには白ローブを着ているが筋骨隆々の40代の男が一人。武闘僧侶としても有名な、ヴァルフィン神殿の神殿長、ブラームス・マキアミである。
その傍らには金の長髪に細面で儚げに目尻の下がった、かといって決して気の弱い訳ではなく瞳に力のこもった女性が居た。シャティルはそこに、4年前に見た、もっと小さかった頃の彼女の面影を見た。
姫巫女ルウィーネ。ウィルフリードの妹、つまり王女にして、ヴァルフィン神に認められた、神託を告げる巫女。そして剣聖としての神格を判断する巫女でもある。
「突然の来訪申し訳ありません、皆様。ヴァルフィン神の神託があったゆえ、お邪魔させて頂きました」
ルウィーネがそう言って神殿長と共に近づいてきたため、シャティル達は赤絨毯の通路を空けた。姫巫女と神殿長がシャティル達の間を抜けようとしたところで、姫巫女が立ち止まりシャティルの方を向く。
「シャティル様、お久しぶりでございますね」
「ルウィーネ姫も大きくなったなぁ。武闘祭楽しみにしててくれ。次の剣聖の称号は俺がもらいに行くよ」
頑張って下さいね、とシャティルに一礼した後、ルウィーネ姫は国王と重鎮達に一礼し、ガロウドが立ち位置をずらしたところへ並び立った。
「して、神託とはいかような?」
モルヴィス国王の問いに、姫巫女ルウィーネは答えた。
「シャティル・ヴァンフォートらがナシュタイン神と戦った事は事実である。彼の者達の働きによりテオストラは当面、コボルドの侵入はないであろう。と言う事でした。それと・・・・・・」
ルウィーネが一呼吸置いて続けた。
「武具品評会は武闘祭と共に、奉納の儀の一つである事を忘れるな。我は数ではなく質を求む」
ルウィーネがそう言ってカッツ開発大臣を見ると、大臣の顔が明らかに青ざめている。
その様子を見てモルヴィス国王は、カッツ大臣に指示を出した。
「カッツよ。明日早朝に、テオストラ再開を告知せよ」
「ははっ!」
「それから、武具品評会の規定改正についてであるが」
「ハイ・・・・・・」
「お主の論にも一理あり、鍛冶師達の支持もある程度あったために、ワシはこれまで規定改正に反対してこなかった。しかしじゃ。テオストラの騒動や街の噂を聞くに、鍛冶師がラナエストから離れていくよう、誰かが仕向けたかのようにワシには思えてきたのじゃ。お主の改正意見、よもや誰かからの入れ知恵では無かろうな?」
モルヴィス国王の眼光が鋭くなり、カッツ大臣は脂汗を垂らし始めた。
「滅相もございません。規定改正案は私の考えでございます」
「ならば、その欠点である、鍛冶師がラナエストから離れられぬという思い込みになんの根拠もないということ、これまでの状況からもう解りおろう。むしろ、何者かが我が国の鍛冶産業の弱体化を図っていると見るべきだ。さらに、ヴァルフィン神からの神託まで出たとなれば、お主はどう考える?」
カッツ大臣は意を決して国王の目を見据えた。
「恐れながら、申し上げます。規定改正案を再修正し、給金を500万コトスに、そして献上武具は2品のままでは如何でしょうか?」
「カッツ開発大臣!それでは見込んでいた歳入額が無いばかりか歳出額が増えるだけではないか!」
シヴァース財務大臣が慌てて反論するが、カッツ開発大臣の目は据わっていた。
「鍛冶師の流出は金銭に換えられない損失となりましょう。それに、質の良い武具が開発されれば、他国との交易において充分元が取れると考えられます。私としては神頼み的な“質”より人の身で計算が働く“量”で動きたかったのですが・・・・・・当のヴァルフィン神、御自ら質を好むと言われましては、より高い質の武具が生まれてくるよう、報償を上げるしか考えられませぬ」
カッツ開発大臣の主張に最早シヴァース財務大臣はうむむ、と唸るしかなかった。
「よし。カッツ開発大臣の修正案で行こう。明朝のテオストラ再開の告知と同時に、規定再改正を告知するのじゃ」
かしこまりました、との開発大臣の返答により、こうしてテオストラ露天鉱床と武具品評会を巡る騒動は決着するのであった。
一方。
「シャティル、レディアネス、そしてミーナ、レティシアと言ったな。ここにおらぬ仲間もおるようじゃが、お主達には褒美を取らせよう。1000万コトスを与える。それからシャティルよ、お主には「銀の剣匠」の称号を与えよう。剣聖となれば名乗る期間は短いかも知れぬが、お主の銀髪の佇まいに相応しかろう。テオストラは銀の剣匠と仲間達によって、幽霊退治されたと明日の告知に添える。国民も新たな英雄の出現に活気が出るだろうよ」
『盛り上げ役、というだけのような気もするが・・・・・・まぁ、いいか』
「銀の剣匠」という響きがシャティルの気に入ったのも事実である。
こうして、テオストラ露天鉱床の再開と、武具品評会規定再改正が翌朝告知され、また、「銀の剣匠」とその仲間達が問題を解決したと公表されたことから、鍛冶師達には俄然やる気が生まれ、工房街や大通り市場に活気が溢れたのはもちろんのこと、銀の剣匠シャティル・ヴァンフォートの名声が一気に広まったのであった。
これにてテオストラ調査依頼が解決され、結果としては武具品評会の規定再改正により、シャティルの刀の練習刀を納める必要もなくなったのであるが、そこは、既にシンガがやる気を出しておりそのまま練習刀を武具品評会に提出するつもりらしい。ラナエスト王城の後、工房街でセキテツ、シンガに事の顛末を報告した際にその方針を聞かされ、いよいよシャティルの武器造りが始まるのであった。
また、炎の重合剣の顛末も同時にセキテツ達に伝えられたが、使い勝手も良かった事から、タングステン鋳造技術と魔力付与技術は今後も研究を続けていく事となり、レドとセキテツ、シンガ、オルフェル、ギルビーによる協力体制が確立された。
果たして、今後どのような武具が生まれてくるのか。
シャティルとしては非常に楽しみとなったのである。
ようやく、シャティルが銀の剣匠と呼ばれる事になりました。
もちろん、剣聖となった場合は銀の剣聖と呼ばれる事になるのですが、時系列では3ヶ月も銀の剣匠時代は無いはずです。ただし。
そこまでの話はおそらく50万文字くらい隔たりがありそうです。
エピソードが色々待ち構えているのですよ・・・・・・
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