011 激闘
2015/12/27
修正加筆を行っています。
警戒中のシャティルが、ぴくん、と身体を震わせた。
そのまま立ち上がり、皆に知らせる。
「左方向、何か来るぞ!」
その声に各々が立ち上がり準備する。ミーナ、レティシア、クアンがまだ戻っていない為、レドは便利たいまつをミスティにまかせた。
「フィラーム」
レドはLv1「明かり」の呪文を唱え、今回は杖ではなく小部屋の天井中央付近に明かりを設置する。
「みんな、魔法は極力温存する。というのも、敵の魔法使いはおそらく俺よりLvが上だ。呪文詠唱の兆候が見られたらすぐ潰さないと危険だということと、高速詠唱や無詠唱の可能性もあるから気を付けてくれ」
「それなら俺に透明化を掛けてくれないか。デュラハン相手にはあまり相性が良くないし、魔法使い用に潜伏するよ」
オルフェルの提案に、レドが幻系Lv5「透明化」をオルフェルに掛け、オルフェルはミーナ達が行った右の通路側で待ち構えることにした。
ミスティは、神魔法の「祝福による保護」を唱え、一同の魔法耐性を上げる。
シャティルとギルビーが左の通路前に陣取って構え、準備は完了した。
次の瞬間、辺り一面が真っ暗になった。
「なんだ!?」
「えっ?熱っ!」
「ギルビー、下がってくれ。俺一人でやる!」
「「闇の世界」の魔法だ。光が全て奪われる!ミスティ、火は付いたままのはずだから気を付けてくれ!」
レドは封印系Lv5「魔法解除」を試みる。「魔力解除」よりは劣るが、対象の魔法がはっきりしている場合はこちらのほうが魔力コストが少なく済む。ズボンの太腿にぶら下がっている飾り輪のうちの一つを手に取る。鉛で被覆した鉄の輪、これがこの魔法の触媒だ。レドは左右に3個ずつ、計6個を用意していた。
起動単語を唱え触媒が消費・消失する。その魔力で空中にルーン文字を描き、月と術者を結ぶ魔力門を接続、魔力を体内に通し、呪文発言で魔法を発動させる。
レドの魔法は効果があり、闇の世界を打ち消すことが出来た。ミスティの持つたいまつの明かりが部屋を照らす。レドは再び、「明かり」の魔法を唱えた。
闇の世界の発動中に、シャティルはデュラハン4体に囲まれてしまっていた。2体は通路側だが、他の2体はギルビーが引いた際に小部屋の中への侵入を許してしまっている。対集団戦は問題無いが、後ろの2体が後衛陣に向かうのは上手くない。
数度切り結んだが、最早、戦闘を楽しめる相手でもなく放置も出来ないため、早々に片付ける事にした。
前方の2体に右上方から左横への薙ぎの強打。2体の剣にぶつけて後ろによろめかせる。その反動を利用し今度は真後ろの1体に左腰からの右回転と横薙ぎ。
相手が剣で受けた瞬間、さらにその反動を利用して左回転しつつ瞬時に背後へ回り、その時には既に上段に振りかぶっていたフレイム・タングスで上段唐竹割り―ヴァンフォート流剣技、“流水”。
「一つ」
1体目の隣でまだ背中を見せているデュラハンに、左下から右上への切り上げ、さらに空中で剣先を翻してこれも上段唐竹割り。
「二つ」
中段青眼から右親指を下に手首の力を抜き、真下に下げた剣身を手首で跳ね上げ上段から振り下ろす、ヴァンフォート流剣技“荒波”。1マトル離れた先のデュラハンが、飛ぶ斬撃により唐竹に両断される。
「三つ」
残った1体に突進し、左足の一歩を右足前に踏み込むと同時に身が水平に翻るヴァンフォート流剣技、“流転”。横薙ぎの斬撃で胴体を水平に切り裂くと、流れる身体を更に一回転させ、その勢いを利用した左上段から袈裟切りをするヴァンフォート流剣技、“落葉”。
「四つ」
瞬く間に4体のデュラハンを倒したシャティル。そこへ、今度は奥に控えていたデュラハンが突進してきた。これまでの犠牲者のデュラハンと違い、突進と同時に両手剣を真っ直ぐ振り下ろしてくる。
躱すことも出来るが、ここは敢えて“魔盾の構え”で正面から受け止める。剣の衝撃を全身で和らげ、踏ん張る両足を通して大地に流す。足下の岩盤にビキッと亀裂が入った。
受けきったところで、沈み込んでいた身体を反動で跳ね上げ、そのまま敵の両手剣を下から払い飛ばすと、シャティルは上段から右籠手目掛けて一気に振り下ろした。
デュラハンの右手が破壊され、両手剣が地面に落ちる。その時。
デュラハンの鎧前面がはじけ飛び、中から白い自動人形が飛び出した。
ジーナロッテは飛び出した勢いのまま、シャティルに抱きつく。人は誰しも、何か行動を終えた直後は隙が生まれる。それこそ一呼吸した直後でもだ。
