表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険戦記 ルイン・ブリンガーズ  作者: 都島 周
第一部 テオストラ探索編
22/73

022 置き土産

2015/12/27

修正加筆を行っています。

「やべぇっ!!やっちまったっ!!!」


 シャティルが柄だけになってしまったフレイム・タングスを見て憮然とする。

 そこへ襲い掛かるナシュタインの王水鞭。あわてて回避するが、ここぞとばかりの猛攻を受け、武器のないシャティルは回避優先した結果、後方へどんどん追いやられてしまう。

 コボルド王の玉座付近まで後退させられたシャティルは、床に転がっているコボルド王の死骸と両手斧に目を止めた。


『あの両手斧を使うしかないかな・・・・・・』

 ナシュタインの様子を伺いながら、両手斧を拾い上げるチャンスを計る。

 一方、ナシュタインは素早い機動性を失われたのであろう、右足を引きずり王水鞭を振り回しながら、じり、じり、とシャティルに近づいてきた。

 ミーナの氷竜銃スフィル・ネイルとオルフェルの弓矢が時折ナシュタイン目掛けて撃ち込んでくるが、王水鞭がうねって防御盾と化し、さらに氷結によって失われた部分を水路から補給する。


 オルフェルは竜穿矢ドラグ・ダイブの連射で消耗が激しいため、通常の弓撃ちに切り替えたがやはり防がれてしまった。しかし、シャティルへの援護としては少しでも妨害する意味で続けるしかない。


 戦況を見つめるギルビーの視界の隅で、レティシアがもぞ、と動くのが見えた。いつでも取り押さえられるように準備しつつ様子を見ると・・・・・・


「あ、あれ?僕、何してたんだろ・・・・・・?」

「レティシア、気が付いたか!?」

「ギルビー・・・・・・あ、あれ!?そう言えばナシュタインは!?」


 レティシアは慌てて辺りを見回し、シャティルに迫るナシュタインを見る。


「大変!シャティル何で素手なの!?」

「正気に戻ったようじゃな・・・・・・フレイム・タングスはナシュタインの操る王水の鞭を受け止めて溶かされてしまったワイ」


 ギルビーの言葉で全てを理解したレティシアは、すぐさま取るべき行動を決めた。


「シャティル!」


 右腰にぶら下がる棒状の物を素早く投げつける。シャティルが受け取ったそれは、光の剣身を出現させる古代の武器“レイタック”であった。


「使って!」


 なるほど、とレイタックを起動させるシャティル。3アルムス程の光の剣身が細く伸びて、光の細剣レイピアとなる。さらに、その剣に騎士魔法ナイトルーンを集中させると、細身の光剣が両手持ち大剣(グレートソード)ばりに身幅と剣身を伸ばす。


「それは解放騎士リベレーション・ナイトが使っていた武器か!・・・・・・なるほど、レティシアは解放騎士リベレーション・ナイトの生き残りなんだね」


 ジーナロッテの記憶を検索したのだろう、ナシュタインは合点がいった様子だが、その表情が実は冴えていない事にシャティルは気が付いた。レイタックの出現が想定外だったのだろうか。確かに、この武器ならば王水に溶かされることもない。


 シャティルは以前、試練の迷宮でレティシアにこの武器を借りた時、実体がないため軽くて使いづらいと思った。それは、ヴァンフォート流剣術が実体剣として剣の重さと剣速、空を斬る事による空気の流れ、それらを操作することを基本とし、騎士魔法はそれらをより上位の技に格上げする仕組みとなっているからだ。


 しかし、後でクアンに教えて貰っていたのである。


 レティシアは記憶を失い、今はまだ騎士魔法の制御の仕方を思い出してはいない為シャティルに教えられなかったが、レイタックは騎士魔法によって剣身の強化、大きさの変更が出来ると言う事を。


 それはつまり、ヴァンフォート流剣術による空気の流れの操作により、やっと間合いを拡張していた“荒波”のような技が、魔力供給によって簡単に実現出来ると言う事。


 シャティルがレイタックの柄を握る右手に気持ちを込めると、騎士魔力ナイトマナにより光の剣はさらに拡大した。3マトルもの長さに拡大した光の剣を、無造作にまっすぐ、ナシュタインの掌に振り下ろす。


 バシュゥウウウウウウウウ!!


 レイタックの光に触れた王水鞭が蒸発し始め、鞭の形状を保つ事が出来ずばしゃりと石床に崩れ落ちた。

 ナシュタインはすかさず王水を補給しようと、水路に向けて手を伸ばす。その時である。


 シャティルとナシュタインの周囲を囲むように、氷の壁が出現した。


 石床から天井までを覆う氷の壁は、レドが針葉樹の枝を触媒に準備していた氷系Lv4「氷の壁」である。

 レドが王水の供給を止める手段を考えた結果、選んだ魔法がこれであった。

 透過率が高いため、氷の壁に覆われても内外の視界は通る。しかし、ナシュタインが呼び寄せた王水は、氷の壁に阻まれ、さらには水平なつらら状に凍り付いてしまった。


 神でも呆然とするのだろうか。


 一瞬、呆けたように見えたナシュタインは続けて、二度、三度、王水を呼び出したが、水路から水飴状に立ち上る王水の鞭は、氷の壁に接触するや否やことごとく凍り付く。


『ここが決め時だ!』


 ヴァンフォート流剣術と言うほどでもない、只の素早い二連撃。

 シャティルがレイタックを振るうと二本の光線が翻り、ナシュタインの右手首と左手首が切り落とされた。

 さらに、手首が切り落とされた左腕にレイタックの光が差し込まれ、ナシュタインの魔力を焼き付くさんとばかりに騎士魔力ナイトマナの出力を上げると、遂にナシュタインの顔がボロボロと崩れ始めた。


