017 竜の降霊会
2015/12/27
修正加筆を行っています。
小部屋には魔法の明かりが着けられ、ドワーフを模した1アルムスほどの小さなゴーレムがツルハシを振るい、シャティル達の周囲は猛烈な勢いで堀り広げられていた。
レドが持つ古代秘宝、「7人の親方衆」である。
レドが鉱石採掘用に作成した魔法道具で、その性能はアーティファクト級の能力だ。鉱石の探索から採掘、分析、「整形」と「元素加工」の魔法まで使いこなす力を持ち、実際に昔生きていたドワーフの魂が精霊化したものを憑依させている。
彼らの魂は自ら臨んで精霊化しており、もはや輪廻転生の枠からは外れているのだそうだ。
普段は霊界でドステバーから排出された粘土や鉱石を使って遊んでおり、収納ケースから取り出した指先ほどの大きさの人形が起動命令によって1アルムスほどに巨大化すると、霊界からドワーフの精霊が来て動かす仕組みらしい。
7人の親方衆によって採掘された鉱石は、発見場所毎に一塊に纏め置かれ、そこにレドが魔力回復ポーションを振りかけている。これは、クアンの指示だ。そして、レドにもこれらがどういう意味を持つのかが判ってきた。
「どうやら、これらの鉄鉱石はかなりの熱量による変質を受けている。そして、何か焦げついたような形跡もある。血や肉の残渣である鉄分やタンパク質が良質な鉄鉱石に染み込み、それが霊触媒となって生前の魂が鉄鉱石に宿った、と見るべきかな?良質な鉄鉱石は魔力含有量も多い。コボルドの王水によって、上方の鉱石が溶かされ、その魔力を吸収した反応水が魔力ポーションの役目をして、アリシアの宿る鉱石に魔力が供給されたので目覚めたのだと思う。」
「つまり、どういうことだ?」
シャティルはさっぱり訳が分からない。
「アリシアと七頭の竜は、隕石にぺちゃんこにされて、さらに隕石の持つ熱で消し炭にされたってことさ。その残骸を吸収した鉄鉱石は、アリシアが地縛する寄代となり、魔力があると霊体が活性化する。つまり、ここにはアリシアの他にも七頭の竜の幽霊が居るかもしれない」
「このうえ竜の幽霊なんて世も末だ!」
オルフェルが嘆くがみんな無視する。
レドは、アリシアが取り憑いていると思われる鉄鉱石を前にして、「整形」の魔法を使い、インゴットの形に変えた。続いて、荷物からルビーを取り出し、封印系Lv2「破邪封印」の呪文を唱える。
レドにしか見えないが、霊体のアリシアが、ルビーに吸い込まれていった。最後に、ルビーに魔印誓言で霊の出入り口を造ってやると、そこからアリシアが再び姿を現した。以前よりもハッキリとした姿が見える。
「こういうことなのね」
アリシアが感心して言う。今度は霊魂召喚の魔法が無くとも、声が皆に聞こえる。
「そうだ。ルビーは魔力吸収性も高く、蓄える力も大きいから、霊体の活動魔力もしっかり確保できるはずさ。今はまだだが、いずれ入れ物を造る事によって、あそこのドワーフ親分衆みたいに動き回ることも可能になる。自動人形を素体にすれば、味覚以外の感覚も持てるはずだ」
「美味しいものが味わえないのは残念。でも、再び歩き回れるのなら、それは悪くない話ね」
レドはアリシアの宿っていた鉄鉱石が元となるインゴットを、「整形」の魔法で一部切り取った後に宝石用の台座に加工した。ギルビーがそれに細鎖を通し、レティシアの首に掛けると、アリシアの幽霊はレティシアの背後、肩に手を触れるような位置で浮遊した。
「とりあえずはそれで我慢してくれ。ラナエストに戻ったらちゃんとした身体を考えるから」
「ありがとう、レド。どうか、他の竜達をお願いね」
アリシアは成仏せずにこの世に留まることを選んだのだ。
何故こうなったのかというと、それはクアンの説得と提案だった。
せっかく三千年後の世界に復活したのだから、色々と見て回ったらどうかと言う事や、三千年前の記憶を持つアリシアにレティシアの支えになって欲しいと言う事、アリシアが幽霊で居ると言うことは他の竜達も幽霊でいる可能性が高く、同じように復活してくれると心強い事、素体はゴーレム技術でレドが用意してくれるだろう事などを説明し説得したのである。
それ以外にも猫と幽霊で何やら話をしていたが、アリシアもジーナロッテという自動人形の見本が居た事から魅力を感じたため、現世に留まることを選んだのであった。
そこで早速、七竜の発掘と、鉄鉱石の採取を始めたのである。
レドは、いくつか採掘されて一纏めにされている鉄鉱石を、一箇所ずつ「整形」の魔法でインゴット化して回り、それは全部で8本になった。それらを今度は一纏めにして、回りに魔方陣を書着始める。先ほどのアリシアと同じく、「霊魂召喚」で七竜の魂が居るかどうか確かめるのだ。
四方に盛り塩をし、準備を整えて呪文を唱え始めるレド。
「なぁ・・・アリシアは人の姿で現れたけど、七竜とやらは出てくるとしたらどんな姿になるんだ?まさか原寸大はないだろう?」