アルバンの右手を破壊し無力化に成功したとシャティルが思った瞬間は、正に好機であった。ジーナロッテもよもやアルバンが一太刀で無力化されるとは思っていなかったが、自ら動かずアルバンの中に潜んでいたことが逆に次の展開に反応出来たのであろう。
正面から抱きついてきた白い裸の自動人形がシャティルの首筋に噛みついた時、『意外と軟らかいんだな』と18歳の彼が思ったのを責められるだろうか。
シャティルはそのまま首筋を咬まれ、体重を預けられて地面に押し倒された。右手の剣を逆手に持ち替えて、自動人形の背中を刺そうとしたが、しびれがやってきて身体が動かなくなる。
『麻痺毒か!』
剣が落ちるガランとした音に、ジーナロッテは麻痺毒の攻撃が成功したのを確信し、シャティルにまたがったまま上体を起こし、止めを刺そうと手刀を造る。が、
「茨の束縛!」
ジーナロッテは地面から瞬時に形成された緑の茨によって、その白い裸体をシャティルにまたがったままの姿勢で束縛される。ミスティの神魔法だ。
「シャティルを離さんかい!」
自動人形の胸部を打ち抜くべく、ギルビーが水平に振るったツルハシは、ジーナロッテの胸椎を僅かにそれて突き刺さる。
「アハハハハ!残念!急所は外れてるねぇ!」
自動人形に高笑いで言われ、再び攻撃すべくツルハシを抜くギルビー。
その時、4本の片手剣と1本の両手剣が宙に浮き上がり、ギルビーとシャティルに切っ先を向けた。
「死ねっ!」
自動人形のかけ声と共に、突き刺さってくる剣。
しかし、刺さる寸前で剣がカラララと地に落ちた。
『危なかった!』
冷や汗をかいたレドが見た物は、「魔法解除」が間に合って飛翔能力を失った武器。
シャティルがデュラハン4体を切り伏せた時、剣の処理をしなければ危ないと考えたレドは、封印系Lv5「魔法解除」を、剣に掛かっていると想定した「飛翔」に対して使っていたのだ。
動くように魔法付与する情操系Lv10「自動命令」、効果を永続化する時間系Lv9「永続効果」、宙に浮いて行動できる重力系Lv5「浮遊移動」か同系統Lv9「飛翔」。
先の6体との戦いで見当は付けていたが、自身の経験からも、浮遊移動に武器を振るう素早い動きは無理だと考え飛翔を消すことにしたのだが、その結果は正解だった。自動命令は生きていても、飛べなければ剣は実際に動けない。
しかし、剣の落下の際、1本だけシャティルに向いていた剣は、自由落下でシャティルの右肩をかすめていた。当たり所が悪いとシャティルを殺しかねないところであった。
レドがホッとしたのも束の間、今度ははじけた部品を吸着させて復活したデュラハンが左手でギルビーに殴りかかってくる。シャティルがまだ転がっているため、除けられないギルビーは、踏ん張って黄色いヘルメットで拳を受け止めた。
「ドワーフの石頭舐めるなよっ!」
ボコッ!
鈍い音が響き、デュラハンの左拳が若干凹んだようだ。対するギルビーは、フラフラと千鳥足でたたらを踏んでいる。
「おぉっ・・・ほっぽぉ~」
良く判らない声を上げてバタリと倒れ込むギルビー。
ミスティはシャティルの麻痺を治そうと神魔法「正常化」を唱えるつもりでいたが、不意にまぶたが重くなり、そのまま意識を失ってしまった。結果、ジーナロッテを拘束していた緑の茨が消失してしまう。
『敵魔道士の「眠り」の呪文か!』
必死に対抗しようとしたが、そのまぶたも抵抗仕切れずレドも眠ってしまう。薄れゆく意識のなかで、レドが最後に見たのは部屋に姿を現した敵の魔法使いだった。
ウェンデは眠っているシャティル達を見渡すとフンと鼻を鳴らした。Lv10魔導師の自分に掛かれば、眠りの魔法一つで大抵片が付くのだ。
「死霊術には良いかもしれんが、魔導人形向きの奴はいないようだねぇ。全身鎧の奴は居ないのかぁ」
「しかし、恐ろしい手練れでした。瞬時にデュラハン4体を屠るどころかアルバンまでも」
ジーナロッテは直立し、伏し目がちにシャティルを見据えている。
「貴重な労働力を殺ってくれちゃってまぁ・・・こいつらには「魂の言葉」で忠誠させて採掘でもさせるかねぇ。特にドワーフは3人前の働きが出来るだろう。あ、魔法使いは殺しちゃっていいよぉ。それから女僧侶は楽しめるかなぁ。ウヒヒヒヒ」
「まだシナギーとヒュームの女、それにエルフの男が居るはずなのですが、ここには居ませんでした」
「ふうん?別行動中かなぁ?まぁ、それも来てからのお楽しみダネ。ウッヒヒヒヒ」
絶体絶命の危機―
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