『やったか!?』


「フフフフ。見事だ。分身わけみとは言え、神である僕を破るとは・・・・・・約束通り“略奪のマトック”からテオストラの記録を消してあげよう。ただし、コボルド達が自力で再び辿り着いた場合は、僕の約束外だ。その時は君らで何とかするが良い」


 剥がれ落ちてゆくナシュタインの顔の裏側に、元のジーナロッテの顔が見えてくる。この分だと無事なのだろうか。


「君らが強ければ、それはそれで僕には意味がある。ただし、やられっぱなしなのも癪なのでねぇ、置き土産をしていくよ。いつかまた会おう!」


 ナシュタインが言い放つと、顔が全て剥がれ落ちてジーナロッテの身体から黒い煙が立ち消えたように見え、次の瞬間に身体全身が光に包まれた。やがて、光が収まるとそこには、身体に傷一つ無い、裸のジーナロッテが横たわっていた。


「終わった・・・・・・のか?」

「終わったみたいだな」


 オルフェルが呟くと、レドがそれに答えた。


「置き土産ってなんだろ?変な物じゃなければいいけど」


 ミーナの呟きを聞きながら、シャティルは疲れた表情でレティシアに近づき、レイタックを手渡した。


「ありがとうな、レティシア。おかげで助かった」

「ううん、僕の方こそ、魅了されちゃって足引っ張ってごめんなさい」

「それはしょうがないさ。それより、ミスティを起こしてジーナロッテの様子を見させてやってくれ。それから、クアンも一緒に見てやってくれないか?」


 広間の隅に避難していたクアンにシャティルが呼びかけると、クアンが近づいてきた。


「クアンなら多分、俺の懸念していることが判ると思うが・・・・・・」


 クアンは、ジーナロッテを視た。


「・・・・・・とりあえず、裸は可哀想だニャ」


 言われて初めて意識してしまったシャティルは赤面した。


「誰か、着せる物あれば出してくれ。後、鉱石の回収とお宝の回収といこうか」


 シャティルの呼びかけに、レドとオルフェルが財宝の山にやってきた。

 ギルビーはレティシア、クアン、アリシアと共にミスティを起こしている。

 ゴッデス、ノクスの二竜は自らの宿る鉱石に小竜化して乗っていた。


「なあ、レド。俺の感覚が確かならば、ナシュタインの奴、飛んでもない置き土産していきやがったんだが・・・・・・」


 金目の物、珍しそうなものを物色しながら話し出すシャティル。


「一体何だ?判るのか?」


 二竜の為に、他の四竜と同じく銀貨を用意して霊触媒の移し替えの準備をしながら、レドが問うと。


「ジーナロッテから生物の気配がするんだよ・・・・・・」


 シャティルの発言を理解したレドは、驚いてジーナロッテの方へ振り向いた。



 ミスティは落ち込んでいた。

 ナシュタインとの戦闘に、魅了されて仲間の妨害こそすれ、それ以外は気絶したままで全く訳に立たなかったのだ。ましてや、ナシュタインに誑かされるなんて、自分の信仰心が全く足りていないのではないかと思うと・・・・・・


 とりあえず、今は自分に出来る事として。ローブを脱いでジーナロッテに被せることにした。自分もあまり人に見せられたものではないが、まだ袖無しの肌着であるだけマシだ。それに比べれば、ジーナロッテは自動人形とはいえ、女性型で今は裸なのだ。ジーナロッテの感情がどこまで造られたモノなのか、あそこまで表情豊かだとそもそもヒトと自動人形の魂の違いが不思議に思えてくる。

 と、そんな事を考えながらジーナロッテにローブを被せた時、ミスティは何か違和感に気が付いた。


 間近で視なければ判らないような自動人形の質感が、感じられないのだ。そして、さっき触れた指先が温かかったような・・・・・・


 クアンが近づいてきた。


「ジーナロッテは残念ながら、ボクと同じ自動人形では無くなったニャ。そこにいるのは人間に生まれ変わったジーナロッテなのニャ。ナシュタインの悪ふざけにも困ったものだニャ」


 あわててジーナロッテの右手首を掴み脈を取るミスティ。

 その間にも、胸元が呼吸で僅かに上下していることも確認できた。


 脈はある。そして温かい。どうみても、ミスティの目には、ジーナロッテが生身の人間として生きているようにしか見えなかった。


 こんな奇跡は聞いた事もない。


 ナシュタインの置き土産として生まれた命は神々の祝福の対象となるのだろうか。自分は今後、ジーナロッテにどう接すればいいのだろう?

 それ以前に、自分はアイーシャの神の信徒たる資格がまだあるのだろうか?


 ミスティはジーナロッテの手を取りながら、呆然とするのであった。


感想や評価、ブクマ登録等頂けると嬉しいです。

特に評価は、最新話までお読み頂けると評価可能となっていますので、チェックして頂ければ幸いです。



実は、本業で転勤が決まってしまいました。

しばらくは準備や引っ越し、新居の仕事と生活に慣れるまで更新頻度が減りそうです。


行き先は田舎ですが、ネット環境さえあれば私には充分ですw

それだけは死守しますw


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