オルフェルが嫌そうな顔をしながら疑問を提起したが、レドは呪文詠唱中だし、他の者は答えようがない。呪文の効果を固唾をのんで見守るしかなかった。
やがて、呪文発言が終わり・・・・・・
1マトル近い大きさの、竜の生首の幽霊が4つ、出現した。
赤銅色、銀色、翡翠色、青銅色、四色の半透明な、生首状態の竜の幽霊が、ほぼ一箇所に重なり合って、まるで巨大なツクシのように地面から生えている。それぞれが勝手に動くおかげで辛うじて四色四頭いるというのが判る。
「ここはどこでござるか?」
「薄暗いところねぇ」
「僕はなぜここに?」
「なんだぁ、こらぁ?」
同時に好き勝手に話し始めるので、はたしてどうしたものか。
レドが途方に暮れてアリシアを見ると、アリシアが前に進み出た。
「久しぶりね、ウィルマサ、シュペリエ、トーニアス、ガンドール。とりあえず4人一緒に話されてもうるさいから、姿を小さくしてしばらく静かにしていて。あなた達は今、霊体なのよ」
「「「「アリシア(様)!!!!」」」」
四竜が驚き唱和すると、アリシアは口元に指を立てて静かにするように指示する。
銀竜が早速、小さな手乗りサイズと変化し、アリシアの胸元に飛び込んできた。アリシアは両手でそれを抱き止め、銀竜は目を閉じて顔をアリシアの頬に擦り付ける。アリシアは皆に向き直った。
「紹介するわ。この子はシュペリエ。銀竜で私の騎竜よ。女同士で一番気が合うの。」
シュペリエはウインクをした。続いて、小さくなった翡翠竜がアリシアの左肩に留まる。
「この子はトーニアス。翡翠竜よ。七竜一の伊達男ね」
トーニアスは胸を張り、右手をL字に曲げて気障に一礼する。次は、赤銅竜が小さくなってアリシアの右肩に乗った。
「この子はウィルマサ。赤銅竜で別名“竜将軍”と呼ばれるほどの戦上手なの」
ウィルマサは腕を組んで少しだけ頭を下げた。最後に、青銅の竜が小さくなってアリシアの頭上に浮かぶ。
「この子はガンドール。青銅竜のもっとも勇気溢れる特攻隊長ね」
ガンドールは視線を浴びるとツイッと顎を剃らした。竜でも頬を染めるものだということが判った。
アリシアは竜達に、シャティルから順に皆を紹介し、自分達が三千年前に死んだが隕石衝突の最悪の事態を回避できたこと。偶然にも魔力を受けて幽体として復活できたこと。今後はレド達の協力の下、現世に留まるつもりであることを話した。
竜達は、アリシアが現世に留まるのならば自分達も一緒に、という意見で一致したが、シャティル達に対しては手放しで協力する感じではなかった。まずは様子見といったところらしい。
「キャンツ、ゴッデス、ノクスは居ないのかしら。レド、後3人居るはずなの」
「残念ながら、今のところはまだだ。親方衆に引き続き掘って貰うからその動向を見るしかないよ」
アリシアの話では、キャンツは黄銅竜、ゴッデスは金竜、ノクスは黒竜らしい。
7人の親方衆には引き続き、残りの三頭の竜が居そうな鉄鉱石を採掘してもらうこととし、
シャティル達一行は、腹時計からそろそろ夜と見当を付け、今晩はこの部屋で休息を取ることに決めた。
ミスティとミーナが食事の支度をし、ギルビーとオルフェルは親方衆とは別に採掘だ。オルフェルは流石に幽霊に慣れてきたようで、大分顔色が戻っている。
シャティルはいつコボルドが転移してくるかも知れないので見張り番だ。
レティシア、クアンとアリシア以下幽霊達は色々と話し合っているようだ。
レドはゆっくり休んで精神魔力を回復しなければならないので横になる。
今日の朝はまだラナエストに居たのでは無かったか。目まぐるしい一日だったとの思いと共に、奇妙な出会いの多い日だったと述懐した。
ジーナロッテ。アリシア。四頭の竜達。
特に、アリシア達幽霊との出会いは衝撃的だ。クアンも含め、古代の英知や秘密に近づく鍵があるかも知れないのだ。面倒毎が無くじっくり研究する時間があればいいのにと、心から思う。
それにしても、三千年も地縛霊状態でしかも覚醒もしていなかったなんて、なんという魂の牢獄だろうか。せめて野外に放置されていれば、地上の魔力は満月の光で回復するのでとっくに目覚めていたんだろうに・・・・・・それが、隕石毎地下深くに埋められ目覚めることも無く、結果として輪廻転生すら出来なかったなんて。偶然にしても酷い話だ。
・・・・・・偶然?
もし、彼らの敵というのがそこまで計算して隕石を堕としたとしたら凄まじい邪悪な存在に思える。まさかな、と考えている内に、レドはまどろみに囚われ眠りについた。
竜騎士やアリシアは竜を“人”として扱います。
ちなみに“匹”と表現するとドラゴンブレスがお見舞いされます。
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